女たちの不気味さを描く、「水の中のふたつの月」

昨年9月に本の学校今井BCで「女のサスペンス」というミニフェアを
行いました。女性が主人公のサスペンス小説を集め展開。
好評だったので、今年もやることにしました。
この「水の中のふたつの月」は今年のサスペンスミニフェアの
ラインナップのひとつ。
乃南アサさんの作品です。
女性の深層心理を描いたら一番!
ということで読みました。

水の中のふたつ

小学生の頃、いつも一緒にいてとても仲良しだった女子3人組。
クラスメートのイケメンくんがなぜかいじめられるはめになり、
何とかそれを止めさせようと、神様に一生懸命お祈りした・・・。
そんな彼がある日行方不明になってしまう・・・・。

それから十数年後、OLの亜理子は恋に仕事に忙しい日々を
送っていた。そんなある日、小学校の時に仲の良かった
恵美から電話がきた。
懐かしい思いから会うことになった二人。
そこへもう一人の同級生・梨紗がやってきた。
大人になった3人。梨紗の美しさが際立っていた。
久しぶりに会った3人は楽しくおしゃべりをした。
だが、酔いが回ってきた恵美が奇妙なことを言いだした。
梨紗と亜理子は慄然とする!

そして、恵美から紹介された彼氏を見て亜理子と梨紗は
驚く!その彼氏は、小学生の時に行方不明になった
イケメンくんに似ていたからだ・・・・。

3人の女性と1人の男性。
仲良しと言いながらお互いを牽制しあう女たち。
1人の男をめぐり、奇妙な4角関係に陥る・・・。
それは遠い過去の原風景を連想させた・・・。

十数年前に起こったカミカクシ事件を軸に
3人の少女たちの過去と、複雑に絡み合った
現在の女性たちの思惑を交互に描き、
やがて戦慄のクライマックスへと続いてゆく。

女性たちの4角関係がいったいどういう結末になるのか?
十数年前のカミカクシ事件の真相はいったいなんだったのか?
その謎の提示に翻弄される読み手。
さらに、仲の良い女性同士に見えるがその裏側は
羨望と嫉妬が渦巻く。そんな微妙な深層心理が
リアルに描いてある。
読み進んでいくと女性の怖さをひしひしと感じてしまう!
サイコサスペンスの傑作!

『水の中のふたつの月』
著者:乃南アサ
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥600(税別)