月別アーカイブ: 2012年10月
人情キャリア署長が活躍!『署長刑事』第2弾『時効廃止』
大阪中央署の署長・古今堂航平は、ちょっと変わったキャリア署長だ。
人情に厚く、正義の心を持ち、捜査について上から横やりを入れられても、納得するまで調べ上げる。
前回のひき逃げ事件では、一見するとシンプルな事件だが、その裏に隠された複雑な人間関係が絡んだ事件の真相を暴きだした。
そして第2弾『時効廃止』では青年署長とベテラン刑事が活躍する。
彼の周りにはいつしか信頼できる仲間が増えていたのだ・・・・。
ある工事現場で作業員が不運な転落事故で命を落とした。
そのとき彼は、「昔ついた嘘のバチがあたった」と言い遺した。
事故死した男の言葉が気になった、大阪中央署のベテラン刑事・谷は彼の身元を調べた。
彼は、17年前のストーカー殺人事件で重要な目撃証言をした板内という男だった。
板内の目撃証言で、馬木という青年が容疑者として警察に連行された。
そして馬木のアパート周辺から殺害に使われたと思われる凶器ほか、血にまみれた運動靴などが発見されたことで、馬木の容疑が決定的となったのだ。
しかし馬木の妹は、兄は無実だと17年前に捜査を担当した谷に言い続けていたのだ。それが縁で谷刑事と馬木の妹は結婚することになるのだが・・・。
建設作業員転落事故からしばらくして、大阪名物のお祭り‘船渡御’で沸く夜、大阪城外堀で大手警備会社専務の死体が見つかる。
事故か、自殺か?古今堂署長らが調べていくうちに、他殺ではないかということに気付く。
しかしまたしても上から圧力がかかる。そう!その大手警備会社は府警のキャリアたちの天下り先でもあり、社長は公安委員だったのだ。
そしてさらに調べていくうちに、十七年前のストーカー殺人との関連にも気づいたのだ!!
谷刑事の妻への想いと古今堂署長の真相究明の思いが一つとなって、事件の裏に蠢く悪意と真実を暴きだしていく!!
愛嬌ある青年署長と彼をとりまく刑事たちの活躍がまたしても心に沁みる!!読後のさわやかさも加わりいっそう面白さを増す!「署長刑事」シリーズ第2弾!
『署長刑事 時効廃止』
著者: 姉小路祐
出版社:講談社
価格:¥648(税別)
道尾ワールド全開!『カラスの親指』が映画化です!
人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。
そんな二人の生活に一人の少女が舞い込んだことで、二人の生活に少し彩りが生まれた。
やがて同居人が増え、5人と1匹の共同生活が始まる。
「他人同士」の奇妙な生活は、時としてすさんだ心を癒してくれる・・・。
しかし彼らの残酷な過去が消えるわけでもない・・・・。
そして、彼らは残酷な過去に別れを告げるべく、自分自身の人生を懸け、一世一代の大勝負に出る!果たして彼らが企てた大計画とは・・・?
道尾秀介と言えば、ホラー作品でデビューしたが、その後はミステリー小説作家として定着。
ミステリーには謎解き、トリック、大逆転と色々な描き方があるが、道尾さんの作品は後半の大逆転で読者を楽しませてくれる達人。
道尾作品に‘騙された‘読者は数知れず・・・。
見事なまでのミスリードにひっかかり、何度も読み直すな~んてことはたびたび。
その中でもこの『カラスの親指』はお見事!!
さすがに日本推理作家協会賞を受賞しただけあってストーリーは際立って面白いし、登場人物はみな魅力的。
そしてお約束の大逆転!大どんでん返し!!いつもなら、ううう~騙された!で終わる道尾作品もこの「カラス親指」に限って言えば、‘あ~騙されて良かった~’と最後に思わず言ってしまうそんな作品です。
映画を観てから読むのか・・・?原作を読んでから観るのか・・・?迷いますよね?
『カラスの親指』
著者: 道尾秀介
出版社:講談社
価格:¥743(税別)
人情に厚いキャリア署長を描いた渋い!警察小説『署長刑事』
新感覚!ちょっとホラーなミステリー『よろず一夜のミステリー』
大学生の日比野恵(けい)がアルバイトを始めたのは、都市伝説を扱う不思議系サイト『よろず一夜のミステリー』。
ある日そのサイトに不穏な投稿が寄せられた。「呪い水で人を殺せるって知ってる?」・・・。
同じころ、怪死事件が発生。
サイトの青年社長・万木輝一(ゆるきてるかず)やサイエンスライターの蓮城万聖(れんじょうまさと)など、
個性派ぞろいのチーム「よろいち」が都市伝説の事件の謎に挑む!新感覚のホラーミステリー誕生です!
主人公の日比野恵は、けいって名前なのに皆からめぐみって呼ばれてる。
いじられてるのか?愛されているのか?恵は複雑。 なんといっても顔だけが良い生きる目標ゼロのプーに近い。
それをコンプレックスと感じ、めちゃめちゃ悩んでいる。
その悩みを解決するために、大学では哲学を専攻しているけど、いっそう悩みは深い・・・・。
その恵を容赦なくいじるのは、サイトの青年社長・輝一。
顔が良いのに何やっても中途半端な恵を許せないらしい。
そして恵の兄、稔(じん)は警察庁広域捜査担当のエリート。
恵と違って見てくれは悪いが、仕事も人生も自分の信念にゆるぎないものを持っている。
これも輝一の勘に触るらしい。見てくれが悪いのに、仕事ができるなんて・・?!
ここまで登場人物を紹介してきましたが、とにかく登場人物が個性的でかっこよく、物語の設定にぴったり合致!
肝心の物語は、『呪い水』という都市伝説から怪死事件が発生し、
サイトの投稿者をたどっていく過程で、事件とその裏にある謎をつきとめていく。
チーム「よろいち」と恵の兄・稔との連携で事件解決! 都市伝説を使ったミステリーという設定が結構面白い。
そしてホラーかなっと思って読むと、けっこうしっかりと練られたミステリーです。
チーム「よろいち」にはまりそう!若いミステリー読者にもおすすめの1点です!
10月下旬には第2弾『よろず一夜のミステリー 黄金伝説』(タイトル未定)が発売です。 はまさき、楽しみです~。
『よろず一夜のミステリー 水の記憶』
著者:篠原美季
出版社:新潮社
価格:¥520(税別)
謎解きの逸品パートⅡ『カラット探偵事務所の事件簿2』
ファイル6『小麦色の誘惑』は、古谷の従弟の高校生が、ある日ハート形に日焼けしてる謎を解いてほしいと現れる。いったい誰がなんのために・・・・?ここでは古谷の鋭い観察眼がいかんなく発揮されている。
ファイル7『昇降機の密室』は、密室状態の事務所から盗まれたあるものを見つけ出す、ちょっとヘビー(?)なお話。
ファイル8『車は急に・・・』はある駐車場での追突事件の真相を暴く。う~んありうる話・・・と思ってしまう。
ファイル9『幻の深海生物』は、インターネットで検索していた時に引っかかったページがあって気になる文章が書かれていたが、そのブログページが削除されてしまい・・・・、文章を書いた人物を探してほしいとの依頼。どうやって探し出す・・・・?。
ファイル10『山師の風景画』は、不動産屋の社長が、絶縁した弟がわざわざ兄宛に遺した絵の謎を解いて欲しいとの依頼。弟が兄に遺した謎とは?・・・・。
ファイル11『一子相伝の味』は、急死した父親が残した秘伝のたれのレシピを探すことに・・・。
ファイル12『つきまとう男』は、同じビル内にあるパブ「竜宮城」に勤めるホステスから、ストーカーの正体をつきとめて欲しいとの依頼が・・・。
7編の連作短編。殺人事件は起きないけれど、身近にある謎、大きなことではないけれど、どうしても気になる謎の解明を、古谷のダジャレとともに楽しんでいただきたいと思います!
『カラット探偵事務所の事件簿2』
著者:乾くるみ
出版社:PHP研究所
価格:¥648(税別)
腕貫探偵』最新刊は、描き下ろし長編。ぶっとびます!!
住吉ミツヲは、私立女子高の新任講師。彼の周りで学校関係者が連続死。
殺害現場で気を失っていたミツヲは、混沌とする記憶を抱えたまま事件に巻き込まれていく・・・。
彼は同僚の妻を殺害してしまったらしいのだが・・・・・。
何かのショックで封じられてしまった、記憶の鍵を握るのは魔性の女子事務員?
事件に関わり合いがあるらしい人物の複雑な人間関係と、曖昧な記憶に戸惑うミツヲ。
そんなミツヲを救うため、とてもかわいらしくしっかりした女子高生・愛友(あゆ)、ド派手な女大富豪、そしてわれらの腕貫さん・・・。
この超個性的な3人の探偵が集結!!!
さて事件の真相はいかに!?
今回は長編ということで、腕貫探偵さんがいかに登場するのか?!すごく楽しみでした。
登場の仕方はいつもと変わらず。悩みぬいた住吉ミツヲが、腕貫をした職員のところへフラフラ・・・と。この住吉ミツヲくん、実は腕貫探偵さんをダーリンと呼んでいる、ユリエさんの兄なんです。
ここでユリエの兄と対面した腕貫さんの反応は・・・!?
『腕貫探偵、残業中』で、すごい美人なのに、男前な性格のユリエさんのファンになった人も多いはず。はまさきもそうなんです。
ユリエさん登場でなんだかほっとしてしまい、住吉くんは犯人じゃないかも・・・と思うのですが、でも腕貫探偵シリーズでは、封印された記憶が暴かれたときに真相が・・・みたいなエピソードもあったりして、封印された記憶のエピソードは結構犯人に繋がったりするのでもしかして、やっぱりミツヲが犯人・・・?!。あああ~。どうなってんの?迷走の極みだ~・・・・
う~ん、これ以上触れるとネタバレになりそう~。
腕貫シリーズの面々、ユリエさんほか、櫃洗南署刑事・氷見さんと水谷川さんコンビ、HATV局の榎本裕子アナウンサーも登場しファンにはめっちゃ嬉しい設定。
しかも、女子高生探偵に、ド派手な大富豪美熟女、おまけに住吉家の面々も大活躍!!!
そして事件の真相は笑激のぶっとび展開!!
とにかく文句なく面白いです。
『腕貫探偵』ワールドを思う存分ご堪能あれ!!!
『モラトリアム・シアター produced by腕貫探偵』
著者: 西澤保彦
出版社:実業之日本社
価格:¥600(税別)
本の学校今井ブックセンターにミステリー小説探偵・はまさきの棚が出来ました!!
本の学校今井ブックセンターに『腕貫探偵』コーナーを作りました
最新刊の『モラトリアム・シアター produced by腕貫探偵』は、書き下ろし長編です。
ものすごく面白いです。このあと、本も紹介しま~す。
切なすぎる!警察ミステリー小説、桜木紫乃『凍原』
警察小説を読んで、久しぶりにじわ~っときました。
桜木紫乃『凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂』(小学館文庫)、
この小説、なんとも言えない切なさと悲しみが漂っている、
でも読みながら決して途中で止めることのできない、そういう作品でした。
小説の舞台は釧路、留萌、そして樺太。 広大なる北海道の釧路湿原から事件は始まります。
ある日、小学校4年生の少年・貢が湿原に行ったきり行方不明になった。
湿原の谷地眼に落ちたと思われ、帰ってくることはなかった。
それから十七年が経ち、貢の姉の比呂は、北海道警釧路方面本部に着任する。
その直後、釧路湿原で男性の他殺体が発見される。
比呂は、相棒である先輩刑事の片桐と共に現場へ臨場する。
片桐は、貢が失踪した事件の担当刑事だった。
比呂が刑事となって釧路に戻ったことを複雑な思いで迎えたのだった。
殺された男の名は鈴木洋介。青い目を隠すためにカラーコンタクトを入れていたようだ。
比呂と片桐は、鈴木洋介のルーツを辿るため捜査を開始する。
鈴木は自分の青い目を忌み嫌い、どうしてもこの青い目の理由が知りたくて、調べているうちに何者かに殺された・・・・??
比呂と片桐の推理が進んでいく。
戦争で人生を狂わされた女性の悲劇がさらに悲劇を生む・・・。終戦後の女たちの生き様と、
今の女性たちの生き様が交互に描かれている。
いつの時代も女性が背負わされるものは重い。
その重さから逃げ出したつけをどこで払うのか?そして何で払うのか・・・?
つらい時代を生き抜いた女性をやさしく、包み込むように描いてあり、切なくなりました。
ひとつの事件から暴かれる過去は非情だけれど、物語の底辺には悲しみがあふれいているけれど、
女性たちの再生も描かれています。 異色の警察ミステリーです。
『凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂』
著者: 桜木紫乃
出版社:小学館
価格:¥619(税別)