保険業界の内幕も暴く!「一応の推定」

保険調査員が活躍するミステリーです。
「一応の推定」広川純著(文春文庫)

一応の推定とは?保険用語であるらしく、
自殺の場合、保険金を支払わなくてもよいという
免責事項のある保険商品を契約した場合、亡くなった状況が
自殺と断定出来なくても、それに足る状況証拠が揃えば、
「一応自殺と推定される」として保険金は支払われない
という事らしいです。

一応の推定

ベテラン調査員・村越に依頼された保険調査。
それは、膳所駅で轢死した老人の事件だった。

村越は、老人の背景をつぶさに調査してゆく。
その過程で判明した事実。
老人の経営する工場は不渡りをつかまされ倒産寸前・・・。
さらに、愛しい孫娘は重篤な心臓病を患い
海外で移植手術を受けるしか助かる道はない。
しかしそれには莫大な費用がかかる・・・。

老人は、ほんの数か月前に保険に加入したばかりだった。
調べれば調べるほど、自殺としか言いようがない。
だが、村越はどうしても納得できない。
老人が亡くなっても得られる保険金は微々たるもの。
それは、会社の借金返済などに充てれば残りわずか。
孫の手術費用にもならない。
調査して自殺とわかれば保険金は支払われないのに・・・?

駅で老人が線路へと飛び込んだところを目撃した人はいなかった。
だが、とうとう老人と同じホームに居たという男性を見つける・・・。
村越は真相に辿りつけるのか?

老人の轢死は事故死だったのか?
それとも愛しい孫娘のための覚悟の自殺だったのか。
村越の執念の調査は、二転転三転を繰り返す。
「一応の推定」という調査結果を出すことになるのか?

保険業界の裏側、臓器移植、経済状況・・・
現代の日本社会が抱える様々な問題を見事に描き切った
長篇社会派ミステリー。第13回松本清張賞受賞作。
松本清張賞にふさわしい、傑作中の傑作!

『一応の推定』
著者:広川純
出版社:文藝春秋
価格¥543(税別)

ノンフィクションのようなミステリー『遠海事件』!

先日、「ミステリー小説を楽しむ会」という読書会を行いました。
その時に参加者のお一人が紹介され、ほかの参加者さんから
「読んでみたい!」と一番声の上がった作品。
詠坂雄二『遠海(とおみ)事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか』(光文社文庫)
早速読んでみました。

遠海

若く有能な書店員だった、佐藤誠。
書店で万引きした女子高生に本気で説教する、人間味あふれる男性だ。

しかし、佐藤誠はこれまでの人生でなんと!86件もの殺人を犯した殺人鬼。
その犯罪はいつも完璧に計画的で、死体を含めた証拠隠滅も徹底していた。

そして、佐藤は恩人でもある会社の上司とその娘を殺害する。
ところが、佐藤はこの殺人に限り、致命的な証拠を残すのだ。
遺体の首を切断するという猟奇殺人の痕跡を残してしまった。
なぜ、彼は遺体の首を切断することになったのか?

事件発生から、県警捜査一課の阿比留刑事は、佐藤に対して執着するが、
結局、動機も見当たらず、さらにアリバイを崩すことが出来ず、
迷宮入り事件になってしまう。

徹底的に証拠隠滅を図り、殺人事件自体を無きものに
してきた佐藤誠。遺体が出なければ事件として立件
出来ないから、完璧なまでの完全犯罪だ。
では、なぜ、遠海事件では証拠隠滅を図らなかったのか?

遠海市で起きた異常な事件の真相、そして伝説に彩られた佐藤誠の実像とは!?

フィクションでありながら、まるでノンフィクションの
事件ルポを読んでいるような感覚に陥いる・・・。
著者が企てた、挑発的で不可解な「遠海事件」の謎を解くことが出来るのか!?

『遠海(とおみ)事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』
著者:詠坂雄二
出版社:光文社(文庫)
価格:¥600(税別)

衝撃的な面白さ!月村了衛「槐 エンジュ」

大人気!近未来警察小説シリーズ「機龍警察」の著者
月村了衛さんの新刊「槐 エンジュ」(光文社刊)を読みました。
めちゃめちゃ面白かったです。

「土漠の花」は自衛隊員がある女性を守りながら
敵と闘い、守るべきものを守りとおした、そのすさまじい
激闘シーンに心が熱くなりましたが、この「槐」はそれ以上に
はまさきの心を鷲掴みしました。
一気読みしました。読みだしたら止まらないです。

槐

水楢中学校「野外活動部」は毎年夏休みにキャンプをする。
部長の弓原公一以下部員全員で!と言っても男子4人、女子3人の7人、
それと引率の先生二人の9人だけど・・・。
顧問の田中先生は合宿前に頑張り過ぎて足を痛め、
急遽、生徒から全く信頼されていない教頭先生と、
産休の代用女性教員。こちらの先生も全く愛想のない先生。
それでも生徒たちは楽しそうにキャンプ場へ出掛けた。
しかしその夜、キャンプ場は、武装した半グレ集団「関帝連合」に
占拠されてしまう。
彼らの狙いは、振り込め詐欺で騙し取った金40億。
その大金がこのキャンプ場に隠されていたのだ。
関帝連合内部の派閥争いもあり、現金回収を急ぐリーダー・
溝淵は、キャンプ場へ遊びにきていた宿泊客らを皆殺しにし、
公一たちを監禁した。
だが、その時、何者かが関帝連合に逆襲を始めた!?

携帯の電波も届かず、助けを呼ぶ手段もない!
金のために殺人集団と化した悪党たち!
生き残るための絶望的な闘いに挑む中学生たち。
彼らを守る冷徹にして不敵な最強の兵士!
その兵士とは一体誰なのか!?
中学生たちに迫る強敵!そして絶体絶命の窮地。
問われる友情と勇気、そして生き抜く力!
彼らの勇気あるセリフと行動に胸が熱くなる!
圧倒的不利な状況で、少年少女たちは生き残ることができるのか!?

怒濤のドラマにページをめくる手が止まらない!
面白すぎる!!胸躍るエンターティンメント!

『槐』
著者:月村了衛
出版社:光文社
価格:¥1,600(税別)

今野敏さん「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズ最新刊「廉恥」!

今野敏さんの警察小説シリーズ「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズの最新刊
「廉恥」を読みました。
このシリーズの新作は久々。楽しんで読みました。

廉恥

大学生になり、最近引きこもり気味の娘を心配している、強行犯係の刑事・樋口彰。
その日も娘のことを気にしつつ、風呂に入ろうとしていたら、
世田谷署に殺人事件発生の一報が入った。被害者は、水商売の若い女・南田麻里。
麻里は、警察にストーカー被害の相談をしていた。
仮にこの事件がストーカーによる犯行だとしたら、
マスコミの追求は避けられない・・。
浮足立つ捜査本部。そこへ、警察庁からストーカー事件専門の
刑事指導官がやってきた。
まだ若い女性キャリアだ・・。本部捜査員たちは色めき立つ。
争い事が嫌いで、誰かとぶつならないように一歩退いている樋口は、警察内で
その性格は協調性があって冷静沈着だと評価され、捜査一課の係長を務めている。
そんな理由で、今回の女性キャリアと本部捜査員との繋ぎ役も
樋口におはちが回ってきた。

麻里にストーカーを働いていた男をマークしていた時、
樋口の元に信じがたい情報が入った!
都内の高校に送られた脅迫メールの発信源リストの中に、
樋口の娘の名前があることが分かったのだ!樋口は窮地に立たされる!
そんな時に、被害者が警察にストーカー被害の相談をしていたことを、
新聞社の記者が嗅ぎ付けてしまった・・・!

組織と家庭の間で揺れ動く刑事の姿!!
だが、刑事としての矜持が樋口を正しい方向へと導く!

「廉恥」は一人の刑事の苦悩を描くとともに、ミステリー性も非常に高い!
樋口と女性キャリア・小泉らの捜査によって、
被害者・麻里の人間性が浮き彫りになってゆく・・・。
ストーカー被害に遭った憐れな女性から、次第に変わる被害者の本当の姿・・・。
そして、捜査線上に浮かぶ3つの影・・・。
そこから浮かび上がる事件の真実・・・。

物凄く面白かった!樋口刑事、かっこ良かったです!

今野さんいわく、「もっとも等身大の自分に近い」と語る刑事を描いた、傑作ミステリー!

『廉恥 警視庁強行犯係・樋口顕』
著者:今野敏
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)

クーンツの‘超’傑作!「ライト二ング」!

「一気読み不可避!」という帯のあおり文句につられ、
思わず買ってしまったD・R・クーンツの「ライト二ング」。
1990年代の海外ミステリーで、クーンツが輝きを放っていた頃の作品。
はまさき、クーンツは「ファントム」くらしか読んだ事がなく、
ホラーテイストのイメージが強かったのでしばらく読んでいなかったが
この作品、めちゃめちゃ面白い!
仕事をしていなかったら、多分徹夜で読んでしまっただろうと思う。

ライト二ング

不幸な生い立ちながら、ベストセラー作家になったローラ。
彼女は幼いころから不思議な体験をした。
母親は、ローラを生むとすぐに亡くなる。
父親は小さな雑貨店を営み、一人娘のローラを愛し大切に育てた。
ローラが七歳くらいの頃、店にジャンキーがやってきた。
父娘は危機に陥るが、そのとき稲妻と雷鳴と共に
謎の男が彼女らを救いに現れた・・・。
そして、ローラが12歳の時父親が病気で亡くなった。
一人残されたローラはマキルロイ・ホームという養護施設に
預けられた。
そこで双子の少女たちと運命的な出会いを果たす。
だが、ローラの美しさに引き寄せられた、施設の用務員・ウナギに
付け回される・・・。
その時、またもや雷鳴と稲妻と共に謎の男が現れローラを救う。
その後ローラは順調に成長し、ダニーという愛する男性と出逢い
作家となる決心をする。

ローラを救う謎の男は「守護の使い」。ローラはそう認識していた。
そして、陰でローラにつきまとう、恐ろしい男・ココシュカ。
彼らはいったい何者なのか?
守護の使いの正体は?
なぜ、ローラは命を狙われるのか?

ローラの成長と共に、彼らの正体が徐々に判明してゆく。
謎の男が現れるシーンでは、最初はほとんど情報がない。
敵なのか味方なのか?それすらもわからない。
だが次第に、謎の男の正体は読者はもしかして・・・タイムトラベラーでは?
とわかるように小道具がどんどん表に出てくるのだ。
その加減が絶妙で、読者の心をくすぐる。先へ先へと読みたくなるのだ。

執拗にローラを追う暗殺者たち。
一人息子のクリスとともに逃亡の決意をしたローラの運命は?
そして謎の男・守護の使いとの関係はどうなる!?

ロマンチックでありながら、残酷!そしてドキドキ・ハラハラの
展開はページを捲る手が止まらない!
刊行後20年以上経過しても、斬新さ、その面白さは変わらない!
海外エンターティメントの傑作!

『ライト二ング』
著者:ディーン・R・クーンツ/野村芳夫(訳)
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥990(税別)

ついに完結!「警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結 シュラ」

「警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結」シリーズ。
「フェイスレス」「スカイハイ」「ネメシス」そして完結編
「シュラ」。
やっと完結編を読みました。

「ネメシス」で美結の家族を惨殺した犯人がわかる。
美結は警察手帳を残し、復讐の鬼と化し家族の敵を葬る決心をする。

シュラ

小西巡査は、世界的ハッカー‘C’を逮捕、連行した。
‘C’の制裁リストの筆頭に載る田中。‘C’は彼を殺すべきだと
主張。しかし、佐々木忠輔は殺人はさらなる殺人、闘いしか生まない
と‘C’を説得しようとする。
水瀬警視正、吉岡警部補らは、田中の世界支配を止めるために
‘C’に協力を煽ぐ・・・。

そんな中、田中の信奉者が警察内部にも潜んでいた・・。
田中の邪魔者を抹殺するために新たな罠を仕掛けていた。

美結に絶対に復讐をさせてはいけないと、
佐々木忠輔は一人、警察を抜け出し美結を探す。
やっとの思いで探し出した美結は、すでに忠輔の
知らない恐ろしいまでの負のオーラに包まれていた。
何とか美結を止めようと必死に説得する忠輔だったが・・・。

また、小西と美結の同期でSATの戸部梓も
美結に復讐させまいと、美結の居所をつきとめた。

そして、水瀬警視正たちは、田中を逮捕するために、
世界が驚愕する最後の隠し玉の準備をしていた・・・・。

彼らの政治生命、そして命をかけた一世一代の
大勝負が、今始まる・・・。
その瞬間に日本警察、いや、日本は全世界を敵に
まわすことになるのだ・・・。

「フェイスレス」「スカイハイ」「ネメシス」
これらの作品に張り巡らされた、謎と伏線が
「シュラ」で全て回収される。
その爽快感はたまらない!
また、このシリーズで常に問われていた、「正義」。
「正義」とは一体何なのか?
著者の想いは佐々木忠輔の言葉を借りて訴えかけられる。

今までの警察小説は全く異なる、奥深いテーマで描かれた
新感覚の警察小説、ついに完結!!

『警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結 シュラ』
著者:沢村鐡
出版社:中央公論新社(文庫)
価格:¥720(税別)

カラクリ人形と大正レトロと本格ミステリーが絶妙にマッチ「からくり探偵」

ユーモア満載の本格ミステリー。
新たに発見しました!
『からくり探偵・百栗柿三郎』伽古屋圭市著(実日文庫)です。

表紙は何とも言えないほんわかな雰囲気。
でも事件はなんとも血なまぐさい・・・。
そんな難事件を、一見頼りなさそうに見えるちょっと不遜な態度が
たまに傷の名探偵・百栗柿三郎と、人語を解する猫型カラクリ人形・お玉さん
そしてひょんなことから、助手になったお千代さんの3人で解決しちゃう
4つのミステリー。

カラクリ探偵

ある屋敷で不可解な主人殺しが起こる。
殺害したのは「人造人間(ホムンクルス)」!?
そんなばかな!最初に疑われた、屋敷のお手伝い
千代さんは、自分の疑いを晴らすためと事件の真相を
はっきりさせるために、探偵を探して・・・おっと
目の前に「百栗庵 よろず探偵 人探しも承り」と小さく書いた
看板を発見。これは天子様のお導きと気を良くした
千代さんは、一見頼りなさそうな青年・百栗柿三郎に
調査を依頼。しかし何ともやるきなさそうな・・・・
第1話「人造人間の殺意」。

探偵よりも発明に精を出す・百栗柿三郎。
得意げに見せられた懐中時計もどき。
それは、「懐中時計型麻酔銃」だった。
一体何に使うのかと思案しながら歩く千代さん。
藪の中で分解死体を発見!殺されたのは、
化粧品会社の社長だった。
そんな中、百栗庵に殺された社長の執事が訪ねてきた。
なぜあんなむごたらしい分解死体になったのか?
柿三郎は調べてみることに・・・・。
第2話「あるべき死体」

日々発明に明け暮れる柿三郎。
今度は「回転慣性乾燥装置」なるものを
発明。千代さんとともにその性能を
確かめるべく装置を動かすとなんと爆発!!
そんな大騒ぎの中、百栗庵に一人の婦人が・・・。
彼女は「一斎居士」の下に身を寄せた息子が
戻って来ないので、連れ戻してほしいと依頼してきた。
一斎居士とは、果心居士の末裔とうそぶく怪しげな手妻を使う男だった。
柿三郎は千代さんをその宿舎に潜入させ、
依頼者の息子を探すことに・・・・。
カラクリ猫・お玉さんと千代さんが大活躍!
第3話「揺れる陽炎」

一斎居士事件から、奇術や手妻のカラクリ覚え、
千代さんに披露する柿三郎。
そんな頃、またしても百栗庵に来客が・・・。
凄惨な事件で両親を失い、行方不明になった
少女を探してほしいとの依頼だった。
依頼した男は、遠縁にあたるものから頼まれたらしい。
柿三郎は、珍しくやる気を出し、すぐに動く。
どうやって行方不明の少女を探すのか?
千代さんとその男は、行方不明になる直前まで一緒に
いた友だちに話を聞くことに。さらに柿三郎は
犬を使って消えた少女の行方を匂いを頼りに探す
と言い出した・・・・。
第4話「惨劇に消えた少女」

大正時代のモダンな設定が、全体を通しての物語にピッタリ。
主人公は冴えない風貌で探偵稼業は、やる気がないのに
めっちゃ頭脳明晰で、発明大好きだからとても博学。
その博学さを活かし、彼自らが考案した指紋採取などの科学捜査、
そして状況証拠を元に繰り出される実験から、明晰な推理を展開。
面白いです!
珍妙な発明よりも、探偵のほうがずっとあっているのに・・。

百栗柿三郎、お千代さん、そしてカラクリ猫のお玉さん
この3人(?)の絶妙なかけあいがたまらない!
続編、絶対に描いてほしい!面白さです。

『からくり探偵・百栗柿三郎』
著者:伽古屋圭市
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:¥593(税別)

ファンタジーかミステリーか?「烏に単は似合わない」

今井書店で行っている「読書交歓会」で参加者のお一人が
紹介されたファンタジー小説。「烏に単は似合わない」阿部智里著。
しかし、ファンタジーと思って読み進めると意外な展開に驚くと紹介され、
気になっていたのをやっと読みました。

確かに!!凄く面白い!
さらにこの作品、弱冠20歳の女子大学生が描き、第19回松本清張賞を
受賞した作品なのです。それも凄い・・・。

烏に単衣

人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」。
烏が、時と場所また、位に応じて人型と鳥型を使い分けて生活している。
貴族は大衆の前で決して鳥型には変形しない。
八咫烏の世界を舞台に、緻密な設定を行い違和感のないファンタジーの
世界観を作り上げた。

その「山内」では、世継ぎである「若宮」の后選びが始まった。
朝廷で激しく権力を争う、大貴族から4人の后候補が使わされた。
南家からは浜木綿。西家からは真赭の薄(ますほのすすき)。
東家からはあせび。北家からは白珠(しらたま)。
春夏秋冬を司るかのように、それぞれに美しい姫君たちが
后の座をかけて華麗に競い合う。
だが、彼女たちが住まう後宮で不可解な事件が次々と起こる・・・。

読み始めると、緻密に設定された異世界ファンタジーで
4人の姫たちが「若宮」を待つ日常が描かれる。
時に争い時にお互いを思いやる・・若宮とのラブストーリーを
中心に進むのかと思っていたら、全く別のストーリーに
誘われる。
后の座をめぐり、張り巡らされた陰謀と罠・・・。
そして、女性たちの人間関係、微妙な心理描写など
ただの異世界ファンタジーでは終わらない。
完璧なる人物設計で描き分けた、4人の姫君たち。
いつの時代でも変わらない女性の「本質」を見事なまでに
描き切っていて凄い!

優れたファンタジー小説であり、極上のミステリー小説でもある傑作!

『烏に単は似合わない』
著者:阿部智里
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥670(税別)