ラストラインシリーズ岩倉剛の軌跡をたどる。「灰色の階段 ラストライン0」

堂場瞬一さんの「ラストライン」シリーズ
最新作「灰色の階段」(文春文庫)を読了。

初めての事件から50代に至るまでの岩倉剛が
出会った事件を短編で綴る。

岩倉剛の初めての事件は、強盗殺人。
窓ガラスを焼き破り侵入した犯人。
先輩から岩倉は意見を求められる。
ふと同じような事件を最近新聞で読んだこと
を思い出す。それは山梨で起きた事件だった。
それを聞いた本部上層部から、山梨の
事件を調べるよう、命じられる
【手口】

翌日に結婚式を控えた岩倉。しかし殺人事件
が起こってしまい、岩倉は帰るに帰れない状態。
殺されたのはデジタル系コンサル会社の
社長だった。捜査の末、重要参考人が浮上。
捜査は一方向に絞られそうだったが、
岩倉はなんとなく違和感を持つ。
翌日の結婚式に間に合うのか!?
【嘘】

新たに立ち上がった、捜査一課追跡捜査係に
異動になった岩倉剛。
5年前に起こった未解決の路上強盗事件で
犯人だという男が名乗り出てきた。
早速取り調べを開始するが、まったく
要領を得ない。岩倉はこの男は何かを隠して
いると感じる。
【隠匿】

捜査一課火災犯捜査係に異動になった、岩倉剛は、
飲食店が多く入るビルの火災現場にいた。
火元は4階。犠牲者は煙にやられたようだ。
この火災で亡くなった人の身元を調べると
一人だけ不明者が上がった。
周辺を捜査すると間もなく身元が判明するが、
奇妙な事実に辿り着く。
【想定外】

大友鉄に誘われて舞台を観に行った岩倉剛。
その舞台の主演女優・実里から共演者の
男性がファンからストーカーされていると
相談を受けた。アイドル出身というその役者は、
線が細く気弱そうな男性だった。
その時、岩倉は事件を抱えていなかったため、
ボランティアでそのストーカーの件を引き受けた。
ところが・・・・!?
【庇護者】

警視庁捜査一課から南大田署への異動が
決まった岩倉剛。妻との関係も破綻し
別居状態。岩倉の際立った記憶力を研究
しようとするサイバー犯罪対策課から
目をつけられている。
そして、再び火災現場いる。そこで
男性の遺体が発見されたのだ。その現場に
一人の男がやってきた。岩倉は男を見た時
どこかで見た顔だと思った・・・。
【戻る男】

若い時から、こと事件に関しては驚異的な
記憶力を持つ岩倉剛。
彼のその記憶力は、数々の事件を解決に導いてきた。
そして、一つの方向へ暴走する捜査班に
「待った!」をかけられるのは、岩倉剛だけ
だった。
今作の短編6編は、いぶし銀のベテラン
刑事・岩倉剛の活躍を描いた作品集。
仕事もだが、プライベートな部分まで
描かれていて、岩倉という刑事の人柄がよくわかる。
そして、彼の捜査で「意外な真相」に
辿り着く過程は読みごたえがあり、面白い!

「ラストライン」シリーズファンには
たまらない一冊だ。

『灰色の階段 ラストライン0』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥836(¥760+税)