都市伝説が人の心を惑わす・・・「みどり町の怪人」

彩坂美月さんの「みどり町の怪人」
(光文社文庫)読了。

以前、「向日葵を手折る」(実業之日本社刊)
を読んで、それがとても素晴らしい作品だったので
他にも読んでみたいと思っていたら、この作品
に出会った。

七つの連作短編で綴られる。

舞台は、1990年代初めで、携帯電話も
スマホもましてやSNSなどない時代。

田園にかこまれた、どこにでもある
郊外の町「みどり町」には、
不気味な都市伝説があった。
雨でもないのにレインコート纏い、女・子ども
だけを殺す?
とても痩せていて、髪はボサボサで目がギョロ
っとしている、日本刀を持っているらしい・・。
「怪人」・・・・。
その大元は、20年前に実際に起きた凄惨な
事件が隠されていた。

そんな伝説があるこの町に引っ越してきた
若いカップル。二人にはある秘密があった。

姑の過干渉に辟易する嫁。夫が単身赴任に
なり、姑の娘と3人で暮らすことになったが、
嫁は、姑の行動に不審を抱くようになる。

ある日から、仕事場で机を並べている隣人の
視線が気になり始め、次第に恐怖を抱くように・・・。

担任の先生を巡る子どもたちの諍い
切ない展開。子どもたちの切実な思い。

大学生たちがみどり町の怪人の正体を
追うと意外な真実に行き着く。

閉塞感漂う、郊外の町で起こる事件の数々。
人の心の中にある不安やうしろめたさが
恐怖を増幅させ人々は疑心暗鬼に陥る。

物語を通じて「怪人」が登場する。
その都市伝説の大元になった事件の真相が
あまりにも切なく衝撃的・・・。

それぞれの物語は自分自身が作り
出した妄想の中で恐怖を感じるが、
真実は意外な形で明らかになり、ホッとする。

ひねりの効いた展開が面白い。

『みどり町の怪人』
著者:彩坂美月
出版社:光文社(文庫)
価格:¥770(¥700+税)