サスペンス小説の一級品「蟻の菜園」

「最後の証人」「検事の本懐」「検事の死命」で検察の正義を
貫く男・佐方貞人を描いて、強烈なインパクトと面白さで
ミステリーファンを魅了した、柚月裕子さん。
文庫の新刊が発売になりました。

今回は実際にあった事件「連続不審死事件」を元に
描かれたサスペンス小説です。

アントガーデン

車を密閉し、練炭で自殺を図ったとみられる男性の遺体が発見された。
だが、自殺にしては車の鍵が見つからない。
警察は他殺と断定し捜査を開始。
ほどなくして一人の美しい女性が浮かび上がってきた。
さら捜査を進めると、女性と付き合いのあった男性が
次々と不審死を遂げている事実が発覚。
警察は、その女性が金目当てに婚活サイトに登録し、
結婚を餌に男性から金を巻き上げ、結婚か?借金返済かと
迫られると自殺や事故に見せかけ殺害したのではないかと推理。
だが、いずれも強固なアリバイがあり、共犯者の影もない。
女性を逮捕はしたが、決定的な証拠がなく、
警察は起訴に踏み切れないでいた。

並外れた美貌。婚活サイトに登録などしなくても
男はいくらでも言い寄ってくるだろう・・・・。
笑って座っているだけで、幸せが転がり込んでくる、そんな女性なのに・・
なぜ婚活サイトに登録をしたのか・・・・・?
この女性に興味を持った週刊誌の女性ライターが、
女性の身辺を調べ始めると意外な事実にぶち当たる。

実際に起こった連続男性不審死事件を取り上げているが、
ドキュメンタリと違い、事件を起こした女性の過去にスポットをあて、
なぜ事件を起こさなければならなかったのか?
サスペンス仕立てにしているところが非常に面白い。

読者の予想を見事に裏切る、ありえない展開がさらに作品を盛り上げている。
ぐいぐいと引き込まれる文章は、一気に読ませる!

次の作品が読みたくてたまらなくなる。

『蟻の菜園-アントガーデン-』
著者:柚月裕子
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥680(税別)