特撮ファンにもオススメ!ノスタルジー感あふれたミステリ「追想の探偵」

「機龍警察」シリーズでおなじみの月村了衛さんの新作が、
なんとも癒し系のミステリーで、思わずうるうるきてしまいました。
タイトルは「追想の探偵」(双葉社刊)です。

不定期で刊行していた特撮雑誌「特撮旬報」が、社長のきまぐれで
隔月で刊行することになった。編集部は人手不足、
不定期で刊行しているときもぎりぎりの状態だったのに・・・。
しかも、その編集部は部長、デスクを始め、変人ばかり。
まともな編集者はおらんのかいな!?といつも頭を痛めている、
若き女性敏腕編集者・神部実花。
これまでの雑誌の取材のため、消息不明になっている特撮
関係者を何人も捜しあてているので、業界では「人捜しの神部」
と呼ばれている。
また、任務遂行時には、「それが、私の仕事ですから」が口ぐせだ。

そんなとき、業界から特撮ヲタクが涎を垂らして喜びそうな
特上ネタが次々舞い込んでくる。
隔月刊になった「特撮旬報」の特集に使えそうな極上ネタだ!

だが、特撮の全盛期は、70年代~80年代。そんな時期のネタに
ついて調査するのは困難なことだ。
取材をするにも関係者は高齢になっているし、亡くなった人もいる。
しかし、「人捜しの神部」は、ありとあらゆる伝手を辿り、
人を訪ね、関係者だった人たちに取材を重ねてゆく。
だが、捜し当てても空振りすることが多々ある。
それでも挫けないのは、特撮が好きだから!それに関係していた
人々の素晴らしい仕事、映像などのエピソードを知りたいからだ!
陽の目を見て欲しい、特撮ファンに知って欲しい!その思いだけだ。

それらの調査過程と、ネタに仕込まれた謎の解明が
ミステリー仕立てになっていて、そこに様々なドラマが
用意されているのだ。
思うように仕事がはかどらない時、神部はなぜこんな
ことをしているのかと自分に問う。
しかし、探し求めたものに出会った時の興奮と感動は
そんな疑問など吹き飛ばしてしまう。

「特撮ヲタクが待っている!特上のネタを!雑誌を!」
そのネタの解明のためなら、手段を選ばない猪突猛進の
神部実花。彼女の熱き思いと関わった人たちのエピソードが胸に響く。

はまさきも、ウルトラマン、怪奇大作戦、ガメラに
ゴジラ・仮面ライダーと特撮好きは半端ない。
(円谷・大映・東宝と聞くと胸がときめく!)

小説の中では、事情があって放送されずお蔵入りになった
特撮ドラマを巡る制作側と女性編集者の攻防が
描かれているが、実際にお蔵入りになった作品があるのだ。

特撮ファンとしては70年代~80年代の特撮ヒーローもの
の話は大好きで、読んでいてとても楽しく、懐かしく
思い出した。

『追想の探偵』
著者:月村了衛
出版社:双葉社
価格:¥1,500(税別)