ドラマ「相棒」の脚本家が描いた驚異のデビュー作「犯罪者」

「犯罪者」は著者・太田愛さんのデビュー作だ。
圧倒的臨場感、ストーリー展開の面白さ、
個性際立つキャラクターたちがさらに物語を面白くしている。
完成度の高さに鳥肌がたつ。

太田愛さんは、人気警察ドラマ「相棒」の脚本を手がけている脚本家だ。
これがデビュー作なのか?驚愕した。
面白い!面白すぎる!!!

白昼の駅前広場で通り魔殺人事件が発生した。
殺されたのは老若男女の4人。
犯人は近くのビルのトイレに逃げ込み、すぐさま
逮捕されたが、薬物中毒で死んでしまう。

脇腹を刺されながらも、ただ一人生き残った青年・修司は、
搬送先の病院で、ただならぬ様子で駆け込んできた
男から「逃げろ!あと10日生き延びれば助かる」と
警告される。

修司は何が何だかわからないうちに病院を脱走。
怪我が落ち着くまで友人の家にいた後、アパートへ戻った。
そこで、修司は謎の男に襲われる。
そのピンチに、警視庁のはみ出し刑事・相馬に命を
助けられる。

男の警告に「なぜおれが・・・?」と疑問を抱く修司。
死んだ通り魔殺人事件の犯人に疑いを抱く相馬。
2人が逃げ込んだ先は、相馬の友人でフリーライターの鑓水の
マンションだ。長期間音沙汰なしでも、いつでも、何が起こっても
相馬を助けてくれる男だった。

そんな鑓水と修司は気が合ったのか?すぐさま意気投合!

修司が巻き込まれた事件と相馬が疑問を抱いた通り魔殺人事件。
鑓水は二人の話を聞き、この事件はただの通り魔事件では
なく、裏に何かあると結論づけた。

そして3人は謎の暗殺者に追われながら、事件の真相を追う。

やがて、彼らは事件の裏に巨大食品企業と与党大物代議士の
存在を掴む。
そしてそこから浮かび上がる乳幼児を襲った奇病。
隠蔽された全ての事実を暴くべく3人はそれぞれに事件を追った。
通り魔殺人事件と乳幼児を襲う奇病、この二つを繋ぐ
「悪意」の存在。

重要なエピソードを多く配し、めまぐるしい
展開になりながらも全くぶれずに物語が進む。
場面展開の上手さは、脚本を手掛けていた影響か
ぐいぐいと読ませられる。
上下合わせて1,000ページ近い大作なのにまったく中だるみしない。

相馬、修司、鑓水の主役級は三人三様のキャラを魅力あふれる
人物像として描き分けている。
執拗に迫る謎の暗殺者、企業の良心として描かれた企業人
など脇役も非常に魅力的だ。

怒涛のクライマックスまで止まらない!
超絶技巧のミステリー大作!

『犯罪者 上下』
著者:太田愛
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:上巻¥840、下巻¥760(税別)