日本のミステリーの歴史がものすごくわかりやすい!「日本ミステリー小説史」

ミステリー小説はたくさん読むけれど、
日本のミステリーっていったいどう確立されたのか?
ちょっと興味がわいて読んでみました。
堀啓子さんの「日本ミステリー小説史」(中公新書)

日本のミステリーの歴史がコンパクトにまとまっていて
わかりやすく、さらにとても面白かったです。

世界で初めて「ミステリー小説」と呼ばれたのは、
エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」です。
この小説は今までにない斬新さで世界を瞠目させたと
あります。
実際、高校時代に「モルグ街の殺人」を読んだとき
ミステリー小説とは知らずに読み、当時の人々と
同じような衝撃を受けたと思います。
先日、再読する機会がありましたが、何度読んでも
凄い作品だな~と感心しました。

日本では、明治時代に黒岩涙香が自身の立ち上げた
「萬朝報」で海外のミステリー作品を翻訳し連載を始めます。
日本人は海外翻訳物で初めてミステリー小説に出会ったようです。
評判は上々で、萬朝報も人気を博します。
しかし、海外翻訳ミステリーも徐々に翳りが見え始めます。
国産のミステリーに期待がかかります。
日本初の創作ミステリーは、黒岩涙香が実際の事件を基に描いた
「無惨」と言う作品。ミステリーとしての完成度が
高く、現代のミステリー作品と比較しても充分いける!
ということですが、当時の日本人にとってはあまりにも
論理的過ぎて、不評だったそうです。

その後、ミステリー作品自体が翳りはじめ、不遇の時代を
迎えます。
しかしその中にあって、文豪たちがミステリチックな作品を
描いています。
驚きなのは、耽美の代名詞・谷崎潤一郎がミステリー作品を
描いていたという事実!短編で「途上」です。
紹介文を読んだらものすごく読みたくなってきました!!
集英社文庫「谷崎潤一郎犯罪小説集」に収録されています。
また、佐藤春夫もミステリー色の強い「指紋」を描いています。

昭和に入ると、江戸川乱歩、横溝正史、松本清張など
探偵小説から社会派ミステリーまで傑作な作品が
続々登場。

日本のミステリー小説が花開き進化し今のブームに
繋がっています。
そんなミステリーの歴史がとてもわかりやすく解説してあり
さらに大発見がありました。
ミステリーの好きな人におススメです。

『日本ミステリー小説史 黒岩涙香から松本清張へ』
著者:堀啓子
出版社:中央公論新社(新書)
価格:¥880(税別)

天才医師が暴く‘病’の謎!「天久鷹央の推理カルテ」

先日、本の学校今井ブックセンターで行われた
実業之日本社刊「崩れる脳を抱きしめて」
発売記念「知念実希人さんトークショー&サイン会」で
知念さんのお話を聞いて、すっかりはまってしまった
はまさき・・・。
大人気シリーズ「天久鷹央の推理カルテ」シリーズの
第1弾を読みました。

名前からして、主人公は絶対の男性だろうと思ったら
なんと、女性ではないですか!
頭脳明晰、博覧強記の天才女医、さらにツンデレ!
強烈個性のキャラクター「天久鷹央」。
相棒は、ちょっとお人よし気味で気の弱い、
天久の傍若無人ぶりに辟易気味・・・?
でもその頭の良さに敬服している、男性医師の小鳥遊(たかなし)優。

天医会総合病院の「統括診断部」。
各科で「診断困難」と判断された患者がまわされる特別部門だ。
そこは‘超’がつくほどの天才医師・天久鷹央が部長を務める。

河童に会ったと語る少年、病院内で人魂を見たという看護師、
突然、赤ちゃんを身ごもったと訴える女子高生。

信じがたい現象も、必ず科学的、医学的根拠がある!
天久が語る真相に思わず手を打ちたくなる!

多様なエピソードの数々に読者はくぎづけ!

次の‘事件’は何だ!?
ワクワクが待っている。

『天久鷹央の推理カルテ』
著者:知念実希人
出版社:新潮社(文庫nex)
価格:¥550(税別)

読みだしたら止まらない!ノンストップ医療サスペンス「仮面病棟」

これは面白かったです!
久々に読んだノンストップでした。
知念実希人さんの「仮面病棟」。

療養型病院に、週一回バイトで当直医を務める
速水秀悟は、この日の当直医から突然交代の
依頼があり、仕方なく勤務についた。

だがこの日に限ってとんでもない事件が起きた!

ピエロの仮面をかぶった強盗犯が、拉致した
女性を連れ病院に立てこもった。
その女性は拳銃で撃たれており、強盗犯は
治療を迫った!秀悟は女性を治療し、何とか
脱出できないか試みる。
しかし、強盗犯は秀悟や病院の院長初めスタッフたちを
拳銃で脅し続けた。

それでも秀悟はあきらめず、助けた女性ともに
脱出方法を模索した。
その過程で、秀悟は病院に隠された秘密を知ってしまう・・・。

閉ざされた病院内で繰り広げられる息を呑むような
犯人との攻防、心理戦・・・。

ピエロの仮面をかぶった男の正体とは?
病院に隠された秘密とは何か?

めまぐるしく変わる展開の早さ、次第に
明らかになる隠された病院の秘密。
一体どんなからくりが隠されているのか?
先へ先へと読みたくなる、ページをめくる
手が止まらない!

ノンストップ医療サスペンスの極致!

『仮面病棟』
著者:知念実希人
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:¥593(税別)

知念実希人さんのイベント、楽しかったです!

11月19日(日)午後3時より、本の学校今井ブックセンター
2F多目的ホールにて、実業之日本社刊
最新作「崩れる脳を抱きしめて」発売記念
「知念実希人さんトークショー&サイン会」
を行いました。

土曜日から突然の寒波。真冬並みの寒さの中、
お申込み頂いたファンの皆さまが全員ご参加
下さり、大変盛り上った会となりました。

知念さんのお話は、現役の医師なのに、なんでミステリ作品を
描いているのか?という自身の謎について。
医師になる道が大変険しかったことについて。
(特に、研修医時代、それから内科学会認定を獲るために
必死になって働いたこと、)

子どもの頃からミステリー作品が好きだったこと。
(ルパン、ホームズ、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティ)

学生時代は、新本格ブームだったこともあり、
本格ミステリをよく読んだ事。

デビュー後のちょっと信じられない事件について・・・。
そして今の執筆活動について。

時に面白く、時に真面目に語って頂きました。

そして、医者への道、ミステリ作家への道、
どの道も大変であるということを真摯にお話してくださいました。

真面目で熱心でミステリに熱い「思い」を抱いている作家さんだな~
と思いました。

「崩れる脳を抱きしめて」は編集者さんから「恋愛小説」を
描いてほしいと依頼されたけど、描きたくないと
突っぱねたそうです。でも「恋愛小説か~」と思って
電車に乗ったら、ストーリーが頭の中に降ってきた?そうです。
とてもロマンチックで美しい表現が随所にちりばめられた
恋愛小説らしい作品です。
でもそれがどうミステリーに変化しているのか?
驚くべき手法で展開する、究極の恋愛ミステリーです。

素晴らしいトークショー&サイン会でした。

知念さん、実業之日本社の皆様、
ご来場いただいたすべての皆様、
本当にありがとうございました。

医療ミステリーの極致!「螺旋の手術室」

11月19日(日)午後3時から、本の学校今井ブックセンター
2F多目的ホールで知念実希人さんの「トーク&サイン会」
を行います。

ということで、今週は知念実希人作品ウイーク!
今回紹介するのは、「螺旋の手術室」です。
あまりにも残酷な真実!
医療ミステリーの極致!

純正医科大学付属病院の教授選の候補者だった、冴木真也准教授が
手術中に不可解な死を遂げる。その執刀医だった医師は、冴木準教授と
教授の座を争っていた。周りから疑惑を持たれ、マスコミにも
追われたその医師は、特別室に入院という体裁をとり逃げ込んだ。
しかし、急激な体調悪化で亡くなる。
教授選候補者たちが次々と亡くなり、冴木真也と同じ病院で
働く、息子の裕也は父の死に疑問を持つ。
大学を探っていた探偵が遺した謎の言葉を手掛かりに
独自で調査を始めるが・・・。

父を憎みながらも、父と同じ医師となった裕也。
簡単な手術だったにも関わらず、父は手術中に
死んだのだ。なぜ父は死んだのか?
そして父との確執で実家をでていた裕也の妹は
父の死に衝撃を受ける。

連続して起こった教授選候補者たちの謎の死。
偶然の死ではない。
裕也は殺人だと確信するが、誰がどんな手を使って
殺害したのか見当もつかなかった。

「完全犯罪」を目論んだ謎の殺人者。
誰が何のために・・・?

謎を探る裕也に襲い掛かる危機、
「超」スリリングな展開。
医師にしか描けないトリック!
そして、意表を突くラスト!

医療ミステリーの面白さが十分堪能できる傑作。

『螺旋の手術室』
著者:知念実希人
出版社:新潮社
価格:¥710(税別)

ミステリー仕掛のピュアな恋愛小説「崩れる脳を抱きしめて」

11月19日(日)の午後3時から、本の学校今井ブックセンターで
知念実希人さんのトーク&サイン会が行われます。
トークショーでお話される本は、
ラブストーリーとミステリーが絶妙のバランスで
描かれた、「崩れる脳を抱きしめて」です。

とてもピュアで切ない、究極の恋愛ミステリー。
「どんでん返しの伝道師」と異名をとる、
知念さんのテクニック炸裂です。

神奈川の終末期医療の病院へ研修医としてやってきた碓氷(うすい)は、
脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会う。
外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれ父に対する憎しみに囚われる碓氷。
心に深い傷を抱えた二人は次第に心を通わせてゆく・・・。
研修を終え地元に戻る碓氷に、ユカリは碓氷の過去に秘められた謎を解く。
ユカリによって碓氷の心は自由を得る。そしてユカリに対する自分の本当の
気持ちに気がつく。
だが、碓氷が地元に戻った後ユカリが亡くなったとの知らせが届く。
ユカリの死の真相を知るため再び神奈川に戻った碓氷に突き付けられた
信じがたい現実!
ユカリは幻だったのか?自分は夢を見ていたのか?自分が愛した女性は
誰?死んだのは何故・・・?

限られた命の中で芽生えたピュアな恋。二人の心が寄り添ってゆく過程は
胸が苦しくなるほどの展開・・・。
切ない恋愛小説家と思いきや、この恋に仕掛けられた数多の謎!!
その謎のピースがひとつにあわさった時、目のくらむような衝撃が襲う。

心を鷲掴みにされる、いまだかつてない究極の恋愛ミステリー。

『崩れる脳を抱きしめて』
著者:知念実希人
出版社:実業之日本社
価格:¥1,200(税別)

山岳ミステリーの醍醐味!「失踪者」

「闇に香る嘘」で江戸川乱歩賞を受賞した下村敦史さんの
山岳ミステリー「失踪者」を読みました!
山を舞台にしたミステリーは他に「生還者」があります。
どちらの作品もリアルな山の描写が素晴らしく、自然の脅威を
感じました。ミステリーとしては最高の面白さです。

2016年、山岳カメラマンの真山は、
10年前にペルーのシウラ・グランデ峰を登攀中、
真山たちを助けるために、自らザイルを切り
雪山のクレバスに落下した親友・樋口の遺体を
引き上げるために、再び同じ場所に来ていた。
そして、遺体を引きあげると真山は驚愕する!
遺体の顔はなぜか年をとっていた。
10年前クレバスに落ちたと思っていた樋口は
実は生きていたのだ。

しかし、なぜ生きていることを公表しなかったのか?

親友の行動と死に疑問を持った真山は、その謎を
解くために調査を始める・・・。

孤高の天才的クライマー・樋口。
誰にも心を開かず、山だけを信じ生きていた。
そんな樋口に真山は惹かれた。
若い時は、K2制覇を二人で夢見た。
だが、将来を考え社会人となった真山と
山のためだけに生きる樋口との間には
少しずつ溝が生まれた。
そんな時、樋口が若き山のエース・榊の山岳
カメラマンとなっていることを知る。
8千メートル級の山を次々制覇する、榊。
高山病でリタイヤする樋口。
真山は樋口が「下山家」と陰口を言われることに
激しい憤りを感じていた・・。

樋口のことを調べる内に、真山あることに気づく。
まさか・・・?そんなことが!

山に惹かれた、男同志の友情。
樋口が残したメッセージ。それを受け取る真山。

樋口の死の真相を探るミステリー的展開と、
二人の友情と男の挫折と再起の物語が
壮大な山々を舞台に描かれる、完璧なる山岳ミステリー

『失踪者』
著者:下村敦史
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)

‘超’逆転の医療ミステリー!「ネメシスの契約」

吉田恭教さんの厚労省・向井俊介シリーズ第2弾
「ネメシスの契約」を読みました。
デビュー作「変若水 をちみず」に続き、
壮絶なトリックは読み応え十分です。

厚労省医政局総務課医療安全推進室に勤務する
向井俊介に調査の依頼が入った。
従妹の司法書士から紹介された女性弁護士の
相談事は、依頼人の夫が胃がん治療のため入院したのに
心筋梗塞で亡くなったのはおかしいと病院側の医療ミスを
疑っているので、その病院を調査してほしいとのことだった。
しぶしぶ調査を始めた向井だったが、その男性がどんな
状況で亡くなったのかをスタッフ聞いていくと、妙な
違和感を感じた。

スポーツ新聞の記者である周防正孝は、大学生の時
父親の高木が判事の首を切りとるという猟奇的
殺人を犯し、拳銃自殺したことに疑問を抱いていた。
高木は正孝の母と自分に虐待をし悪事に手を染め、
何度も警察のやっかいになっていた。

殺されても死なないような男が、自殺などするはずがない。
実父の汚名を晴らすというより、自分と大切な恋人の将来の
ために高木の冤罪を晴らしたいと考え、事件を調べ直すことにする。

かたや、死刑制度反対を訴える、人権派弁護士の中学生になる息子が
無残な遺体で発見された。しかもその殺害過程を撮影した
テープを遺族に送りつけたのだ。副島刑事はあまりの
残虐性に、犯人の強烈な悪意と憎悪を感じた。
これはただの殺人事件ではない・・・。

厚労省の向井が調査する医療ミス、記者の周防が調べる
高木の冤罪、副島刑事が捜査する殺人事件。
それぞれが抱える案件が交差した時、犯人の恐ろしい
計画が暴かれる!!

悪意と憎悪の連鎖が生んだあまりにもすさまじい殺戮事件。
それは、殺害トリックにも表れている。
誰もが想像を絶するトリックにのけぞるだろう・・・。

横溝正史的世界観のミステリに最新医療の殺害トリックと
テクノロジーを用いた、奇想天外な本格ミステリー。

『ネメシスの契約』
著者:吉田恭教
出版社:光文社
価格:¥2,000(税別)