鮮やかなあだ討ちの裏に隠された秘密とは!?「木挽町のあだ討ち」

第167回直木賞にノミネートされた「女人入眼」を
描いた永井紗耶子さんの新作
「木挽町のあだ討ち」(新潮社)読了。

感動・感涙の時代小説ミステリーでした。
既刊本が直木賞にノミネートされるのは
納得のリーダビリティの高さで時間を
忘れて読みました。

江戸の町が白銀に染まった、ある雪の夜、
芝居小屋のすぐ近くで、見事なあだ討ちが
成し遂げられた。
美しい若衆・菊之助はその夜、女物の着物を
羽織り、父親を殺めた下男を待ち伏せする。
そして、一閃!下男の首を斬り、血まみれの
首を高々と掲げた。
その雄姿は多くの人に目撃され、木挽町の
語り草となった。

二年後、菊之助の縁者だという一人の侍が
芝居小屋で働く人たちに仇討ちの詳細を
訪ねてやってきた。

「あのあだ討ちを見たかって?ええ、
見ましたよ・・・」
詳細を語る時の芝居小屋の面々は誰もが
その時の感動を口にする。

かつて菊之助が世話になった芝居小屋の関係者たち。
木戸芸者・殺陣師・衣装係・小道具・筋書・・・。
その現場に居合わせた人々が自身のこれまでの人生と
あだ討ちの詳細を織り交ぜながら語る、仇討ちの顛末。

見事に父のあだ討ちを成し、無事に故国へ帰り
父の跡を継いだ、菊之助。
彼を支えた芝居小屋の者たちのドラマは、感涙の
ストーリーだ。
彼らの生き様を読むだけでも時代小説として成立
するのに、ここからさらに前代未聞の展開が待っている。

あだ討ちを成功させるための巧妙な仕掛けの数々。
その仕掛けが明らかになると、全く別の世界が現れる!
想像を絶するラストに鳥肌が立つほど感動した。

時代小説を好きな人、ミステリーが好きな人、
感動を待っている人、すべての人に読んで欲しい1冊。

『木挽町のあだ討ち』
著者:永井紗耶子
出版社:新潮社
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)