監察官を監察せよ!?「監察特任刑事」

「署長刑事」シリーズでおなじみの姉小路祐さんの新刊
「監察特任刑事(デカ)」を読みました。
今回も京都が舞台。
京都の街なみ、京ことば・・・
主人公、戻橋警部補が使う京ことばが刑事らしくなくて
良いんです。

監察特任

税理士としての経験を買われ、京都府警に特別資格者枠(シカクシャ)で
中途採用された戻橋京一郎は、「監察官を監察する」新設部署の
係長事務代理に任命される。
その新設部署は、ノンキャリアから警視長まで登りつめた轟が
市民のための警察であるべきとの思いから設置した部署だ。

警部補でありながら、係長事務代理ということは警部と同等の
権限を持つ。
戻橋は、特別枠の中途採用であるため、警察学校を出ていない。
それゆえ、同期という仲間もいない。警察内部ではある意味
孤独な存在だった。
しかし、そういうしがらみがないから、一般市民に近い
眼で警察という組織を見ることが出来る。

だが、新設部署では早速、部下の八反田刑事から嫌味をいわれる・・・。

そんな時、事件は起こった。
京都の隠れ家的なパワースポット・二枝神社で女性の変死体が
発見された。状況から、階段から転落、特に不審な点は
見当たらないことから、事故死と断定された。

だがその後、新設部署にある電話が入る。
「転落死した女性の捜査をきちんとしろ!」
と女性の声での密告だった。
部下の女性刑事からその連絡を受けると、戻橋は
通報を受けた交番の巡査に話を聞いた。
その巡査は女性で、その転落事件に女性特有の不審な点を
感じていた。単純な事故ではないと言った。

戻橋も、なぜあっけなく事故死と断定されたのか?不審に思い
調査をすることに。
戻橋が調べれば調べるほど、疑惑は広がってゆくのだった・・・。

隠蔽された事件は、やがて府警内部の巨大な闇へ繋がってゆく。
戻橋の「外から来た人間やからこそ、僕は警察の正義を信じたいんや!」
という強い思いと「中途刑事」ゆえの執念が、幾重にもゆがんだ
内部犯罪を暴いてゆく!

警察という組織の中の権力闘争の中で利用され、捨てられるかも
知れないという恐れと闘いながら、ただひたすら真実を追う
愚直な刑事・戻橋京一郎の姿勢が素晴らしく、胸を打つ警察小説。
ミステリーとしての謎解きも非常に面白い!

『監察特任刑事(デカ)』
著者:姉小路祐
出版社:講談社(文庫)
価格:¥690(税別)