圧巻!異色の警察小説「孤狼の血」

はまさきの大好きな作家さん、柚月裕子さんの
「孤狼の血」が直木賞にノミネートされました!
この「孤狼の血」は先日発表になった、
「このミステリーが凄い2016年版」で国内編第3位!
さらに「本の雑誌が選ぶ2015年度ベスト10」で第2位に入りました!
凄い面白い本なんです。

柚月さんと言えば、「最後の証人」でヤメ検の弁護士・佐方貞人
を主人公に、ある事件の裁判で鮮やかなどんでん返しを披露、
読者をアッと言わせ、その後その佐方貞人の検事時代を
描いた「検事の本懐」「検事の死命」では司法の在り方、
司法の正義とは何かを問う社会派の法廷ドラマで読者を唸らせた
凄い作家さんです!

孤狼の血

「孤狼の血」は、いわゆる悪徳警官を主人公にした、
ピカレスク小説。
悪徳警官物は苦手なはまさきも、この作品のあまりの
面白さにノックアウトされました。

物語は昭和60年代の広島が舞台。この頃は
暴力団同士の抗争が激しかった時代。
警察も暴力団の取り締まりを強化。だがその陰では
警察と暴力団の癒着が問題視され出した頃。

この警察&暴力団の物語を女性作家が描くこと自体凄いし、
警察小説でここまでリアルに描かれているのも凄い。

警察の中のルールなど一切無視し、自力で
暴力団の事件を解決してゆく、孤高の刑事・大上。
検挙率も高く、優秀な刑事だ。さすがに暴力団係とあって、
その風貌はヤクザ並みかそれ以上の凄みを感じさせる。
だがその裏では、暴力団との癒着が噂されていた。
そんな大上のバディに任命されたのが、新人刑事・日岡。
警察の正義を信じて疑わない若手刑事だ。

二人は、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の
捜査を担当することになった。
ヤクザ顔負けの暴力と、ルール無視の強引な捜査で事件を負う
大上。常に行動を共にする日岡は、心の内で違法捜査だと
思いながらも大上に惹かれてゆく・・・。
やがて、失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発!
大上はその衝突を食い止めるために或る秘策を打ち出す!

読んでいると暴力団が正義なのか、警察が正義なのかわからなくなる。
当時の隠蔽体質が大きな問題として扱われている警察のブラックな
部分がリアルに描かれている。
確かに暴力団は悪かもしれないが、きちんと筋を通すヤクザもいる。
しかし悪徳警察官は、ヤクザ以上に汚い部分も持ち合わせている。
そんな中で若き刑事はどう成長してゆくのか?
警察の正義とは一体何なのかを問うている。
友情や愛情というドラマチックな展開と激しい暴力の展開も
絶妙なバランスで描かれている!
読みだすと止まらない驚異の面白さ!

『孤狼の血』
著者:柚月裕子
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,700(税別)