女子高生探偵が大活躍の人気シリーズ完結!「卒業生には向かない真実」

「自由研究には向かない殺人」「優等生は探偵に向かない」
に続く第三作は、「卒業生には向かない真実」
人気シリーズもこの三作目で完結となる。

もっとピップの活躍を読みたかったが、
あまりにもつらい事件が彼女を襲うので、
早く解放してあげたいと思っていた。

この完結編は、シリーズ最高傑作だと思う。

卒業を間近に控えたピップは、大学入試直前に
ストーカーらしき人物に嫌がらせをされていた。
無言電話、匿名のメール、ピップの家の敷地に
首を斬りとられたハトの死骸が置いてあった。
さらに、私道にチョークで首のない棒人間が
描かれていた・・・・。

それらの行為が6年前の連続殺人の被害者にも起きた
ことと似ている・・・?
犯人は捕まり服役中だというのに?
でも逮捕された人物は無実を訴えているという。
まさか冤罪で犯人はほかにいるのか・・・?
そう考えたピップは調査に乗り出す。
この時はまだ自分に危険が及ぶことがあるなど
予想もできないでいた。

さらにピッパは、マックス・ヘイスティングス
から名誉棄損で訴えられていた。
ピップは彼のやったことを許せないでいたので、
彼からの折衷案は絶対にのまないと心に決めていた。

両親には心配をかけすぎるので、そのことは
黙っていた。
不安な気持ちを恋人のラヴィだけに話していた。
ラヴィはピップを守ろうとする・・・。

だが、魔の手はピップに迫っていた・・・。

既刊2作品はこの完結編のための伏線だったのでは
と思わせるくらい、圧巻だ。
すべての謎はこの完結編で繋がるのだ。

しかし、恐ろしいほどに息をのむ、あり得ない
展開が繰り広げられる。
この衝撃と真実は到底受け入れがたいが・・・。

今回もピップの凄まじい行動力と突出した
頭の良さには舌を巻く。
友人たちとの絆の深さと最愛の恋人・ラヴィとの
愛情の深さに感動した。

シリーズ中、一番ハラハラさせられた。

『卒業生には向かない真実』
著者:ホリー・ジャクソン著/服部京子訳
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥1,650(本体¥1,500+税)

見当たり捜査官の厳しさを描く「心眼」

相場英雄さんの「心眼」(実業之日本社)読了。

指名手配犯の顔を頭に刻み付け、日々街頭に
たち、ひたすら犯人を追う見当たり捜査官。
彼らの激務の過程を描く、傑作警察小説。

警視庁の捜査共助課の新米刑事・片桐は、
見当たり捜査員になってまだ1年足らず。

毎日街頭に立ち続けるが、今だに成果は
上がっていない。

同じ課の先輩刑事の補佐などで、コツは
掴みかけているが、自分の手柄をあげた
ことはなかった。

しかし、同じ課の上司で係長の稲本は1人で
次々と大物手配犯を挙げ、圧倒的な
結果を残していた。
ただ、課の中では一匹狼の彼は浮いて
おり、誰も話しかけなかった。

片桐はそんなことも構わず、稲本に
捜査のイロハを聞きこむ。
だが、軽くあしらわれる始末。

片桐はなんとしてでも手配犯を挙げると
心に誓う。

そんな時、新しい捜査一課長が就任してきた。
一課長は、ハイテク捜査に力を入れ、
非効率極まりない「見当たり捜査」を不要だと
ぶちまける。
「見当たり捜査班」は絶対絶命のピンチに陥る!

見当たり捜査官としてのプライドを傷つけられた
彼らは、稲本始め、チーム一丸となって
犯人確保に邁進する・・・!

犯人確保に情熱を傾ける警察官の地道な努力。
ハイテク捜査も確かに有効だが、それだけに
頼って良いのか?
何十年も積み重ねたベテラン刑事の「眼」は
ただ犯人確保だけではない、その裏にある
事件の本質をも見抜くのだ。

片桐も、稲本の教えによって徐々に成長し、
確かな「心眼」を備えていくだろう・・・。

警察官の仕事について、またハイテク捜査の裏
にある画策や、監視社会についても深いところまで
描いてある、硬派な警察小説。
渋くてとても面白かった。

『心眼』
著者:相場英雄
出版社:実業之日本社
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)