警部補・原麻希の切ない過去が明らかになる。「警視庁‘女性犯’罪捜査班 警部補・原麻希 氷血」

女性刑事が主人公の大人気警察小説シリーズ「女性秘匿捜査官 原麻希」。
その続編とも言うべき新たなシリーズが始まっています。
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」です。
すでに3冊が発売中で、この「氷血」がシリーズ最新作です。

捜査のためなら、猪突猛進!
天才的刑事の感とキレッキレッの洞察力で事件の本質を見抜く原麻希。
旦那は元公安刑事、15歳も年上ですでに退職。最終階級は警視正。
優しく温かい目で麻希を見守る。
この夫婦には、夫の息子とその後に出来た中学生の娘がいる。

今回は、休暇で麻希の実家がある北海道へ家族3人でやってきた。
麻希の夫・則夫は結婚して十年以上も経過しているのに、いまだに
麻希の父親にきちんと挨拶をしておらず、今回はそれが目的だった。
3人は麻希の実家できちんと義理を果たすと、観光に出かけた。
その観光中に寄った札幌の公園で、氷漬けとなった女性の遺体を発見する。

その女性は、以前東京に住んでいた頃に「女性犯罪」」捜査班に
ストーカー被害の相談に訪れていたことが判明した。
麻希は捜査に加わることになる。
道警の生活安全部ストーカー対策室室長は、瀧正義警部だった。
麻希は、瀧を紹介されたときに衝撃を受ける!

瀧は全く覚えていないようだが、瀧は麻希にとっては恩人なのだ。
麻希が警察官になったのは瀧の影響だからだ。
麻希は高校生のとき、忙し過ぎる両親の代わりに3人の兄妹の
面倒をみてきた。良い子に成りすぎたのが高校生でブチギレ不良になってしまった。
その時、瀧正義巡査に出会う。瀧は生活安全課少年係で、荒れた子どもたちに
真正面から向き合う、頼もしい巡査だった。
麻希も瀧に叱られると素直に従った。

しかし、今の瀧正義は昔の面影は全くない。
明らかにおかしい。覚せい剤の常習者のような顔つきだった。
だが、道警の誰もが瀧を空気のように扱っていた。
アンタッチャブルな存在になっていたのだ。

道警は以前から、警官たちの汚職が取りざたされていた。
銃や覚せい剤の検挙率をあげるために、暴力団を使い外国から
密輸させ、それをいかにも押収しました体で実績に挙げると
いうことを組織ぐるみでやっていた。

麻希は、今回の被害者は瀧が殺したのではないかと疑うが・・・。
しかし、瀧は誰かに操られているようにも感じる。

麻希は瀧を助けようと、女性殺害事件の真相を徹底的に暴こうと決意する。
それがどんな結果になってもだ。
また、夫の則夫も道警の膿を出すために協力を要請される。

道警での麻希の孤独な闘い。
瀧と麻希の切ない過去。それらが交互に描かれる。
これまでのシリーズにはなかった展開に、ワクワクする。
事件解決までの怒涛のクライマックスは圧巻!!

『氷血 警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希』
著者:吉川英梨子
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥590(税別)