トム・ロブ・スミス新刊「偽りの楽園」が面白い!

数年前「チャイルド44」でこのミス海外1位に輝いた、トム・ロブ・スミスの新刊
「偽りの楽園 上下」(新潮文庫)を読みました。
翻訳は、田口俊樹さん。この方の翻訳が素晴らしかったので、
上下巻「あっ」と言う間に読んでしまいました。

海外ミステリー作品は、作家の持ち味を活かすため
妙な日本語訳になったりするのですが、この作品は
そういったことを一切感じさせず、ベストセラー作家が描く
物語の面白さと、読みやすい翻訳で、はまさきが今まで読んだ
海外ミステリーの中でも記録的な速さで読んでしまいました。

偽りの楽園

リタイヤして、北欧の田舎町で農業を営む父からダニエルに
突然入った電話。それは「母さんが精神病院に入院したが
脱走した!」という信じがたい連絡だった。
両親は、幸せな老後を送っているものとばかり思っていた
ダニエルにはまさに青天の霹靂だった。
父からの電話の直後、今度は母親から電話が!
「私は狂ってなんかいない!お父さんは悪事に手を染めている
警察に連絡しなければ!」というさらに信じがたいものだった。

ダニエルは両親のどちらを信じていいのか途方に暮れる中、
母親がすぐにダニエルのもとにやってきた。
その母の姿を見て、ダニエルは愕然とする!
閉鎖された農場で起きた数々の悪事、そこで蔓延る狂乱の宴、
嘘、隠蔽、犯罪、陰謀の数々が母の口から語られる。
そして母は大事に持ってきたバッグの中からそれぞれの事件の
証拠品を次々と提示してゆく。

母の話を半信半疑で聴いていたダニエルは、その真相を
確かめるためにスウエーデンへと向かう・・・。

物語の大部分は母親の語り口調で進められる。
そのため、読んでいるとどんどん惹き込まれてゆく。
閉塞感漂う、北欧の田舎の農場を舞台に
不気味な悪事に手を染め、絡め取られてゆく父親の姿と
そこから逃れようとする母親の姿が描かれている。

一体真相はどこにあるのか?
最後の最後まで集中力が途切れない面白さ!
海外ミステリーの醍醐味が堪能できる!

『偽りの楽園 上下』
著者:トム・ロブ・スミス/田口俊樹
出版社:新潮社(文庫)
価格:上下各¥630(税別)