最強の女スパイ登場!『十三階の女』

「女性秘匿捜査官・原麻希」
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」
「警視庁53教場」、「新東京水上警察」など
多くの警察小説のシリーズを描きつづける吉川英梨さん。

どのシリーズもめちゃめちゃ面白く、弱そうに見える
けど、覚悟を決めたらやたらに強くなる女性たちが
とても魅力的で大好きだ。

『十三階の女』は今までの女性刑事とは全く違う。
公安の女性刑事が主人公。

警視庁の公安秘密組織に属する、公安の中でも
エリート中のエリートが集められた精鋭部隊、
組織は警視庁の「十三階」に存在する。

国家をテロリストや異分子から守るため、
時に非合法で非情な手段に出る。
盗聴・盗撮・身分偽装など何でもやる。

その十三階で最強と言われる女性刑事・黒江律子は
新人でありながら、突出した仕事ぶりで
上司の信頼も厚かったが、テロリスト
「名もなき戦士団」から情報を得るため、
ハニートラップを仕掛けたものの失敗!
北陸新幹線を爆破されてしまう。
己の未熟さを痛感した律子は、仕事から離れる。

だが、「十三階」は律子を見捨ててはいなかった。

「名もなき戦士団」を壊滅させるため、新たな
ターゲットを絞り、律子は再びハニートラップで
男を惹きつける。彼の心を自分に向けるため、
様々な情報を引き出し、取引に使う。
次第に男にのめり込んでゆく律子。
男を本当に愛してしまったのかだろうか?
任務に没頭するあまり、壊れてゆく律子・・・。

律子の行動は、どこまでが演技でどこまでが本気なのか?
嘘と真実の狭間で主人公自身が激しく揺れ動いている。
そして、読んでいる方も翻弄される。

愛したかもしれない男との壮絶な騙し合いで疲れ果てる
律子。弱く脆い、そんな風に思えたがクライマックスで
彼女の強さが爆発する!

今までのシリーズで登場した女性刑事と一線を画す。
職務に対する凄まじいまでの熱量が、律子の魅力。

この作品で新たな女性刑事像が確率されたようだ。
めちゃめちゃ面白かった。
次回作が待ち遠しい~。

『十三階の女 警視庁公安部特別諜報員・黒江律子』
著者:吉川英梨
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥713(税別)