イヤミスの超超!傑作「鸚鵡楼の惨劇」

「殺人鬼フジコの衝動」「女ともだち」「深く深く、砂に埋めて」・・・などなど。
読後感は最悪のイヤミスを描く、真梨幸子さん。
実は、はまさきもイヤミスはあまり得意ではなく、「女ともだち」くらいしか
読んでいませんでした。

じゃあ、なぜ「鸚鵡楼の惨劇」を読んだのか?
それは、タイトルとその文字のいや~な華麗さに惹かれたから。

でも読んで正解!ブラック過ぎる展開でなのに、不謹慎だと
思うけれど面白くて止まらない!戦慄のミステリです!

鸚鵡楼の惨劇

1962年、西新宿にたたずむ洋館「鸚鵡楼」で3人の人間が
殺害された。
その頃「鸚鵡楼」は料亭で、成金の金持ちたちが足繁く
通っていた。
洋食屋の‘ぼく’は、よく鸚鵡楼の近くの「置屋」に
出前に行っていた。そこでとてもきれいな同級生・ミズキと
出会う。ミズキには誰にも言えない秘密があった。
けれど、‘ぼく’はある日、ミズキの秘密を知ってしまった。
それは‘ぼく’がパンドラの箱を開けてしまった頃だった・・・。

それから約30年後、一人の男が幼女強姦の罪で裁かれた。
そしてバブルまっただ中、罪深き男を愛した女はおぞましい
過去を振り切り、幸せな結婚をし息子も授かり、
セレブ女性の代弁者としてエッセイを描き、イギリス郊外の
カントリーハウスのようなマンションに住んでいた・・・。
そのマンションはかって「鸚鵡楼」があった場所だった・・・。
セレブ妻のエッセイは、身近な人間のちょっとした
秘密を暴き、皮肉り、嫌味を含んでいる。
次第にエスカレートするエッセイの内容に、同じマンションに
住んでいる女性たちから距離をおかれるようになる。

頭の切れる幼い息子になぜか怖れを抱くセレブ妻は、自らが
創りだした妄想にとりつかれ、やがて狂気の淵に迷い込む!
そして、とうとう嵐の夜に惨劇が繰り返されるのだ!!

人間の残酷さ、不気味さ、悪意・・・人間の闇をここまで
大胆に描いた作品はないだろう・・・・。
「鸚鵡楼」を舞台に引き起こされた惨劇は、憎悪の連鎖だ。
クライマックスで、2つの事件の裏に秘められた人間たちの思惑
が明らかになった時、鳥肌物の衝撃が襲う!
救いはない・・・。けれど読み出したら魔物に憑りつかれたように
一気読み!

『鸚鵡楼の惨劇』
著者:真梨幸子
出版社:小学館(文庫)
価格:¥730(税別)