痛快任侠シリーズ最新作!今度は銭湯だ『任侠浴場』

今野敏さんの痛快任侠シリーズの最新作が発売されました!
「任侠書房」「任侠学園」「任侠病院」に続く第4弾です!
任侠道に篤い、阿岐本組の親分が今度は銭湯の立て直しに
乗り出す!!!

今時、とても任侠道に篤いヤクザの親分・阿岐本。
困った人をほっとけない上に、文化事業好きな性格で
兄弟の盃を交わした永神が持ってくるその手の話に
ついつい首を突っ込んでしまう・・・。

ある日、また永神がやってくると、代貸・日村は嫌な予感がした。
今度は赤坂の路地裏にある古びた銭湯について相談された。
今時銭湯なんて・・・。
銭湯の経営者も最初は辞めるつもりだったが、
もう一度頑張って銭湯を続けたいと言っている・・・。
経営者の心意気を買った阿岐本は、銭湯の再建に乗り出す。

これまで出版社、高校、病院などの再建に関わってきた阿岐本。
そのたびに振り回される組員たち・・・・。
組員は迷惑がっていないかと、いつも心配になる代貸・日村。
しかし親分の決意には逆らえない。
組員一丸となって、銭湯立て直しに向かうのだった。

任侠シリーズは全て読んでいるが、読み終わるといつも
爽快な気分になる。
最新作の「任侠浴場」は日本の文化の一つである街の
銭湯の生き残りをテーマにしている。
最近はインバウンドで来日する外国人によって、
日本の文化の良さを再認識させられるが、
「任侠浴場」を読んでいると、古き良き日本文化は、
やはり日本人が守っていかなくてはならないなあとひしひと感じる。
そしてそれを守ってゆくのは家族。家族の在り方も問うこの作品は、
本当に大切なものは何かということを、義理人情に篤いヤクザの親分
阿岐本が教えてくれる!!
彼の言葉が心に沁みて、胸があつくなる。
お待たせのお馴染み「任侠」シリーズ第4弾!

『任侠浴場』
著者:今野敏
出版社:中央公論新社
価格:¥1,500(税別)

究極の心理サスペンス『彼女の恐喝』

藤田宜永さん初のサスペンス小説
「彼女の恐喝」(実業之日本社)
を読みました。

出版社の編集者を夢見る平凡な女子大生・圭子。
六本木のクラブで働きながら大学生活を送っていた。

ある台風の夜、マンションから一人の男が飛び出してきた。
その男を圭子は知っていた。クラブの客で、人材派遣
会社の社長・国枝だ。
翌日のニュースがそのマンションの一室で殺人事件が
起こったと報道していた。
圭子の頭に、昨夜飛び出してきた国枝の顔が浮かんだ。
まさか!?国枝が犯人なのか?

就職が思うように決まらず、心が荒む圭子。
そのストレスはやがて、国枝へと向かう。
そして殺人事件をネタに、圭子は国枝に
脅迫状を送ってしまうのだった。

のっぴきならない状況で、人間の心はどう動くのか?
あまりにも切実な心を抱えると、人は犯罪にまで
手を染めてしまうのか・・・?
脅迫状を送ってしまったという罪におののきながら、
圭子は国枝と密会を続ける・・・。

読者が推理する事件の行方よりも、
この作品では、圭子や国枝といった登場人物の
心理描写が物語の根幹となっている。

彼女らの感情の変化がもたらす物語の行方は、
想像を絶するクライマックスへと繋がってゆくのだ。

心が揺さぶられる、究極の心理サスペンス!

『彼女の恐喝』
著者:藤田宜永
出版社:実業之日本社
価格:¥1,600(税別)

何だコレ!?仰天展開に絶句!「駄作」

前から気になっていた海外ミステリー小説
ジェシー・ケラーマン「駄作」(早川書房)
を読みました。
タイトルが超奇抜!?
裏表紙の意味深な内容紹介・・・。
いったいどんな物語なんだ!?

プフェファコーンは、大学で小説の書き方を教えている。
作家になりたかった彼は、文学小説を描き出版。
批評家受けは良かったが、全く売れなかった。
学生時代に親友だった、ビルとカーロッタ。
2人は結婚しビルはなんとベストセラー作家になった。
プフェファコーンはビルより小説を描くのが
上手いと自負していたが、有名になったのはビルの方だった。
2人への複雑な気持ちを抱いてからは、
プフェファコーンのほうから距離を置いた。

そんなビルが行方不明になった。3週間捜索を続けたが
見つからず死亡扱いになった。
その追悼式に招かれたプフェファコーン。
ビルの妻、カーロッタに再会した。
そしてビルの仕事場を訪ねた彼は、未発表の原稿を見つける。
ビルに対する強烈な嫉妬心と誘惑にかられ、
その原稿を持ち出し自作と偽って刊行した。
予想通り大ヒット。一躍ベストセラー作家に躍り出た・・・。

この後の話を読者はどう予想するだろう・・・。
そう誰もが「盗作」した彼はどうなるのかと思うはずだ・・。

しかし、この作品は読者の予想をはるかに、はるかに、はるかに
上回る奇天烈な展開になってゆく。
思わず「なんだコレ!?」って叫びたくなるほど!
そう思いつつ、どんどん作品のペースに
はまってゆき、ページを捲る手が止まらない!

裏表紙の内容紹介の最後にある「警告文」に騙され
読んだ結果、警告文以上の奇想天外な展開に絶句する
稀に見る「奇作」だ。

『駄作』
著者:ジェシー・ケラーマン/林香織訳
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫)
価格:¥1,100(税別)

怒涛のラストに絶句!「特捜部Q吊るされた少女」

デンマークの大人気警察小説「特捜部Q」シリーズ。
面白いので、全シリーズいっきに読むのがもったいない。
でも、とうとう「特捜部Q吊るされた少女」に辿りついて
しまった。これを読み終わったら当分このシリーズの
新刊が読めないな~と思っていたら、最新刊が
発売されていた。「特捜部Q自撮りする女たち」。
これはもう少しあとのお楽しみにとっておこう。

コペンハーゲン警察の「特捜部Q」は
未解決事件を専門に扱う部署。これまでに
かなりの数を解決してきた。

今回の未解決事件は、17年前に起こった少女ひき逃げ事件。
車に跳ね飛ばされた少女が木に逆さ吊りになったまま
絶命した悲惨な事件だ。

その少女を発見したのは地元の警察官・ハーバーザート。
ハーバーザートは、この事件にとりつかれ家族は崩壊。
そして、17年後自分の退官式に拳銃自殺を図った。

衝撃的展開の中で、事件の継続捜査を託された
特捜部Qのカール・マーク警部補。
ハーバーザートは退官式の前にこの事件を
継続捜査してくれと、カールに電話したが、
カールに冷たく電話を切られていた。

部下のローセからは、ハーバーザートが自殺したのは
カールが断ったせいだと無言の圧力をかけられていた。
そしてしぶしぶ、この事件と向き合うことに。

カールが本気を出せば、17年間明らかにされなかった
事件の真相が見えてくるかも知れない。
カールは、アサドとローセとともに、ハーバーザート
が遺した膨大な捜査資料を元に捜査を開始した。

17年前の事件の関係者に話を聞いて回ると、
少女の周りに何人もの男の影がちらついてきた。
そしてその中の一人にカールは注目する。
だが、その男は新興宗教に関係している男のようだった。

カールたちの捜査で、ひき逃げされた少女は
可愛そうな女子高生というイメージから、男を虜に
する小悪魔にすり替わってゆく。
そして、カール達が眼をつけた男は、女性たちの
心を惑わすカリスマ的要素を秘めたプレイボーイだった。
カールたちが突き止めた真相は、男に関わった
すべてのものの人生を狂わせていた・・・。

狂信的に愛するものを守ろうとする人間の
恐ろしいまでの執着心が、数々の悲劇を生んだ。
ラストの怒涛の展開は、息を呑むほどすさまじい!

最後の最後まで完全に騙されてしまった。
大!大!大逆転の警察ミステリー。

『特捜部Q 吊るされた少女』
著者:ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田奈保子(訳)
出版社:早川書房
価格:¥2,100(ポケットミステリー)
   上下各¥860(文庫版)
   (全て税別)

今まで感じたことのない恐怖!「火のないところに煙は」

芦沢央さんの「罪の余白」「悪いものがきませんように」
などを読んで、追いつめられてゆく人間の心理描写が
とても上手い作家さんだと思った。

そして、2016年に新潮社から発売された「許されようとは
思いません」で完全にはまってしまった・・・。
様々な状況に置かれた人間たちの心の動きが
緻密なタッチで描かれ、読んでいると自分自身が
体験しているような錯覚に陥る。
思わず、のめり込んで読んでしまった。

凄い作家さんの登場だと思っていたところに、
今度はホラー小説。しかも最強の恐さで迫ってくる!
「火のないところに煙は」・・・。
怖すぎる!でも面白くて止まらない戦慄のホラーミステリー。

物語は、ミステリー作家の「私」が雑誌編集部から
「神楽坂」を舞台にした怖い話を描いてほしいと依頼
されたことから始まる。
「私」は、以前友人から聞いた奇妙な話を思い出した。
その事件絡みのあるモノがクローゼットに入れたままに
なっている。凄惨な記憶が甦る・・。
これは過去と向き合うことなのか?
その話はちょうど神楽坂で起こった出来事だったので小説に描いた。

小説を発表したあと、怖い話が「私」のもとへ集まってきた。
集まった怖い話は小説として雑誌に発表することに・・・。

この本に描かれた、6編の怪談。
いずれの怪談もひとつの小説として成り立っている。
しかし・・・!?

怪談そのものの恐ろしさと、その怪談はいったい
何が原因で起こったのかという「謎」に迫る過程が
物凄く恐い!二重の恐怖で肌が粟立つ!

想像を絶する展開と尋常でないどんでん返しの
連続に、ここに登場する怪談はフィクションなのか?
それともノンフィクションなのか?頭が混乱し、
完全に騙される!

そして今まで感じたことのない恐怖に襲われてしまった・・・。

『火のないところに煙は』
著者:芦沢央
出版社:新潮社
価格:単行本 ¥1,760(¥1,600+税)
   文庫  ¥649(¥590+税)

粋でいなせな江戸の火消たちの物語「火喰い鳥」

グループ店の店長に熱烈おススメされて読みました。
今村翔吾さんの『羽州ぼろ鳶組 火喰鳥』(祥伝社文庫)。

剣豪が活躍する時代小説ブームの中、
「火消し」が主人公のかっこいい時代小説の登場です!

江戸髄一と呼ばれた武家火消・松永源吾。別名「火喰鳥」は
5年前の火事が原因で、火消を辞め妻と二人で浪人暮らし
をしていた。
そんなある日、彼の元に出羽新庄藩から
壊滅した藩の火消組織を再建してほしい頼まれる。
源吾はもう火消の仕事をするつもりはないと断る
つもりだったが、妻の深雪に説得され士官した。
新庄藩の火消たちは、まだまだ青二才ばかり。
源吾はまず人集めから始める。

足が悪くなり引退した元力士、失恋したイケメンの軽業師、
クオーターの天才的天文方など、一癖も二癖もある
男たちをスカウトしまとめてゆく源吾。
新庄藩火消たちは、源吾を中心にまとまってゆく。

大火災のなか、命をかけて江戸庶民の安全を守る火消たち。
江戸っ子の男たちの熱い思いが、炎とともに
江戸を駆け巡る!!!
疾走感あふれるストーリー展開と
粋でいなせな男たちの胸のすくセリフ。
『羽州ぼろ鳶組』シリーズ第1弾「火喰鳥」!
その面白さに我を忘れる!

『羽州ぼろ鳶組 火喰鳥』
著者:今村翔吾
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥740(税別)

激戦の行方は!?「紅霞後宮物語第八幕」

毎回ワクワクの展開が楽しめる「紅霞後宮物語」。
7巻では小玉が激戦の地へ赴いた。

小玉率いる軍は善戦。しかし小玉は負傷し明慧の夫・樹華は
小玉をかばい命を落としてしまう!

小玉は、体に毒がまわり、生死の境をさまよっていた。
戦は小玉の代わりに賢恭が軍を率いていた。

小玉負傷と樹華戦死の知らせは宸に届いた。
その衝撃は計り知れないものがあった。

小玉のために画策した企みで望まぬ結果を招いた
梅花は自らの命を持って償おうとするが、
その裏で何かが蠢いている気配を感じた
文林は、梅花に真相を探るように命じた。

司馬氏失脚までは首尾よく運んだ。
だが、その後何故歯車は狂ってしまったのか?
梅花は思いもよらない闇に真相を見つけてしまう・・・。

第八幕は悲劇の展開から始まる。
親友だった明慧の夫まで自分をかばって死んでしまった
ことを悔やむ小玉。遺された子どもはどうなるのか・・!

そして、命の危機から脱出した小玉、彼女を想い続ける文林。
二人の関係性は相変わらずだが、それが二人なのだ・・
と読み続ける内に何となくわかってきた。

この先、この物語がどうなるのか?

さらにワクワクは続きます。

『紅霞後宮物語 第八幕』
著者:雪村花菜
出版社:富士見L文庫
価格:¥600(税別)

心に沁みる医療ミステリー「祈りのカルテ」

知念実希人さんの「祈りのカルテ」
(KADOKAWA)を読みました。

研修医・諏訪野が患者の心に寄り添い、
心の傷を癒す・・・。
感動ものです。

研修医・諏訪野は、精神科で研修中に
睡眠薬を大量服薬し、救急搬送された女性に
面会させられる。
救急外来では、いつものことだから・・と
言われ「???」と思っていた諏訪野。
なぜ、その女性は毎回決まった時期に自殺を
図ろうとするのか?

胃がんの疑いのある老齢の男性。
病変部を内視鏡手術で焼き切る簡単な手術を受けることに。
その方が開腹手術よりも術後の傷の回復が早い。
男性とその娘はほっとした様子で納得した。
しかし、ある日男性は、突然開腹手術をして
欲しいと言ってきた。
男性に一体何が起こったのか?

足の太ももを火傷した女性が運び込まれた。
諏訪野は毎日丁寧に傷の手当てをしていた。
ところがある日、火傷が広がっているように感じた。
入院しているのになぜ火傷が広がるのか?
見間違いなのか・・・?
諏訪野の疑問は大きくなってゆく!

ぜんそくの持病のある少女が、突然発作を
起こし救急搬送されてきた。
病院の適切な処置で発作は収まったが、
しばらく入院することになった。
ぜんそくの検査をすると数値に異常が見つかった。
薬は両親からきちんと投薬されているらしい。
しかし・・・。諏訪野は虐待の一種
「代理ミュンヒハウゼン症候群」を疑うが・・・。

心臓に重度の疾患がある人気女優が入院している。
病院はその女優が入院していることを極秘にしていた。
しかしある日それが外に漏れ、週刊誌に載ってしまった。
女優の事務所社長は記者会見で、心臓移植のための
募金を募ると言い出した!
女優の本心は!?

病院内の様々な医局で研修を重ねる新米医師・諏訪野。
そこを訪れる患者たちの内面に触れ、彼らが抱える悩みや、
心の闇に迫る。諏訪野の優しさと医師としての卓越した能力が、
閉ざされた患者の心を癒してゆく。
一つ一つのエピソードとそこに繋がる
意外な真相に「ハッ!!」とさせられる。

人の温かさがしみじみと心に沁みる、医療ミステリーの極致。

『祈りのカルテ』
著者:知念実希人
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,300(税別)