公安刑事の意地を描く、今野敏氏『凍土の密約』

今野敏先生の警察小説シリーズの1点です。
警視庁公安部でロシアを担当する、倉島刑事が主人公。
『曙光の街』(文春文庫)で初めて登場するが、このときの倉島は、自分の立場ややるべきことが見つからず、自分の仕事を持て余していた。
しかし、ロシアの最強の暗殺者・ヴィクトルとの出会いによって、公安捜査官という仕事に目覚めていく。
第2弾『白夜街道』(文春文庫)では、公安捜査官としての自分の仕事に誇りを持ち、忙しい毎日を送っていた、そんなころヴィクトルと再会を果たす。
そして本書『凍土の密約』(文春文庫)では、さらなる成長を見せる倉島刑事が、殺人事件に巻き込まれるところから始まる。

赤坂で殺害された被害者は、右翼団体に所属する男、その二日後、今度は暴力団構成員が殺害された。
2件の捜査本部に呼ばれた倉島は、事件の背後にある謎を独自のルートで調べ始める。捜査本部との軋轢、おそろしく強い暗殺者との戦い。しかし、倉島は公安捜査官としての意地、日本人としての誇りをかけ、事件の原因とも なった戦後ロシアと日本で交わされた密約の存在にたどり着く・・・・。

今回の作品は、「密約」の衝撃と倉島の成長がクローズアップされ、ヴィクトルは登場しないが、非常に面白かった。
倉島刑事の成長物語といった向きもある、こもシリーズ。今後のヴィクトルの登場も含め、さらに続きが読みたくなる、公安警察小説の決定版!!

『凍土の密約』
著者: 今野敏
出版社:文藝春秋
価格:¥600(税別)