心癒される、優しいミステリー『ひゃくめ はり医者安眠夢草紙』

『シンデレラの告白』で第7回角川春樹小説賞を
受賞された櫻部由美子さん。
受賞作を読んだ時、誰もが知っているおとぎ話が
大人のミステリー小説に変化していて、そこが
あまりにも面白くて、感動!感激!しました。

その後は、謎多き画家・フェルメールの半生を
生き生きと描いた、『フェルメールの街』が
とても印象に残りました。

様々なジャンルの作品に挑戦される櫻部さん。
今度は時代小説です。
はり医者の安眠先生が、心と身体の不調の謎を
解き明かします。

眠れない日々を過ごす、染井屋の娘・音夢は、
外神田で鍼灸の治療所を開いている、はり医者
安眠の元へ診察に通っている。
安眠が施す鍼治療で徐々に良くなってきている
ように感じる・・・。
しかし、音夢はある事件がきっかけで心を固く
閉ざしたままでいた。
この世にあらざる物の怪の気配を感じるように
なってしまったのだ…。

だが、安眠のぶっきらぼうな優しさが、やがて
音夢の心を解きほぐしてゆく…。

他に、安眠と懇意にしている、振り薬屋に
降りかかった災難や、安眠の父を看病する
美しい尼・庵主さまの謎に迫る時代ミステリー。

そして、登場人物も魅力的!
音夢、安眠先生ほか、治療院の隣に住む
ご老人・飄兵衛、安眠の友人で、ちょっと
お腹の弱い同心・蒼一郎、美しい尼の庵主さま
などなど心優しき人たちが、この物語を彩っている!

著者の櫻部さんからは
「鍼灸の面白さをお伝えしたくて、安眠先生を
登場させました。皆様の心が暖かな‘気’で
満たされますように…..。」
とのコメントをいただきました。

その言葉通り、読み終わった後暖かい「気」で
包まれているように感じました。

『ひゃくめ はり医者安眠夢草紙』
著者:櫻部由美子
出版社:角川春樹事務所
価格:¥680(税別)