イッキ読み必至!「傷痕のメッセージ」

知念実希人さんの「傷痕のメッセージ」
を読みました。

冒頭から衝撃的シーンが!そして
その勢いでイッキ読みしてしまいました。
面白過ぎて止まらなかった・・・。

元刑事の父親が闘病の末に亡くなった。
父を看取った外科医でもある、千早は父
との別れを惜しんでいた。
そこへ父の遺言を伝えるため弁護士が
やってきた。
「自分が死んだら、すぐに遺体を解剖して欲しい」
と遺していた。

千早は解剖に抵抗したが、同僚の病理医・沙織に
説得され、沙織とともに父の解剖を行う。
その時、胃壁に刻まれた奇妙な傷痕を発見する。
信じがたい、こんなところに文字を刻むとは!
ヘタをすると命に関わる。

千早と沙織は、父の命がけの行為に、絶対に
誰にも知られてはならない秘密があると判断する。
謎のメッセージ。そして「ムスメニハイウナ」
という文字。
これが意味するものは何なのだ?
自分にも秘密にするとはどういうことなのか?

そして、同じ日に桜井と言う刑事が父について
訪ねてきた。
父の仕事は警備員だと信じていた千早。
実は父親が元刑事と知って仰天する。
さらに、30年近く前に起こった幼女
誘拐殺人事件を捜査し、さらに警備員に
なったあとも密かに事件を調べていたとは・・・・!

父の命がけの行為を、桜井刑事に話しても
良いのか?否か?
沙織は秘密の暴露を反対した。
そして、二人で父の遺したメッセージの
解読を行う・・・。

さらに同じ頃、30年近く前の事件と
似通った殺人事件が発生する。

二人が解読したメッセージの内容に
戦慄が奔る!
いったい何が起こったのか?

二転・三転する展開、複雑に絡みあう謎。
そして千早の秘密。

予想を裏切る真犯人!
あまりの真実に唖然となる。

読み応えのある要素がたくさん詰まって
いて、ページをめくる手が止まらない!
面白すぎました。

千早と紫織の最強コンビ、もっと読んでみたい!!

『傷痕のメッセージ』
著者:知念実希人
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,540(本体1,400+税)

重厚な社会派ミステリーの傑作!「沈黙の終わり」

堂場瞬一さんの「沈黙の終わり上下巻」を
読みました。

二人の新聞記者が、埼玉県と千葉県で
起きていた連続幼女誘拐事件の真相を
追う物語。

事件の取材をする記者の姿は、元新聞記者
だった著者にしか描けない、圧倒的臨場感がある。

東日新聞の柏支局長で定年間近の
松島は、柏支局に赴任して一週間が
経ったころ、七歳の女の子が遺体で
発見されたという一報を耳にする。

一方、東日新聞千葉支局の若手記者・
古山は県警記者クラブで柏の事件を知った。
その事件はすでに週刊誌にも掲載されていた。
週刊誌の記事を読んだ古山は4年前に
埼玉県で起こった女児行方不明の事件
を思い出した。
事件発生の場所を地図で確認すると、
千葉・埼玉両方の県をまたいでも
1キロも離れていない。
古山は、奇妙な不安に近いような
感情が沸き上がってきた。
もしかして、犯人は同じ人物なのか?

そして、古山は4年前の事件について
管轄である吉川署の副署長にその後の
捜査状況を聞いた。ところが副署長の
声が暗くなり、さらに自分の推測を
ぶつけてみると、推理小説みたいだと
一笑された。

一人で考えても埒が明かないと
古山は松島に相談する。
松島も聞いた当初は半信半疑だったが、
三十年前も近い場所で同じような
事件があったことを思い出す。

松島と古山は、様々な伝手を頼り
自分たちの「記者の勘」を信じ
真相に近づいてゆく。

次第に明らかになってゆく、恐ろしい
連続幼女行方不明事件・・・・。
それは30年前から始まっていたのだ。

千葉・埼玉の両県警は、なぜこのような
恐ろしい事件の犯人を逮捕できなかったのか?
警察の中で何が起こっていたのか?
二人の記者は権力の汚穢を暴くため、奔走する。

その取材の過程が緻密に描かれ、真犯人、
さらには、事件を隠蔽し続けた黒幕の
正体が暴かれる。

権力を己の保身に使った者たちへ、正義の鉄槌が下る。
命の危機を感じながらも、真実を求め
奔走する二人の記者の魂の叫びに心が震えた。

インターネットで何でも調べられる時代。
ニュースもネットでいくらでも読める。
斜陽産業と化した、新聞業界。
それでも、新聞の役割とは何かを
著者はこの作品で訴えている。

著者の熱い思いが詰まった
重厚な社会派ミステリー。

『沈黙の終わり 上下』
著者:堂場瞬一
出版社:角川春樹事務所
価格:上下巻各¥1,870(本体各¥1,700+税)
  

まさかの展開に唖然!「麻倉玲一は信頼できない語り手」

太田忠司さんの「麻倉玲一は信頼できない語り手」
を読みました。

斬新なシチュエーション、独特の世界観に
引き込まれ、イッキに読んでしまいました。

死刑制度が廃止されてから28年後の日本。
しかし、一人だけ死刑を宣告されたにも
関わらず、死刑制度廃止の法が制定され、
最後の死刑囚となった、麻倉玲一。

彼は無人島だった離島に設けられた
民間経営の刑務所で、刑を執行される
ことなく日々を過ごしていた。

フリーライターの熊沢は、このころ
あまり仕事がなく、焦りを感じていた。
そんな時、麻倉は自身の本の執筆に
熊沢を指名した。

そして、熊沢は麻倉が収容されている
この離島へやってきた。

熊沢は麻倉にインタビューする。
麻倉は、自身が犯した殺人事件の過程を
反省も後悔の念も抱かず語り続けた。
そして、「彼らには死すべき理由があった。
僕は審判なんだよ。人の命をジャッジする」
とうそぶく。その姿に熊沢は激しい嫌悪感を抱いた。

さらに驚いたことには、離島には麻倉に殺害された
被害者の関係者が存在していた。

そしてついに恐ろしい事件が起きる……。

孤島に軟禁というおなじみの
クローズドサークルに、訳ありの登場人物たち、
さらに「最後の死刑囚」と言う強烈な
キャラクターを配し、謎が謎を呼ぶ
展開にイッキ読み!
そして、「こんなどんでん返しありか!?」
と叫びたくなるほどの驚きが!
まさかこの手でくるなんて・・・!!!

引き込まれました。
太田さんの他の作品も読んでみたく
なりました。

『麻倉玲一は信頼できない語り手』
著者:太田忠司
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥792(本体¥720+税)

東京地検特捜部を真正面から描く!「巨悪」

「巨悪」は、元新聞記者の伊兼源太郎
さんが、検察の深部をリアルに描いた
社会派ミステリーです。

鷲田運輸社長が巨額の脱税を
行っていると、東京地検に内部告発と
思われるタレコミがあった。

そこから4か月、この内部告発から
調査を開始した、東京地検特捜部の
検事・中澤源吾は上司から何の
成果もあげていない、なんとして
でも割れ(自白をとれ)!と叱責
されていた。

検察は過去に起きた特捜部の証拠改竄
事件や杜撰な取り調べが露見し、
その威信は地に堕ちていた。

今回の調査で検察の信頼回復を狙う上層部。

しかし、組織改革を進めるはずの
検察の体質は変わらず、中澤は
納得できないでいた。

ワシダ運輸の脱税について、中澤は
立件することが出来ず、次の調査に投入される。
それは、国交大臣が夏祭りで配布した
手ぬぐいに絡んだものだった。
この案件も立件が難しいとされたが、与党の
陰のドンに迫ると期待された。

一方、事務官の城島は、ワシダ運輸から
押収したブツの中で、大番頭・陣内の
手帳に記された和菓子の購入に疑問を抱く。

中澤は、国交大臣の筆頭秘書に聴取していた。
ところが、秘書が自殺するという事件
が起こってしまう・・・。

中澤と城島は高校時代からの同級生で、
野球部で切磋琢磨したライバルだ。
そして城島は、中澤の妹・友美の恋人でも
あった。
しかし、友美は二人が大学時代に
殺されてしまった。
大きな悲しみの中で、友美の死の真相を
暴く!中澤と城島はお互いにその思いを
胸に秘め、「正義」の象徴である
検察に身を置く決意を固めたのだった。

そういう絆で結ばれた中澤と城島は、
国交大臣とワシダ運輸の調査を
進めるうちに不可解な金の動きを
掴む。そしてそれは東日本大震災の
復興補助金に繋がってゆく・・・・。

東京地検特捜部を題材にした「巨悪」。
圧倒的臨場感に度肝を抜かれる。
あまりのリアルさにここまで描いて良いのか?
思ってしまう。

政治汚職の闇を暴かなくては!という使命感。
そして、信頼回復を志す検察に送る
エールのようなものが感じられた。

巨悪に立ち向かう、若き検事と事務官、
その上司、同僚たちの「正義」を全う
するという熱い熱い思いに心が震えた。

『巨悪』
著者:伊兼源太郎
出版社:講談社(文庫)
価格:¥1,100(本体¥1,000+税)

衝撃度MAX!『ブラッド・ブレイン②闇探偵の暗躍』

小島正樹さんの「ブラッド・ブレイン②闇探偵の暗躍」
を読みました。

「確定死刑囚」を収監した陸の孤島、
「脳科学医療刑務所」で死刑囚が毒殺された。
「闇探偵」月澤と捜査一課の百成が
事件の真相に迫る!

7年前に月澤が起こした「警察連続殺害事件」
を調べると百成は決心した。

百成は、脳科学医療刑務所の特別矯正監・
早坂に呼ばれた。
この医療刑務所で収監者が毒殺されたのだ。

早坂の命で、百成と月澤は毒殺事件の
調査をすることに。
しかし、その早坂も何者かに殺害
されてしまう。

早坂が死亡したことによって、
非常事態プログラムが発動される。
刑務官、警察官は会議場に集められ
閉じ込められる。
そして、収監者は自由に動ける状態になる。
犯人はそれを狙っているのか?

7年前の警察官連続殺人事件の模倣なのか?

謎が謎を呼ぶ、医療刑務所での連続殺人。
月澤のアドバイスで推理を展開する百成。
犯人の真の狙いはどこに?
そして、真犯人は誰なのか?
やがて百成は信じがたい真実にたどり着く!
その真実が百成の心を砕く。

月澤凌士という強烈なキャラクターと
生真面目な百成のコンビが最強の敵に挑む
シリーズ第2弾。

「医療刑務所」という完全なクローズド
サークルで繰り広げられる警察官連続殺人。
収監者の中で誰が犯人でもおかしくない
怪しい状況。崩せないアリバイ。
密室での不可能としか思えない殺害事件。
そして、想像を絶するトリック!

やりすぎミステリの異名を誇る小島ワールド!
今回も堪能しました。

『ブラッド・ブレイン② 闇探偵の暗躍』
著者:小島正樹
出版社:講談社(タイガ文庫)
価格:¥858(本体¥780+税)

マリア&漣シリーズ第3弾、ただ事ではない面白さ。「グラスバードは還らない」

型破りな女性刑事マリアと
スマートな日系人刑事の漣が
難解な事件を解決する、本格ミステリー。
鮎川哲也賞受賞作、「ジェリーフィッシュは凍らない」
第2弾の「ブルーローズは眠らない」に続く
第3弾「グラスバードは還らない」を読みました。

不動産王のヒュー・サンドフォードが
大規模な希少動物の違法取引に関与して
いるという情報を掴んだマリアと漣は、
ヒューが所有するガラス張りの超高層ビル
「サンドフォードタワー」に向かった。

捜査令状もなし、事前のアポイントも
ない状態で乗り込んだマリアと漣。
当然、門前払いを食らってしまう。

しかし、ヒューの調査を諦められない
マリアは単身、突破を試みる。
漣は上司の無軌道な行動に呆れつつ
タワーに入っているテナントで調査を
開始した。

その直後、タワーが爆破された!
マリアはタワーの中に取り残された!

同じ頃、ヒューの懇親パーティーに
呼ばれていたガラス製造会社の関係者
4名は、知らぬ間に拘束され窓のない
迷宮に軟禁されたことに気づく。
なぜ拘束されたのか理由がわからないまま
戸惑う4人。
「答えはお前たち知っているはずだ」
というヒューからの不気味な伝言に怯える中、
灰色だった壁が突如透明に変わり、
血だまりに横たわる男の姿が浮かび上がる!

ガラス張りの迷宮と言う特異な
シチュエーションで起こる不可能殺人!
犯人と凶器はいったいどこへ消えたのか?
想像を絶するトリックに唖然!

さらに手に汗握る、超スリリングな
タイムリミットサスペンスを絡めた
この作品、シリーズ2作品の面白さを軽く超える。

真相が明らかになるクライマックスでは
前代未聞の逆転劇に思わず絶句!

王道のミステリー展開に、マリアと漣、
二人の魅力がプラスされ面白いことこの上ない!
シリーズを追うごとに面白さが増してゆく!

次回作も期待大!

『グラスバードは還らない』
著者:市川憂人
出版社:東京創元社
価格:¥858(本体¥780+税)

「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズとコラボ!「ラストライン④ 骨を追え」

堂場瞬一さんの3大人気警察小説シリーズ
コラボ企画第2弾は、
「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズと
コラボした「ラストライン④ 骨を追え」だ。

ラストラインの岩倉剛と犯罪被害者
支援課の村野。
二人の刑事が火花を散らす!?

岩倉剛は、南大田署から立川中央署に
異動となった。
岩倉が異動するとなぜか事件が起こる。
岩倉は、「事件を呼ぶベテラン刑事」だ。

相棒と二人、立川中央署管内を
パトロール中、民家から白骨死体が
発見されたと通報があった。

岩倉はその現場を聞いて、10年前に
起こった女子高生失踪事件を思い出した。
調査の結果、白骨遺体は失踪した
女子高生の真中礼央と判明。

岩倉の上司は、事情を鑑み犯罪被害者
支援課の助けを借りることに。

犯罪被害者支援課の村野は、礼央の
両親に10年前の失踪事件を解決できなかった
ことを詫びた。

捜査陣の目は、礼央の交際相手だった
当時の容疑者に向けられたが、彼は
若くして癌に冒され、寝たきりに
なっていた。
そんな彼に対し、岩倉が強引に聴取
をしてしまい、父親の怒りを買う。

村野は被害者支援、さらには加害者
支援についても考えさせられる。

難事件を抱えることになった岩倉と村野。
立場は違えど、真犯人をあげることが
彼らの使命だ。

二人は反発しながらも協力し事件の
真相に迫る!

怪しい人物が次々と登場。
それらの中に真犯人はいるのか?
今作品は犯人当ても楽しめた。

コラボ企画第3弾は、「警視庁犯罪被害者支援課」
×「警視庁追跡捜査係」
8月発売!

『ラストライン④ 骨を追え』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥869(本体¥790+税)