余韻が残る、美しく切ない犯罪小説「未必のマクベス」

早瀬耕さんの「未必のマクベス」を読みました。
大長編でありながら、読ませる展開。
まるで壮大なスパイ小説を読んでいるよう。
クールでスタイリッシュな主人公の
恋心が切なくて痛い。

IT企業Jプロトコルに勤務する、中井優一は、
東南アジアを中心に交通系のICカードの
販売に携わっていた。

同僚の伴浩輔とともにバンコクでのビッグな
商談を成功させた優一は、帰国途中
着陸地変更のため立ち寄ったマカオで
カジノに挑戦、大金を手にする。
マカオのホテルで出会った娼婦から
「あなたは、王になって、旅に出なくてはならない」
と予言めいた言葉を告げられる。

その後、香港の子会社の代表取締役を命じられた
優一。しかし、そこには悪意ある罠が待ち受けていた。

シェークスピアの三大悲劇と言われる
「マクベス」になぞらえた企業サスペンス。
中井と伴は、いつのまにか闇の世界へと堕ちていく。

横領、偽造、殺人・・・。
しかし、それは己の命と大切な人たちを守るためだった。

マカオ・香港・バンコク・サイゴンと
東南アジアの美しい情景を舞台に
繰り広げられる危険すぎる駆け引き!
中井の周囲は誰が敵で誰が味方なのか?
判断を誤ると命が危ない!
手に汗握る展開にワクワクする。

中井の知らないところで、彼の初恋の
人は同じ会社に入社しながら、行方不明に。
現在の恋人の間で揺れる中井。
意外なラストに衝撃を受けた。

危険な企業サスペンスにあまりにも
切ない恋愛エピソードを加えた、
ほかに類をみない、純愛サスペンスだ。

小説の中で、最後まで気になって仕方なかった。
美味しそうな料理・アフリカンチキンと
お酒・キューバリブレ。
食べてみたいな~

『未必のマクベス』
著者:早瀬耕
出版社:早川書房(文庫)
価格:¥1,100(本体¥1,000+税)