KY刑事大活躍!「生活安全課0係」第3弾「バタフライ」

富樫倫太郎さんのヤバいくらいに面白い、
警察小説「生活安全課0係」シリーズ第3弾「バタフライ」を
読みました!この作品は新しい趣向で面白かったです。

杉並中央署生活安全課に突如誕生した「なんでも相談室」。
通称‘0係’は、組織からはみ出した者たちの受け入れ先だ。
しかし、唯一のキャリア警部・小早川冬彦の活躍のおかげで
捜査一課からは一応、一目置かれている。
小早川は、科警研の「犯罪行動科学部捜査支援研究室」で
犯罪行動心理学を研究していたため、人のしぐさや行動から
その人の心や考えていることがわかるのだ。
だが、小早川はあまりにも正直なため、だまっていることが出来ず、
人をかなりいらつかせる。それが特技だ。
だから、KY警部と呼ばれているのに本人は全く気にしていない・・・・。

バタフライ

生活安全課0係に小学生から相談事が持ち込まれた。
少年の祖母宅に大金が投げ込まれたらしい。
小早川と相棒の高虎が調査をするうちに同じマンション
の他の部屋にも現金が投げ込まれていたことが発覚。
さらに、近所の小学生たちが、血だらけの猫を
見たといって泣きついてきた。

「バタフライ」
0係の厳しい事務職・三浦靖子は、アラフォーで独身だ。
結婚願望はあるが自分の容姿に自信が無く、投げやりに。
だが一大決心をして結婚相談所に登録した。
何度かお見合いをしたが変な男ばかり。
諦めかけたころ、高収入のイケメンが靖子を気に入ったと
連絡が入る。靖子は男性を見るなり一目ぼれ・・・。
とんとん拍子に話は進むが、なぜこんなにかっこ良くて
高収入の男が自分を好きになったかわからず悩んでしまう。
そんな靖子の様子を心配する小早川は・・・・。

「名前のない馬」
寺田高虎は、ギャンブル好きですぐかっとなる
性格が災いして、妻と引きこもりの娘と別居中だ。
ある日、珍しく競馬で当てた。
だが妻や娘の事を考えると気持ちよくお金を使う
気にならず、乗馬クラブへ行ってみることにした。
なんでもよくわかる小早川には知れるとうるさいので
秘密で通うことにした・・・。

「素直になれなくて」
0係りでは「デブウンチ」とあだ名されている樋村勇作の
趣味は、道行くファッショナブルな女の子をスケッチすることだ。
ばれたら変態とののしられそうで誰にもいったことはない。
ある日いつものように新宿2丁目を歩いていたら、女装した
男性が暴力を振るわれているところを目撃する。
この女装した男性を助けたことで、樋村は、隠れていた
自分の性癖に気づくことに・・・・。秘密の喜びを知った
樋村・・・。だが事件に巻き込まれてしまう。

「17才」
0係の責任者・亀山係長は、気が小さくいつも胃の調子が悪い。
さらに警察官だった妻の尻に敷かれ、息つく暇もない。
そんなある日、買い物の帰りに立ち寄ったお店で、
亀山は恋に墜ちてしまう!驚くべきその相手とは?

「青い影」
0係一の腕っぷしを誇る、安智理沙子に小岩署の刑事から
連絡が入った。安智の母の真由子がパチンコ屋で暴れて
留置所に入れられたという。
安智は母親を憎んでいた。母親は、大酒飲みでさらに男好き。
子どもより男を優先するような女だった。
思春期に入った頃母親と別れ、安智は保護施設で育ち、警察官に
なったのだった。母親との関係に悩む安智理沙子・・・。
小早川たちと0係で扱った事件を追いながら、母の事が頭から離れなかった・・・。

今回の「バタフライ」は、0係で扱った2つの事件の謎を追いつつ、
チームのメンバーの悩みや事件を解決してゆく2重構造で
連作短編になっているところが非常に面白い。
メンバーひとりひとりの物語を描くことによって、より身近に感じられる。
今後のシリーズに深みが増す。そんな風に感じられる作品。
いつもなら、小早川の空気の読めない感が面白いけど、
今回の作品はチームのメンバーが主人公。彼らをサポートする
小早川がとても良い味を出している。

次の作品は「スローダンサー」。楽しみ!

『生活安全課0係 バタフライ』
著者:富樫倫太郎
出版社:祥伝社
価格:¥700(税別)