弁護士業界をリアルに描いた本格推理「ミネルヴァの報復」

「鬼畜の家」「衣更月家の一族」「螺旋の底」「殺意の構図」
「敗者の告白 弁護士睦木玲の事件簿」など見事な本格推理を
描く深木章子さんの新刊が「ミネルヴァの報復」。

元・弁護士の著者が、リアルな弁護士業界を背景に描いた、
本格推理作品です。
弁護士睦木玲シリーズ?と思ったのですが、少し違いました。
睦木玲の友人・民事専門の弁護士・横手皐月が主人公。
横手弁護士が離婚訴訟から発展した殺人事件に巻き込まれる物語。

ミネルヴァ

銀座のちょっと裏通りにある、横手皐月弁護士事務所。
民事が専門で離婚訴訟など手がける。
ある日、横手はもと大学の先輩で今はツアーガイドを務める、辻堂に
離婚問題を相談された。
20年ぶりに会う辻堂は、大学時代とはほど遠い、わびしさを
感じさせる男になっていた。
辻堂は性格の不一致と言う理由で妻と離婚したいが妻が離婚に応じてくれないと
相談にきた。
だが妻の代理人の弁護士から辻堂の数々の女性問題が明らかになる。
横手は辻堂に離婚の訴訟を起こしたとして勝ち目はないと言ったが
引き下がらず、愛人である女性と会って欲しいと懇願してきた。
横手はその愛人に会うことに・・・。
そこで横手はこの愛人から、辻堂がヒモ同然の生活をしていると聞いた。
父の遺産である5千万円を相続したこの愛人は、キャッシュでマンションを購入。
辻堂はそのマンションに転がり込んでいたのだ
とにかく横手は、離婚訴訟は無理と愛人にも言い聞かせた。
これでようやく一段落したと思ったが、またもや辻堂の妻の弁護士から
今度は、愛人が妻に嫌がらせを始めたと連絡してきた。
さらに、今度はその愛人が、妻から5千万円の損害賠償請求がきたと
泣きついてきた。
あきれた横手だったが、愛人は横手に弁護を頼みたいと正式に依頼してきた。
だが、着手金がすぐに用意できなかったため、委任状と着手金は後日
ということで改めて面会日を決めたが、しばらくして、その愛人から
訳のわからない電話が入り、その後愛人は行方不明になってしまう・・・。

辻堂の妻と愛人に振り回される横手。だが決定的な事件が起こってしまった。
なんと辻堂の妻が、東京弁護士会の面接室で変死体となって発見されたのだ!

辻堂と妻と愛人の3角関係が複雑にからみあう。
意図的なのか?
そして、横手が辻堂がからんだ話を睦木玲に相談してゆく。
愛人の行方、妻がなぜ面接室で殺害されたのか?
なぜその場所なのか?誰が殺したのか?
その殺害現場に現れる愛人。この殺人は愛人の仕業なのか?

単純に考えてゆくと、愛人が犯人と思うが、文中には
ヒントなのかトリックなのかわからないが著者が意図的に
描いている言葉が出てくる。
そして多分こいつが犯人と思うが、動機も殺害方法も
全くわからないのだ。

常に読者の予想をかわす、裏切る!深木章子女史。
絶対に一筋縄では解明できない奥の奥にある事件の真相が非常に面白い!

2度読まないと多分本当に事件の真実は頭に入ってこない。
それでもこの深木さんの作品は、ひねりにひねった物語が
面白くて、読みだすと止まらない。次の作品を期待してしまう!

『ミネルヴァの報復』
著者:深木章子
出版社:原書房
価格:¥1,800(税別)