読み終わると幸せな気持ちになる「ヴァン・ショーをあなたに」

テレビドラマ「シェフは名探偵」があまりにも
良かったので、その原作である、近藤史恵さんの
「ヴァン・ショーをあなたに」を読みました。

とても素敵なお話ばかり・・・。

商店街の小さなフレン・チレストラン
「ビストロ・パ・マル」は気取らない
本当にフランス料理が好きな客の心と
舌をつかんで離さない。
シェフの三舟は、無口でちょっとぶっきら棒。
髪を後ろで束ね、髭がなかなか特徴的。
外国人に言わせると「サムライ」だ。
そんなシェフの特技はなんと、謎解き!?
シェフを慕うスーシェフの志村。
ワイン好きが高じてソムリエになった
紅一点・金子、そしてギャルソンの高築
この4人でお店をまわしている。

●錆びないスキレット
めずらしくシェフと志村が言い争っていた。
原因は、シェフが野良猫に餌付けをしたこと。
幸いにも常連のお客さんに引き取ってもらった。
その代わり、常連さんのスキレットの手入れを
することに・・・。
ある日、引き取られていった猫が同居している
猫と一緒にまたしてもパ・マルに現れた。
2匹の猫の首にはなぜか干し魚の入った袋が
つけられていた。誰が、、何のために?
その真相があまりにも切ない。

●憂さ晴らしのピストゥ
ベジタリアンのお客さんから予約が
入った。結構難題だが、三舟シェフは工夫に
工夫を重ねて出している。
ある日、三舟シェフの元同僚だった
男が店にやってきた。
男の店で彼が作るソースには秘密があった。
それはいったい・・・。

●ブーランジュリーのメロンパン
「ビストロ・パ・マル」のオーナーが
今度は女性二人が作るパン屋を出すという。
軽食も置きたいというパン屋の女性たちは
三舟シェフの料理レシピを習得にやってきた。
こだわりのパンを置きたいと言う女性店長。
「メロンパン」みたいな甘いパンもという
アドバイスを女性店長は頑なに拒否。
何か事情があるようだ・・・・。

●マドモアゼル・ブイヤベースにご用心
常連客の中に、三舟シェフの好きな人が
いるらしい。
いつもブイヤベースをオーダーする、
ニックネームは、「マドモアゼル・ブイヤベース」。
ある日、その女性から予約が入った。
どうも男性連れらしい。
どうする!?金子と高築はヒヤヒヤものだ・・・。
ところが思わぬ展開が待っていた。

●氷姫
ある男性の告白から始まる物語。
それはとてもつらい失恋の物語。
心も体もボロボロになり、パ・マルに
やってきた。結婚するはずだった
彼女はなぜ出て行ったのか?
三舟シェフは、男性の苦悩に心を寄せる。

●天空の泉
ある女性が回想する、若き三舟シェフとの
旅先でのエピソード。
そのたった一度の触れ合いが彼女の
運命を動かす。

●ヴァン・ショーをあなたに
若き三舟シェフの修業時代のエピソード
第2弾。マルシェでとてもおいしい
「ヴァン・ショー」(ホットワイン)
を飲ませてくれるミリアムおばあちゃん。
ところがある時から「ヴァン・ショー」
を作らなくなった。
それは何故なのか・・・?

「タルト・タタンの夢」の第2弾。
謎を解く鍵は料理の中に隠されていて、
三舟シェフがお客さんの話を聞くことで
その謎を解き明かす。

解き明かされた真相に、時に驚き、その想いに
切なくなり、胸がキュンとなる。

そして、シェフが出す料理が、傷ついた心を癒してゆく・・・。

今作では、三舟シェフの修業時代も
描かれる。その意外な一面にほっこりする。

この素敵な物語の数々に、はまってしまった。
何度でも読みたくなる。
何度でも癒されたい。

傑作!フランス料理×ミステリー。

『ヴァン・ショーをあなたに』
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥770(本体¥700+別)