元白バイ隊員の著者が描く!「女副署長」の捜査魂!

「虚ろの聖域 梓凪子の調査報告書」
で第10回島田荘司選ばらのまち福山
ミステリー文学新人賞を受賞し
デビューした松嶋智左さんは、
元白バイ隊員。
その経験を活かし描いたのが、
本書「女副署長」(新潮文庫)だ。

数か月前、日見坂署に副署長として
赴任してきた、田添杏美警視。
警察官人生33年というベテランで
あり、県内初の女性副署長という
ことで周囲の目は厳しい。

夏のある日、大型台風が接近
し、大雨に見舞われていた。
夜になり、台風被害対策本部
が設置され、署内の緊迫度は
頂点に達していた。

そんな中、地域課警部補の死体
が警察署の敷地内で発見され、
署内に衝撃が奔った!
胸にはナイフが突き刺さっており、
明らかに他殺。
直後に封鎖されるが、土砂降りの
雨で遺留物が流されてゆく。
犯人は今だ庁舎内に隠れているのか?
それとも、同じ警官の仕業なのか?

台風被害対策という非常事態に
なんと警官の刺殺体!?
これ以上ない大失態に杏美は、
副署長として、所轄署の名誉
をかけて犯人を挙げる決意をする。

だが、杏美の決意を挫くような
事態が同時多発的に起こる!
留置場での不可解な出来事、
署長の娘にかけられる容疑、
被害者の隠れた貌。
署員たちの秘密。
さらに、警部補殺害事件を巡る
剛腕刑事課長との激しい対立。

元警察官であった著者の経験が
随所に活かされ、本書の現場の
描写が非常にリアル。

さらに、警部補殺害事件は、
誰がいつどのようにして殺害したのか?
警察署内というクローズな空間での謎の
設定と、どんでん返しに次ぐどんでん返し
は本格ミステリーの王道を行っている。

女副署長・田添杏美がいかにして、
それらを解決に導いたのか?
この物語の面白さを堪能して欲しい。

『女副署長』
著者:松嶋智左
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥670(税別)