警察ミステリーとホラーの完璧な融合「地羊鬼の孤独」

大島清昭さんの「地羊鬼の孤独」(光文社)読了。
初読みの作家さん。

警察小説・本格ミステリー・ホラーの融合で
絶妙な面白さを生んでいる。

市内で全裸遺体の入った棺が次々と発見された。
その遺体は内臓が模型に変えられるという
無惨なものだった。
犯人の意図や動機が一切判明せず、
殺人事件をつなぐものは、現場に残された
「地羊鬼」という中国の妖怪の名前のみだった。

新米刑事・八木沢は、女性警部補・林原と
コンビを組んだ。
林原は、自称妖怪研究家・船井の協力を得て
心霊や、妖怪といったオカルト方面からも
この事件を捜査にあたった。

それはやがて、過去の連続殺人事件に繋がってゆく。

ところが、捜査が進むと信じがたい状況が現れる。
捜査員が次々と倒れ、本部は壊滅状態に!
もしかして、この捜査本部は呪われてしまったのか・・・!?

さらに、妖怪研究家・船井の蘊蓄の凄さに驚愕する。

呪いの木札、得体知れない者の目撃証言、
心霊スポットで起こる怪異現象など、ホラー要素が
強いが、それがリアルな霊的現象で描かれているのか?
それともオカルト的トリックを使ったミステリー
なのか?その曖昧な境界がとても不気味に感じる。

呪いや幽霊と言った科学では解きあかせない
現象はとても恐ろしいが、生身の人間は
どうだろうか?
人間の心の闇ほど恐ろしく手に負えないものはない。

本格的警察小説にホラー・ミステリーをミックス。
そしてロジックを駆使した推理とどんでん返し、
二重三重の謎解き!ホラーミステリーの恐ろしさ・面白さを
全て詰め込み、まさかのラストに「ありえない!」と
思わず叫んでしまう!鳥肌物の凄い作品。

『地羊鬼の孤独』
著者:大島清昭
出版社:光文社
価格:¥1980(本体¥1800+税)