D・M・ディヴァイン初期の傑作「そして医師も死す」

D・M・ディヴァインの作品を初めて読みました。

この「そして医師も死す」の帯に「ある着眼点」こそ、謎を解く鍵
フェアプレイを貫く正統派本格 
という文言に惹かれ読んだところ、1行目からおっとこれは面白そう
と思い、読み始めると先が気になりなかなか閉じられず・・・。

やはり、「本格ミステリベスト10」連続1位作家だな
と思いました。

医師も死す

舞台は1960年代のイギリス。診療所の共同経営者が不慮の事故で亡くなった。
医師・ターナーは市長のハケットから、彼は殺されたのではないかと指摘を受ける。
しかし、もし殺人ならばかなり綿密な計画殺人だと言えるとターナーは感じた。
そして、2ヶ月前に起きた事故の状況を回想する・・・。

亡くなったヘンダーソン医師に恨みや嫌悪を抱くものは少なくなかった。
だが、殺人の動機と機会を兼ね備えるものは限られてくる・・・。

さらに、故人の妻・エリザベスから、何者かに命を狙われていると
打ち明けられたターナーは、自分自身でヘンダーソンの死を
洗い直そうと試みるが・・・。

ターナーは市長の姪と婚約したにも関わらず、故人の妻エリザベスと
密会を重ねる。
そしてヘンダーソンと離婚を考えていたエリザベスは、ターナーともども
ヘンダーソン殺害の最有力候補と見做されてしまう・・。

格調高きイギリス本格推理小説。
様々な登場人物たちのセリフの中に、事件を解決するヒントが
隠されている。
そして、誰が本当の事を言っているのか?
読者を混迷させるテクニックは一級品だ。
「騙しの名手」と言われる技は、この作品ですでに完成
されているような気がする。

ディヴァインの初期の意欲作、本邦初訳をご堪能ください!

『そして医師も死す』
著者:D・M・ディヴァイン/山田蘭訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,000