心霊探偵八雲、高校生時代の事件を描く「青の呪い」

神永学さんの「心霊探偵八雲 青の呪い」
を読みました。

大好きな八雲シリーズ。斉藤八雲が
高校時代に出会った悲しい事件を
描いた作品。
主人公の男子生徒との交流がとても温かい。

早朝の学校の美術室で、顧問の教師が
変死体で発見される。

第一発見者は、人の声が色づいて見える
という共感覚を持った、青山琢海だった。

この事件は、10年前に亡くなった
少女が自分の血で描いたという呪われた
絵が関係しているのではないかと疑われた。
その絵を見たものは呪われるという伝説。

美術部の幽霊部員だった琢海は、数日前に
青い色の声を持つ先輩の女子部員・真希
から一緒に「呪われた絵」の調査をしょうと
持ち掛けられたばかりだった。

両親を交通事故で亡くした琢海の心を救ったのは、
真希だった。琢海は真希が事件に関係してる
のではと疑う。
しかし、琢海は警察に事情を聴かれても
真希のことを庇い続ける。

そんな琢海の前に、孤高のクラスメート・
斉藤八雲が現れる。
琢海を目の敵にするクラスメートともめごと
を起こしたとき琢海を助けたり、
美術部顧問の教師が殺された事件では、
琢海に謎めいた言葉をかけたりする。
そして彼の冷えた眼で見つめられると
琢海は心の底を覗かれたような気になり、
苦手だと感じていた。

琢海が真希のことで思い悩んでいる時、
事件が起こる・・・。

両親を喪い、妹を守る決意をする琢海。
その思いが強すぎるのか、彼の行動は
裏目に出てしまう。
それを指摘する八雲だったが・・・。

心霊現象とミステリーが緻密に絡みあい
ながら物語が進む。
その展開のうまさに引き込まれ
イッキに読まされた。

さらに、苦悩しながら特殊能力に
向き合う琢海と八雲の頑なな姿は読んで
いると切なくなる。
同じ境遇の二人は、事件を超えお互いに
歩みよってゆく過程がなんとなく嬉しくなった。
高校生の八雲が少しだけ自分の心の奥底に
あるものを琢海にぶつけるシーンが心に残った。

『青の呪い 心霊探偵八雲』
著者:神永学
出版社:講談社
価格:¥990(本体¥900+税)