「警視庁53教場」、「新東京水上警察」
「女性秘匿捜査官・原麻希」
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」など
多くの警察小説のシリーズを描きつづける吉川英梨さん。
どのシリーズもめちゃめちゃ面白く、
1作品読んだら必ずはまってしまう。
この『十三階の女』で衝撃的な
登場を果たした、最強の女スパイ・黒江律子。
公安の中でもエリート中のエリートが集められた
精鋭部隊、組織は警視庁の「十三階」に属し、
国家をテロリストや異分子から守るため、
時に非合法で非情な手段に出る。
盗聴・盗撮・身分偽装など何でもやる。
シリーズ3作目は、黒江律子が母の介護で
十三階を去ってしまった後の事件。
班長の古池は、米軍辺野古基地移設に
反対する過激派「第七セクト」の内偵
に奮闘していた。
そんな時、十三階の校長・藤本乃里子の
命令で政治家が集まる外交パーティーに
出席する。
そこで、沖縄出身の衆議院議員・
儀間祐樹に同伴する、黒江律子を見かける。
変装しているが、古池が見間違える
はずはなかった。
二人の再会は、またしても悲劇の連鎖を招く。
古池は自分の祖父を殺した男を令和恩赦
で釈放し、運用できるように徹底的に
痛めつける。
凄まじい暴力シーンは目をそむけたく
なるほどの描写力!
男の身体も心もズタズタにする・・・。
古池はまるで復讐の鬼のようだ。
そして、古池も黒江もお互いの内偵の
ために、愛してもいない相手と愛を交わす。
切ないほど悲しいシーン。
「第七セクト」を潰すための作戦は
嘘と真実が複雑に絡み合い、何が真実で何が嘘なのか
わからずページをめくるたびに驚愕する。
タイトル通り、今まで以上に「血」が多く流れた。
家族も愛も犠牲にし、ただ国家のため、
自分を偽り続ける律子の生き方が痛ましい。
これほど壮絶なスパイ警察小説は他にない。
『十三階の血 警視庁公安部特別諜報員・黒江律子』
著者:吉川英梨
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥759(¥690+税)