横溝作品を彷彿とさせる「化身の哭く森」

地元で世界遺産・石見銀山のある大田市在住のミステリ作家
吉田恭教さんの最新作『化身の哭く森』(講談社)
を読みました。

『可視(み)える』、『亡者は囁く』(いずれも南雲堂刊)に続く
元組対刑事で探偵の槇野と警視庁捜査一課の鉄仮面刑事・東條有紀
がオカルト的な事件の謎を追っていくというシリーズの最新刊です。

今回は広島と東京を舞台に、2人が別々の事件から、
ある連続猟奇殺人事件のカラクリを解く!という
ストーリー。

広島の山奥で行方不明になった祖父が7年経過して死亡が認められ、
葬儀が行われた。孫で大学生の春日は、一度大学の仲間と
祖父の痕跡を探すため山に入っていた。その時は何も
見つけれず山を下りたのだった。

その後祖父の遺品を調べると、怪しげな探偵の名刺を発見。
春日たち遺族は、祖父が行方不明になる前に
探偵を使って何を調べていたのか?調査してほしいと
鏡探偵事務所に依頼してきた。調査員の槇野は、新人の
女子調査員とともに、行方不明になった祖父の地元・
広島へと向かう。

一方、警視庁捜査一課の東條有紀刑事らは、
息子が母親を惨殺し息子自身も首つり自殺
を図ったという凄惨な事件の捜査をしていた・・・。

やがて、事件を起こし自殺した青年は、春日と
一緒に山へ入った大学生と判明する。

あの山には入ってはいけない・・・・。
「入らずの山」と呼ばれる昔からの言い伝えがあるにも関わらず、
春日たちはその禁忌を犯した。
町の人たちは、「山の祟り」だと噂する。

山には何がある?なぜそのような言い伝えがあるのか?
母親を殺して自殺した大学生からは薬物反応が出たのだ。
新手のドラッグか?そのせいでもめたのか?
あらゆる推測を重ねる東條だったが・・・。

そんな中、再び山に入ろうと広島へ集まっていた春日と仲間たち。
だが、仲間の大学生たちが次々と非業の死を遂げる。

槇野と東條、別々の調査からまたもや一つの事件へと繋がってゆく。
魅力的な主人公2人が活躍する場面がテンポよく切り変えられ、
一つの事件の謎を追うミステリーより面白さが2倍になっている。
さらにオカルト的な要素が加わることによって、ドキドキ感も
加わりいっきに読ませる。
一作品でもこのシリーズを読んだら、絶対にはまってしまう。
文句なく面白いミステリ。

『化身の哭く森』
著者:吉田恭教
出版社:講談社
価格:¥2,000(税別)