戦慄の展開!「死刑にいたる病」

大ヒット映画公開中の「死刑にいたる病」の原作
櫛木理宇さんの「死刑にいたる病」(ハヤカワ文庫)読了。
映画の評判がとても良いので、原作が凄く
読みたくなり、手に取りました。
読み始めてすぐに物語の中に引き込まれていました。
そして、連続殺人鬼の毒気にあてられ、
背筋がゾッとしました。

ハイティーンの子供たち20人以上殺害し、
自宅の庭にその死体を埋めていた殺人鬼・榛村。

彼は逮捕されたが、警察はそのうちの9件しか
立件できなかった。
それでも9件の殺人で死刑はほぼ確定。
しかし榛村は、9件目の殺人を頑なに否定していた。

そんな時、鬱屈した日々を送る大学生・筧の
もとに榛村から手紙が届いた。
9件目の冤罪を証明して欲しいと・・・。

実は筧は中学生のころ、榛村が経営していたパン屋の
常連で、筧は榛村にとても懐いていた。
筧は子供のころ、地元でも有名な「神童」と呼ばれ
父と祖母から多大な期待をかけられていた。
ところが、有名進学校へ入学すると授業について
ゆくのが出来なくなり落ちこぼれた。
父親から選民意識を叩きこまれた筧は、
落ちこぼれた自分をひた隠していた。

そんな筧の苦悩を知ってか知らずか、榛村は
筧にとても親切だったのだ。

榛村はシリアルキラーの本性を隠し、いい人を
演じ続け、町の住人の心を掴んでいた。
だから、住人たちは筧の不審な行動を
チラッと目撃しても何の疑いも持たなかった。

それゆえ、榛村の素性を知った住人たちは、
彼が殺人鬼だと信じられず、警察に抗議したほどだった。

筧はそんな榛村を信じ、彼の9件目の冤罪を証明する
ために、榛村を知る周囲の人物から情報を集め、
検証を繰り返した。
9件目の犯行は可能だったのか・・・?

筧の調査を通して、榛村の過去が明らかになる・・・。
榛村は恐ろしい性質を持っていた。

榛村はどのように殺人鬼になったのか?
その様子が徐々に明らかになる過程は、ゾッとする。
典型的なサイコパスとして描かれており、
自分の都合の良いように周囲の人間を巻き込む様子が
とても巧く表現されている。

自分も筧の立場だったら、こうなってしまうかもと
思った。

このような人間は、生まれた時から悪なのか?
それとも環境がそういう人間を育ててしまうのか?
今でもはっきりとは言えないようだが、
やはり、環境がそうさせたのではと思ってしまう。

最後の最後まで読ませる展開とクライマックスの
不気味な展開に唖然としたが、とても面白かった。

また、映画のキャスティングは、どの登場人物も
俳優さんたちがはまりすぎていて、凄いと思った。

『死刑にいたる病』
著者:櫛木理宇
出版社:早川書房(文庫)
価格:814円 (本体740円+税)