若きキャリア警察官の正義と矜持を描く「祈りも涙も忘れていた」

警察官、検事、役人、一貫して彼らの「正義」
を貫く姿を描く、伊兼源太郎さんの新作は、
若きキャリア警察官が主人公の
「祈りも涙も忘れていた」(早川書房)だ。

著者が愛読する、ハードボイルドと
警察組織を舞台に描かれるミステリー
との融合が奇跡の面白さを生んだ傑作!

26歳という若さで、V県警の捜査一課に
管理官の一人として配属された、新人キャリア
警察官・甲斐。

V県警は、犯罪認知件数が20年連続で、
全国ワーストファイブに入る。
さらに、警官一万人以上が所属する大所帯。

実地経験のないまま、管理官として放火事件の
陣頭指揮を執ることになった。
着任の挨拶をしたとたん、ノンキャリアの
ベテラン警官から嫌味を言われる。

しかし、甲斐は、慣れない捜査の中でも
めきめきと頭角を現す。
その捜査能力を認めない、ノンキャリアの
ベテラン刑事たちに足を引っ張られるが、
甲斐は、覚悟を決める!
キャリアとノンキャリアの対立、
この対決は読みごたえがある!
やがて、甲斐は県警内で捜査の主導権を
掌握してゆく!

しかし、管内では凄惨な殺人事件が次々と
発生する。
まるで見せしめのような死体遺棄、
さらに捜査関係者の不審な死。
その背後に見え隠れする警察関係者。

一連の事件には黒幕がいるのではないか?
そうにらんだ甲斐は、さらに捜査を進めようするが、
彼を待ち受けていたのは、十二年前の警官焼死
事件に端を発する、V県の警察・政界を揺るがす
一大疑獄だった。

そんな中、甲斐の心をいやしたのは
一人の女性との出会いだった。

警察官としての矜持を貫き通す、甲斐。
捜査の過程で大切な人たちを喪い、絶望に打ちひしがれ
ながらも、決してぶれずに事件の真相を暴く、男の
信念に心が震えた。

『祈りも涙も忘れていた』
著者:伊兼源太郎
出版社:早川書房
価格:¥2,200(本体¥2,000+税)