新章開幕!「紅霞後宮物語」第9幕

小玉と文林の物語も、第9幕へ突入しました。

8幕では、小玉と文林の宿敵・司馬氏の
追放、その娘・司馬淑妃が息子・鳳に
殺害されるいう前代未聞の事件で、
政敵の粛正に成功したかに見えた。
しかし・・・・。

司馬淑妃の死、その息子・鳳の死。
さらに、小玉と後宮を支え続けた
梅花も亡くなったことで、後宮の規律は
乱れ、皇后・小玉の負担が増えていた。

そんな小玉を支えたのは、紅燕と真桂だ。

司馬氏が追放され、新たな政敵が動き出す
前に、文林の政権を確固たるものにする。
そのために、小玉が育てた鴻を立太子に決める。
しかし、鴻は立太子を承諾しない。
小玉と別れて暮らすことになるからだ。
文林は覚悟を決め、鴻を説得することに・・・。

その陰で、小玉に反旗を翻す妃嬪が現れる。
また、鳳についてのある噂が後宮で囁かれる。

次々と二人に難題が降りかかる。
またぞろ、きな臭い事件が起こる予感が・・・・。

しかし今回のことで、小玉は真の友を得るのだ。

後宮は小玉の敵となるか?味方となるのか?
文林を支えると決めた小玉が新たな絆を紡ぐ!

益々面白くなる、後宮小説の傑作シリーズ!

『紅霞後宮物語 第九幕』
著者:雪村花菜
出版社:富士見L文庫(KADOKAWA)
価格:¥600(税別)

ナチス崩壊後のベルリンを活写!「ベルリンは晴れているか」

深緑野分さんの「戦場のコックたち」は2016年に
本屋大賞にノミネートされた作品。
戦場で起こる、日常のミステリーが描かれて
とても面白かった!とにかく戦場での日々が
とてもリアルに感じられた。忘れられない作品。

「ベルリンは晴れているか」は、ナチス崩壊後を
舞台に一人のドイツ人少女が必死に生きる姿を描く。

ナチス崩壊後のベルリンは、アメリカ・ソ連・
フランス・イギリスの4か国に統治されていた。
総統を失ったドイツ国民はこの4か国のルールに
従って生活していた。

ある日、主人公の少女・アウグステはソ連の兵士に
連行される。
アウグステの知人の音楽家が毒入り歯磨きを
使用したことによって、死んでしまったのだ。
容疑者は音楽家の甥だという。
ソ連兵大尉は、アウグステに甥の捜索を命じた。
同行するのは、ソ連の下級軍曹だった。
ところが、途中、元映画俳優と名乗る泥棒も
同行することになった。
奇妙な3人組は、旅の途中様々な事件と遭遇する。

戦争の爪痕が生々しく残るベルリン。親を失い
瓦礫の中で生活する孤児たち。彼らを利用する
心の荒みきった大人たち。
敗戦国のみじめさに日本の敗戦の様子が
重なる。そのリアルさは、二度と戦争が起きない
ようにとの祈りが込められているのかもしれない。

そんなベルリンを背景に描かれたもうひとつの
物語・・。音楽家はなぜ殺されたのか?
犯人は誰なのか?その謎解きだ。
幾重にも張り巡らされた伏線・・・。
あまりにも悲しいその真実に、胸が痛む・・・。

「戦場のコックたち」を超える圧倒的
スケールの歴史ミステリー。

『ベルリンは晴れているか』
著者:深緑野分
出版社:筑摩書房
価格:¥1,900(税別)

引き裂かれた王と麒麟は!「十二国記 黄昏の岸 暁の天」

十二国記シリーズのなかでも、戴国と慶国の
お話が読める貴重な巻。
しかもこの物語は、泰麒が蓬莱(日本)に
戻ってしまってから、戴国がどのように
荒廃していったのかを描いている。
つまり、「魔性の子」のもう一つの物語だ。

泰王驍宗と泰麒が行方不明になった戴国は、
逆賊たちに支配され、荒れに荒れていた。
妖魔が跋扈し村は次々破壊され続けていた。

戴国の将軍・李斎は、逆賊たちと闘い続けた。
しかし仲間は次々と逆賊に寝返り、李斎は
孤立無援になりつつあった。
戴国を救うため、李斎はある決心をする。

慶国の王・陽子は、戴国から命からがら
逃げてきた李斎を保護した。
李斎は、陽子に援助を求めてきたのだ。
何とかして戴国を救いたい・・・!
李斎の悲痛ともいえる叫びに陽子は応えようと
決心する。

陽子の要請を受け、各国の麒麟たちが慶国に集う。
延麒は、泰麒のかすかな気配を蓬莱で感じ取っていた。
麒麟たちは泰麒の行方を探す・・・。
果たして泰麒は行方は・・・?

戴国を救うという、李斎の強い思いは、やがて
天帝が作られたという「十二国」のあり方に
疑問を呈す。なぜ?あれほど国を民を思う王と
麒麟を戴国民から奪ったのか・・・!?
なぜ、なぜ・・・?

心を抉る、奥の深い物語に感銘を受ける。

さらに、初登場の氾王と氾麟が強烈!
延王と氾王とのかけあいがまるで漫才!?
そういう一息つけるところも面白い!

そして2019年に発売されるという新刊長編は、
「戴国」の物語と聞いている。楽しみだ~。

『黄昏の岸 暁の天 十二国記』
著者:小野不由美
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥710(税別)

もう止まらない面白さ!「羽州ぼろ鳶組 菩薩花」

本屋大賞ノミネート作品読書の合間に、ついつい
手に取ってしまってそのまま一気呵成に読了しました。
大好きなシリーズ「羽州ぼろ鳶組 菩薩花」。
すでに7巻まで発売されているので、
あと2冊で追いつく感じです。

江戸では火消番付への関心が高く、お家の評判にも
繋がる。
火消番付の噂がそろそろ江戸庶民の間でささやかれる頃、
ぼろ鳶組・松永源吾は、無謀なやり方で他の火消から
手柄を奪おうと悶着を起こしている男を目にする。
その男は、仁正寺藩火消の柊与一だった。
柊与一の蛮行は、やはり番付のためなのか・・・?
たかが番付・・・。松永は胸に苦い思いを抱く。

そんな頃、火事専門の読売書きの文五郎は、不審な
火事場に遭遇する。火消しによる付け火か?
その後、文五郎が行方不明になってしまう。
父、文五郎を心配し行方を探す息子・福助・・・。
事情を知った松永たちは、真相究明に乗り出した。

そんな彼らの前に現れたのは、火事で親を失った
子ども救い、一人前の火消に育て、「菩薩」と
崇められている八重洲河岸火消・進藤内記だった。

いつもながら、火事場での奮闘シーンは圧巻だ。
しかも今回は、火消たちの壮絶な手柄争いも描かれる。
番付アップのために火事場をおろそかにする輩に、
命懸けのぼろ鳶組らは怒り心頭だ!
さらに人さらい、そして火消による付け火の疑い・・。
一体誰の仕業なのか?
その謎を追うミステリチックな展開と、現代で言う
サイコパスと松永との対決も読み応え十分!
最後の最後まで読ませる、泣かせる!止まらない面白さ!

『菩薩花 羽州ぼろ鳶組』
著者:今村翔吾
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥740(税別)

小説だから描ける「3億円事件」のカラクリ。「1968三億円事件」

1968年に起きた、3億円強奪事件。
犯人は白バイ警官になりすまし、ある会社の
給料、3億円分を積んだ現金輸送車から
いとも簡単に奪い去った。
目撃者がいたことから、すぐに犯人は捕まると
推察されたが、犯人も現金も永久に消え去り
迷宮入りとなった。

戦後最大級の現金強奪事件・・・。

その3億円事件をテーマに、5人のミステリー
作家が、競演した短編集が「1968三億円事件」。

事件と同じような計画を企てた若者たち物語、
事件の犯人に思いを寄せた女の子。
異国の地で事件に思いを馳せる男・・・。
警察の汚点となった事件の扱い・・・。

様々なストーリー展開に「3億円事件」の
影響の凄さを感じさせる。
この事件の真実は一体どんなものだったのだろう?

特に衝撃的で、印象に残った作品は、
下村敦史さんの「楽しい人生」。
日常を持てあましていた若者たちが
3億円事件に巻き込まれる物語だ。
読み終わった後、3億円事件の真実はこんな
ストーリーだったのでは思わせる!

迷宮入りしたが、今でも語り継がれる
「3億円事件」の謎にスポットを充てた
ミステリー。傑作の5編。

『1968 三億円事件』
著者:下村敦史/呉勝浩/池田久輝/織守きょうや/今野敏
出版社:幻冬舎(文庫)
価格:¥580(税別)

背筋が凍る・・・。企業小説「七つの会議」

映画公開中の「七つの会議」の原作本、
池井戸潤さんの「七つの会議」(集英社)を読みました。
とても面白くていっき読みでした!映画も好評のようです。

ある中堅メーカーの営業部。花形と言われる営業一課の
トップセールスマンでエリート課長・坂戸がパワハラで
社内委員会に訴えられた。

訴えたのは、日頃から勤務態度に問題のある
年上の部下・八角だった。
非があるのは問題のある八角の方で、エリートの坂戸は
不問にされると誰もが信じていた。しかし・・・
役員会で下されたのは、信じられない人事だった。
二人の間には何があったのか?

坂戸の代わりに営業一課の課長に任命された
原島は事態の収拾を命じられる。

問題となったメーカーに勤務する7人の物語から
やがて明らかになる、隠蔽された恐るべき真実!
会社に蔓延る「闇」に迫る!

エリート課長のパワハラ事件に関する不可解な人事
という謎をもたせ、その謎を明らかにしようと調査
を始める社員たちに思わせぶりなセリフで阻止する
幹部たち・・・。
まるでミステリー小説のような展開で、読者も
その謎を知りたくてグイグイと読ませられる。

小説の面白さもさることながら、日本の企業の
歪みに鋭く斬り込んでいる!

過去、世界に名を馳せた日本のメーカーがなぜ
失速し、競争に敗れていったのか?
この小説を読むとわかるような気がする・・・

映画も観に行くぞ~。

『七つの会議』
著者:池井戸潤
出版社:集英社(文庫)
価格:¥800(税別)

実は、愛にあふれている!「愛なき世界」

本屋大賞ノミネート作品、三浦しをんさんの
「愛なき世界」を読みました。

とっても素敵な作品です。

植物をこよなく愛す、女子大生・本村紗英は、
さらに研究を続けるため、T大学の大学院を受験する。
見事合格し、新たな仲間と植物研究に没頭する!

子どもの頃から料理が大好きだった、藤丸陽太は、
T大学近くの洋食屋で見習い中だ。

そして、T大学院の植物研究室へランチの配達に
行くうちに、本村紗英に恋をしてしまう。
しかし本村は、三度のご飯よりも植物(特にシロイヌナズナ)
研究が好きときている。

藤丸は勇気を出して、本村に告白するが~~~。

本村はじめ、いつも黒ずくめで超クールな教授、
その先輩でイモの研究に命をかける老教授、
サボテンを巨大化させる後輩など。
地味で地道な研究に情熱を燃やす人たちの生き方に
共感する!
変わり者だけれど、心優しき人たちが織りなす、
心温まる人間模様に癒される。

「愛」とは何だ!?人間同士の恋だけが愛なのか?
いやいやそうではないだろう・・・。
大好きなことをとことん突き詰めることもきっと
「愛」に違いない・・。

ある意味切ない!でもとても幸せな気持ちになれる
「愛」にあふれた作品です。

『愛なき世界』
著者:三浦しをん
出版社:中央公論新社
価格:¥1,600(税別)