オレ詐欺の実態を描く!「ハイエナ 警視庁捜査二課本城仁一」

吉川英梨さんといえば人気の警察小説
シリーズが何作もあります。
「警視庁53教場」、「新東京水上警察」
「警部補・原麻希」「十三階の女」。
どのシリーズも面白くてはまります。

シリーズ以外の作品は、社会的に
メッセージ性の高い警察小説が
多いと思います。

本作『ハイエナ』はオレオレ
詐欺の実態と捜査二課の刑事の
執念が描かれた異色作。

定年間近い、警視庁捜査二課係長・
本城仁一は復興予算を横領している
復興庁の審議官を追い詰めるため、
その証拠を持ってバンコクへ逃走した
復興庁の職員を追っていた。
しかし、あと一歩というところで、
職員は証拠もろとも自殺。

バンコクまで行き、勝手な捜査を
したとして、帰国すると閑職への
異動が待っていた。
ところが本城はそれを蹴ってしまう。
そのため、辞職を迫られた。

そんな時、警察官僚として出世競争の
渦中にいる息子から、出向中に
詐欺組織に盗まれた警察手帳を
内密にとり返して欲しいと懇願された。

家庭を顧みず仕事に没頭し、息子の
面倒もあまり見てこなかった本城は
息子の隠匿に手を貸すことに。

手帳奪還の過程で本城が掴んだのは
極悪非道の詐欺の実態だった。

本城は、息子の警察手帳盗んだ
オレ詐欺の番頭・味田に迫る。

味田は殺人も厭わない恐ろしい男だ。
最終手段としてオレ詐欺組織に潜入する本城。

本城と味田の息詰まる頭脳戦に
ページをめくる手が止まらない。

本城の刑事の執念が味田を追い詰めるのか?

そして、あまりにも残酷なクライマックス。
こんな哀しい終わりがあるのか~~~~ッ

社会に幻滅している若者を集め、
オレオレ詐欺の架け子に仕立て上げる。
緻密に仕組まれたオレ詐欺のシステム。
架け子として訓練されたものたちが
巧妙な手口で高齢者を騙す。
そして騙される高齢者たち。
その描写があまりにもリアル!
ああ、こうして騙されるのか・・・・。
読んでいると恐ろしくなる。

金と権力をむさぼるハイエナたち。
このふたつの前に、正義とは
なんと儚いものか!!
しかし、それでも正義はあると信じたい!

『ハイエナ 警視庁捜査二課本城仁一』
著者:吉川英梨
出版社:幻冬舎
価格:¥800(税別)