悪女だらけのミステリー「七人のおば」

ミステリー小説読書会で薦められて読みました。
「七人のおば」パット・マガー著
初版は1986年。
この作品の舞台背景は1940年代のアメリカ。

登場人物が非常に多いので、最初は人物を覚えるのに
時間がかかりますが、中盤から凄く面白くなってきます!

七人のおば

新婚のサリー夫妻の元へサリーの友人から手紙が届いた。
手紙にはサリーのおばが夫を毒殺し自殺したと書いてあった。
衝撃を受けるサリー。
だが、サリーには七人ものおばがいる。
いったいどのおばが夫を毒殺したのか?!
サリーは自ら過去を振り返り、七人のおばとの交流を夫に語る。
サリーの夫はおばたちの話を聞きながら、推理を展開する。

サリーは幼いころ両親を亡くし、父の姉にあたる、
富豪のおばクララとおじのフランクのもとで育った。
そこにはオールドミスの教師のおば・テッシー、美貌の持ち主・ドリス。
神経衰弱気味のモリー、浪費家のジュディが一緒に住んでいた。
残りのおばたちは結婚して外に出ていた。

サリーが語るおばたちは、かなり非常識で自分勝手な女性たちばかりだ。
周りのことなど一切気にしない!

サリーがティーンの頃、テッシーが若くてハンサムな男性教師・バート
と結婚することになった。
だが二人の結婚式直前、美貌のドリスがバートの前に現れた。
ドリスは人の彼氏が欲しくなる性分で、姉・テッシーの婚約者をいとも簡単に奪ってしまう。
しかし長女のクララがバートを説得し何とかテッシーと結婚させる。

クララは世間体ばかりを気にし、さらに妹たちを幸せにすることに
異常なまでの責任感をもっていたため、世間に公表したことを決して
曲げることはない。
だから妹たちは離婚したくても出来ない。
一度結婚が決まったらどんなことがあっても結婚させられる!!
そのせいで、サリーのおばたちは結婚後もそれぞれの夫たちと
トラブルばかり起こしていた。
そういうことで、誰が夫を毒殺してもおかしくない状況だったのだ。

おばたちの自分勝手で身勝手なわがままを押し通すシーンが延々と続くので
さらっと読んでしまうと、ひっかかるところをスル―してしまう。
そのせいで本質が見えなくなってしまうのだ。
はまさきも最後の最後まで真相がわからなかった・・・。

しかし、登場人物をほぼ覚えると物語がどんどん面白くなってくる。
おばさんたちの身勝手さも可愛く思えてくる。
さらにこんなに自分勝手に生きたら気持ちいいだろうな~っと思えてしまった・・・。
肝心の事件の真相も「お~っ」という納得の落ちでとても面白かった!

パット・マガーの処女作は「被害者を捜せ!」
その後「探偵を捜せ!」「4人の女」「目撃者を捜せ!」
どの作品ものテイストも本書の展開に近いようだ。
なので、この作品を読んだら、他の作品も読みたくなってしまう。
はまさきも早速「被害者を捜せ!」を読んでみたくなった。

『七人のおば』
著者:パット・マガー/大村美根子(訳)
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥900(税別)