究極の「どんでん返し」アンソロジー集「自薦THEどんでん返し」

人気の本格推理作家、夢の競演!?
ミステリーファンにはたまらない、
「どんでん返し」だけを集めた短編集。
しかも!それぞれの作家さんたち自身の一押しです!
著者は、綾辻行人さん、有栖川有栖さん、
西澤保彦さん、貫井徳郎さん、法月綸太郎さん、
東川篤哉さん。

綾辻行人「再生」
十七歳年下の美しい妻を持った助教授。
難病を患う妻が口にした、おぞましい運命。
だが夫は妻の奇妙でおぞましい運命にかけてみることに・・・。
ゴシック的な世界観で描かれたどんでん返しに
ふさわしい、戦慄の展開。思わず「ひ~っ」と声が出た。

有栖川有栖「書く機械 ライティングマシーン」
新人賞を受賞し作家となった男。その後ヒット作に恵まれず
悩んでいたら、文芸雑誌の編集長にベストセラーを
目指せと言われる。そして連れて行かれた場所は・・・?
ベストセラー作家になるために地獄の体験!?
本気か!?ジョークか?ブラックユーモア炸裂!

西澤保彦「アリバイ・ジ・アンビバレンス」
西澤さん独特の展開で始まる、明らかにアリバイがあるのに、
自分が殺人を犯したと供述する女子高生。
彼女の目的は一体何なのか!?
その理由に思わず唸る。全てがアンビバレンス!

貫井徳郎「蝶番の問題」
ドSベストセラー作家・吉祥院と彼の後輩で刑事の桂島。
またまた難問の事件発生。なんと貸別荘で5人もの死体が
発見された。全員が死亡しているので、誰が犯人で誰が
被害者かわからない・・・。手掛かりは、被害者の一人
が残した手記のみ。手記を読んだ吉祥院が導き出した
答えに唖然!

法月綸太郎「カニバリズム小論」
同棲相手を殺害しその人肉を食していた男。
その動機が知りたくて、ミステリー作家の
法月が私のところへ訪ねてきた。そこで
私は彼に「カニバリズム」について講釈を
続けた。法月は私の話を静かに聞いている・・・。
二重に仕掛けられた著者の罠!!
読み終わった後、背筋が凍る。

東川篤哉「藤枝邸の完全なる密室」
叔父の遺産を狙い、叔父を亡き者にしようと目論む甥。
自分自身に殺人の嫌疑がかからぬように、周到な
殺人計画を練る。しかし・・・。
密室においての倒叙ミステリー。
本格推理の王道である「密室」と「完全犯罪」に
ユーモアを加味して描かれる。
短編ながらもその論理性の高さに驚く。

どれも作家の自信作。本格推理の醍醐味と
作家の個性が光る、「どんでん返し」への
展開が見事な作品ばかり。
次々と驚きたい人にうってつけの短編集です。

『自薦THEどんでん返し』
著者:綾辻行人/有栖川有栖/西澤保彦/貫井徳郎/法月綸太郎/東川篤哉
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥583(税別)

短編ミステリーに新たな視点「血縁」。

今や、ミステリーの短編集で長岡さんの右に出る人は
いないでしょう!

長岡さん独特の目線で、様々なシチュエーションから描かれる
ミステリ作品は「教場0」に於いても、本作「血縁」に
於いても、誰も想像すらできないラスト。
まさに最後の一撃と言っていいくらいに脳天に響きます。

「血縁」は家族・身内という濃密な関係性の中で
起こる愛憎劇に焦点を充てた短編7作が収められています。

「文字盤」
寺島刑事は犯行現場を再現する「寺島流捜査」でこれまでに
幾多の事件を解決してきた。コンビニ強盗事件が発生し、
「寺島流捜査」で犯人の動きを再現したが、妙な違和感がぬぐえない。
防犯カメラの映像をチェックした時、犯人のある行動に気づく。
寺島は別件で、事故で寝たきりになった同僚の見舞いに行った。
彼は文字盤を頼りに他人とコミュニケーションを図っていたが・・・。
寺島が気づいた悲しい真実!

「苦いカクテル」
父親の介護に疲れた姉、父の苦しみを思うと楽にしてあげたいと
思う。そんな姉の元へ七年ぶりに弁護士の妹が訪ねてきた。そして
昔交わしたある約束を思いだす。父親を思う姉妹の気持ちは・・・?
法廷シーンは圧巻。

「オンブタイ」
事故で視力を失ってしまった、不動産会社の若社長。
何とかマンションで一人暮らしをしている。
そこへ、新しいヘルパーさんが訪ねてきた。
しかしそのヘルパーさんに不穏な動きを感じた主人公・・・。
ヘルパーさんの意図は・・・?
視覚以外で感じる恐怖!長岡さんには珍しい
人間の悪意に満ちたサスペンスフルな1作。

「血縁」
表題作。子どもの頃から姉の支配に置かれていた妹。
成人し、姉と同じ事務所でヘルパーとして働いていた。
ある日、妹はヘルパー派遣先の家で事故に遭遇する!
複雑な姉妹関係が描かれている。妹に対する姉の支配的
態度に「何故・・」と思わずにはいられない。

「ラストストロー」
死刑執行のボタンを押したことで、重荷を抱えて生きる
ことになった3人の元刑務官が、毎月行きつけの飲み屋で
抱えた重荷を一時3人で分け合う会をやっていた。
しかし100回目を迎えた時、3人それぞれの事情が複雑に
からみあう。死刑執行者の心理的負担を軽くする、複数人で
同時にボタンを押す・・・。という例えが効いている1作。

「32-2」
記憶喪失になった女性に、主人公の女性がその日に
あった出来事を辿ってゆく・・・。
資産家の母の家に姉夫婦と同居している、主人公。
姉の夫に訳もなく振り回される1日を回想してゆく。
そして姉の夫の真意に気づいた時、主人公は!?
こちらも長岡さんにしては異色の展開が面白い。
非常に緊迫した場面と姉の夫の不可解な行動が
ユーモラス。

「黄色い風船」
刑務官の男性は、犬の散歩中ちょっとした異変に
気づく。犬の特性を最大限に活かした、心温まる
ハートフルなミステリー。

長岡さんはインタビューで、とにかく「アイディア」
重視と語っています。アイディアをいかに効果的に
見せるか?様々なアイディアを一つの作品に織り交ぜ
ながらミステリーへと変化させてゆく。その手法に
驚嘆します。

様々なアイディアを効果的に使った、ミステリーの
数々が堪能出来ます。

『血縁』
著者:長岡弘樹
出版社:集英社
価格:¥1,500(税別)

人気作家競作!「共犯」がテーマのアンソロジー集。

ハルキ文庫の「共犯関係」を読みました。
今、人気急上昇中のミステリー作家さんたちの
短編アンソロジー集です。
秋吉理香子さん、友井羊さん、似鳥鶏さん、乾くるみさん
芦沢央さんらの競作!

どの短編も読者をやすやすと裏切る!
「ひねり」というスパイスが強烈に効いた傑作揃い!

「Partners in Crime」秋吉理香子
ナルシストを気取った妻帯者がバーで出会った女。
夫に隠れ浮気を楽しむ、W不倫の関係に。
きわどい恋愛ゲームを楽しんでいたはずが、
女の方が執着し始めた。
深刻になるまえに別れたい・・・。
だが女は次第にストーカーに変貌してゆく・・・。
クライマックスに用意された「共犯関係」の鮮やかな
逆転劇に眼がくらむ!!

「Forever Friends」友井羊
夏祭りの日、少年と少女は街を出ることに・・・。
「転校」という別れに反旗を翻すかのような
2人の行動。しかし少女には秘密があった・・・。
子どもたちの行動が切ない展開に・・・。
思わず胸キュンのラスト。

「美しき余命」似鳥鶏
交通事故で両親を亡くし、生き残った少年も
事故の後遺症で余命3年という難病を患うことに・・・。
親戚に引き取られた少年は、その家族の優しさに
包まれ死にゆくはずだった・・・のに奇跡が起きた。
予想外の出来事にどう反応したら良いのか
わからない登場人物たちの微妙な心理状態を、
目を疑うようなクライマックスに着地させ、
見事な共犯関係を完成させた凄いミステリ!

「カフカ的」乾くるみ
高校時代、手紙のやりとりで親交を深めていた
友人と電車の中で再会した女性。
卒業してから疎遠になっていたが、友情が復活。
お互いのプライベートを話している内に、
その友人が「交換殺人してみない?」と言った。
冗談だと思ったが事態は思わぬ方向に動いていく。
この作品自体が不気味な雰囲気を漂わせている。
読んでいくと次第に背筋が凍るような・・・怖さ。

「代償」芦沢央
デビュー後、ヒット作に恵まれずにいたミステリ作家。
だが、今回描いた作品は自分でも自信作と
太鼓判がおせる会心作だった。いつものように
妻にまっさきに読んでもらうと、意外な事実が!
酷似した作品がネット上に上がっているという・・・。
疑心暗鬼の心理描写が半端ない!戦慄もの。

短編ミステリーの醍醐味を堪能できる!凄すぎる5編。

『共犯関係』
著者:秋吉理香子/友井羊/似鳥鶏/乾くるみ/芦沢央
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥640(税別)

本格医療ミステリーの傑作!「背律」

島根在住のミステリ作家・吉田恭教さんの人気
ミステリーシリーズ第4弾「背律」を読みました。

このシリーズは、厚労省のお荷物役人・向井俊介が、
医療事故などの調査の過程で、偶然にも事件に
遭遇し警察と協力して真実を暴くというシリーズ。

シリーズ既刊本は、第3回ばらのまち福山ミステリー文学
新人賞優秀作品賞を受賞した、「変若水(をちみず)」、
「ネメシスの契約」「堕天使の秤」がある。

向井が厚労省のお荷物と謂われる所以は、読みすすめてゆくと
なるほど!!と思わず手を打ちたくなるほどわかる。

大好きな父親をALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病で
失った、真田姉妹。父親は自分の死がどういう状態で訪れる
のか良くわかった上で、延命措置をとらず死なせてほしいと
懇願していた。ところが母親が延命措置をとってしまった・・・。

父の死後、その後を追うように母親も逝ってしまった。
その後真田姉妹は医療の道へと進んだ。
姉は旺林医大病院の神経内科の医師に。妹は看護師に。

そんな時、姉の婚約者・長谷部が何者かに殺害された。
事件当日、食事の約束をしていた真田姉妹が
マンションを訪ねると、長谷部は血だらけで
リヴィングに倒れていたのだ。
第一発見者となった、真田姉妹。二人は事件が
起こった時間、墓参りに買い物とアリバイは完璧だった。

そこで、事件の担当となった女性刑事らは、
事件当日長谷部医師を訪ねた人物を防犯
カメラから割り出すと、病院関係者が二人浮上した。
一人は、親友の脳神経外科医・坂本医師、もう一人は
肝臓外科医の安住医師だった。
病院で聞き込みを開始すると、長谷部と安住が
が激しい口論をしているところを何人かが目撃していた。

警察は安住に焦点を絞ろうとしていた。

一方、厚労省医療安全推進室の大内山碧は、
6か月の期限付きで、医療事故調査支援センターに
出向していた。彼女のサポートは、厚労省の
お荷物と云われている、向井俊介だった。
一番一緒に仕事をしたくないヤツ・・・・。
碧は心の中で毒づきながら、向井とともに医療事故の
内部告発があった、旺林医大病院の肝臓外科病棟で
医局長から話を聞いていた・・・。

長谷部医師殺害事件と、向井たちが調査する医療事故。
そこに浮上する一人の医師。

ALS、医療事故、殺人事件・・・これらが複雑にからみあい、
事件は混迷を極めてゆく・・・。
物語が進むにつれ、各所にちりばめられた謎のピースが
ひとつひとつあわさってゆく。それはやがて一つの事件
へと繋がり、読み手を鮮やかに裏切るのだ。
その手際が鮮烈過ぎる!

しかし、忘れてはならない、医療の切実なテーマも
しっかりと描かれた本格医療ミステリー。

『背律』
著者:吉田恭教
出版社:原書房
価格:¥1,800(税別)

哀切に満ちたミステリー「盤上の向日葵」。

この秋話題のミステリー作品「盤上の向日葵」(中央公論新社)
を読みました。
著者は、「検事の死命」「検事の本懐」
「孤狼の血」「慈雨」など、胸を打つミステリー作品を描く、
柚月裕子さん。
大好きな作家さんです。

今回は、「盤上」とタイトルにあるように、将棋の世界を
舞台にした本格ミステリーです。

埼玉県天木山山中で白骨死体が発見された。
その白骨死体は日本に7つしか存在しないといわれる、
初代菊水月作の将棋の駒を抱いて埋められていた。

元奨励会でプロをめざしていたが、夢破れ刑事に転身した佐野刑事は、
将棋に詳しいだろうということで、頑固で偏屈な石破刑事とコンビを
組まされ、その名駒を頼りに捜査することになった。

片や、将棋界では世紀の対局が迫っていた・・・・。
若き天才棋士・壬生芳樹竜昇とプロ棋士の養成所である
奨励会を経ず、実業界から転身し特例でプロになった
東大卒のエリート棋士・上条圭介との竜昇戦だ。
特に、上条圭介の特異な経歴と天賦の才能をワイドショーが
連日競って取り上げていた・・・。

2人の刑事が名駒を追って、事件の核心へと迫ってゆく過程と
特異な経歴の持ち主・上条圭介の生い立ちが交互に描かれてゆく。

父親に育児放棄された上条少年。それでも父を慕う姿が切なく迫る。
将棋の恩師・唐沢との出会いで人間らしく生きることを
学ぶ上条少年。唐沢の教え通り、ただひたすら勉学に励む。
しかし、上条が大学時代、裏の将棋界(お金をかけて将棋をさす)
の真剣師と出会い、命がけで将棋をさす真剣師たちとの
勝負に心を奪われてゆく・・・。

上条の生い立ちを読んでいくと、胸が苦しくなる。
恩師・唐沢の教えを胸に必死に生きるが、彼の
特異な才能に目をつけ利用しようとするものと出会う。
実業家として成功しても心が休まることはない。
自分の運命に翻弄されつつ生きる上条の姿がとにかく
哀切極まりない・・・。

読んでる途中で、何だか懐かしい感じがした。
この展開・・・松本清張の「砂の器」を彷彿とさせた。

柚月さんにしか描けない、「慟哭」!のミステリー

『盤上の向日葵』
著者:柚月裕子
出版社:中央公論新社
価格:¥1,800(税別)

政界の深い闇に斬りこむ!「トップリーグ」

「震える牛」「血の轍」「不発弾」等で、日本の
経済・金融界の闇を抉り出してきた、相場英雄さん。

今回は、政界の深い闇に斬り込んでいます!
「戦後最大の政治疑獄」と呼ばれ、‘元’総理大臣が
初めて逮捕されたあの事件の裏側に迫ったフィクション。
しかし、これは本当にフィクションなのか?と思ってしまいます。

発行部数400万部を誇る、中堅在京紙・大和新聞の松岡は、
入社15年で経済部の敏腕記者だ。
ところが、突然政治部へ異動になり、官房長官番となった。
松岡は官房長官お気に入りの記者となり、またたく間に
トップリーグ(総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだ
ごく一部の記者のこと)へと上り詰める。

一方、大和新聞で松岡と同期入社だった酒井は、現在
大手出版社で週刊誌の記者をしていた。
ある時、興味深いニュースを聞く。
五輪関連施設建設地から、一億五千万円もの金が入った
金庫が発見されたとのニュースだった。
担当所轄の刑事課長に詳しい話を聞くと、発見された
紙幣は、福沢諭吉ではなく聖徳太子だという・・・。
しかも金庫は大正末期から昭和初期に使用されていた
ような年代物だと・・・。
さらに、紙幣を束ねてある帯封は日銀のものと、
もうひとつは、現在では大手メガバンクに
吸収された、長期信用銀行系のものだった。
その銀行は「日本不動産信用銀行」通称「日不銀」。
その銀行名を聞いた酒井は、バブルがはじけた1990年代前半、
当時の与党副総裁と秘書が、脱税容疑で東京地検特捜部に
逮捕された事件を思い出した。
「日不銀」は戦前戦後にわたり政界の専門銀行のような
役割を担っていた。

発見された聖徳太子が日銀から「日不銀」へと
送金された時期が1973年(昭和48年)だと確認した
酒井は、当時の銀行関係者から取材を始めた。
その取材は、やがて政財界を巻き込んだ政界最大の汚職事件
‘クラスター事件’にぶちあたる・・・・。

永田町、官邸最大のタブーと言われるあの事件の顛末!
政治家からクリーンなイメージをすべて奪い去った
「戦後最大の政治疑獄」をモチーフに描いた
フィクション。小説だからこそ描けた政界の闇!

これが「戦後最大の政界汚職事件」の真実だと思わせる
ほどのリアルさ!小説に登場する閣僚たちの名前に、
実際の事件の当事者たちの名前をあてはめながら読んで
いくと、事件の真相が見えてくる・・。そんな気がしてくる!

どれほど不正を暴こうとも、鉄壁の要塞に阻まれる。
翻弄され、それでも正義を貫こうとする記者たちの
‘魂’に心が揺さぶられる!

『トップリーグ』
著者:相場英雄
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,600(税別)

鬼教官・風間が新米刑事を現場で鍛える!「教場0」

長岡弘樹さんの人気警察小説シリーズの最新刊が
発売されました!
「教場0 刑事指導官・風間公親」です。

前2作を上回る面白さで、興奮しました。

凶悪事件、難事件の増加に県警本部がとった秘策とは!

「教場」「教場2」は警察学校が舞台だったが、
本作は、警察学校の教官になる前の風間が、
新米刑事を現場で育てる「風間道場」が舞台。
「風間道場」に送り込まれた刑事たちと
犯人たちの攻防に息が詰まる。

「仮面の軌跡」
借金の肩代わりに男と交際を続けてきた女性。
だが、大企業の御曹司から見初められ、男に別れを告げるが
二人の秘密を暴露すると言われ・・・。

「三枚の画廊の絵」
数年前に離婚し、客からの依頼で細々と絵を描きながら
画廊を営む男性。唯一の楽しみは親権を手放した息子の将来。
画家を目指す息子だったが、その夢を阻むものが現れ・・・。

「ブロンズの墓穴」
息子が学校でいじめに遭い登校拒否になってしまった。
母親は、女性担任に再三いじめの相談をしようとするが、
いじめ存在を認めようとしない・・・。
面会を拒む担任の態度に、母親は業を煮やしていた。

「第四の終章」
隣室に住むかけだしの女優に思いを抱く男性。
そんなある日、男性の元へその女優が助けを求めてきた。
彼女の部屋で俳優仲間の男性が自殺しようとしているという。
その俳優には何度かアパートで声をかけられたことがあった・・・。

「指輪のレクイエム」
50歳で自宅デザイン事務所を営む男性には、70歳で認知症に
なった妻がいた。20歳の歳の差はあるが、愛し合って結婚した。
しかし男性は妻の介護に疲れ果てていた・・・。

「毒のある骸」
昇進目前の法医学教授は、服毒自殺した遺体を司法解剖する際、
事故を起こし助教に大けがを負わせてしまう!!

誰が事件を起こしたのか?ではなく、事件はなぜ起きたのか?を追う
警察ミステリだ。著者独特の着眼で描かれるそれぞれの短編には、
緻密に計算された伏線が仕掛けられ、回収された真相の先に
さらなる一撃が襲う。
前2作を上回るストーリー展開は、今までの警察ミステリ
にはないひねりが効いていて心が揺さぶられる。

「刑事コロンボ」「古畑任三郎」を彷彿とさせる
倒叙ミステリーの傑作が誕生した!

『教場0 刑事指導官風間公親』
著者:長岡弘樹
出版社:小学館
価格:¥1,400(税別)