竜崎伸也の魅力がたっぷり「自覚 隠蔽捜査5.5」

待ちに待った「隠蔽捜査」シリーズの最新刊が発売されました。
タイトルは「自覚」。
今回は、「隠蔽捜査」シリーズに登場している
キャラクターたちが主人公。

行き詰まったとき、つい竜崎に相談したくなる面々。
彼らが竜崎の魅力を引き出してくれるスピンオフ集です。

自覚

それぞれの短編はすべて面白いですが、その中で
特にはまさきが好きになった短編5編を紹介!

「漏洩」では、大森署の貝沼副署長の苦悩!
連続婦女暴行未遂事件の犯人が逮捕されたとの
スクープ記事!情報漏洩を疑った貝沼。
竜崎署長に内密に行動を起こすが・・・・・
事態は最悪の方向へ進みそうになり・・・
(竜崎さんは「隠蔽」が嫌いなのに・・・・。)

「訓練」では、「隠蔽捜査3 疑心」に登場した女刑事・畠山美奈子が
久々に登場!
スカイマーシャルの訓練に参加することになった美奈子。
周りは特殊部隊の男性ばかり。
女であること、階級では参加する男性よりも上であること、さらに
納得のいかない待遇、自分の能力を活かしきれない訓練に
1日目から落ち込む。そんな美奈子の頭に浮かんだのは
竜崎の貌・・・。思い切って相談すると、竜崎は思いがけないことを言った。
「女を使え!」・・・美奈子は耳を疑う・・・。

「人事」では、竜崎署長の行き過ぎた合理的行動に、日々頭を抱える
野間崎管理官。新しい方面本部長・弓削に竜崎の話をしたところ、
弓削は興味を持ち、すぐに会いたいと言い出す。
野間崎はすぐに竜崎に連絡をとるのだが・・・・・。
新任の弓削方面本部長もとても魅力的!
「人事をつくす」という意味、この回で改めて良くわかる。

「自覚」では、たたきあげのベテラン、田端捜一課長登場。
戸高刑事が人質をとった強盗殺人犯に向け発砲!人質は無事に
保護され、犯人も命に別状はない。
しかし、発砲したことが問題になりそうだ・・。
竜崎はどう決断したのか?

「検挙」では、戸高刑事がまたまたやらしちゃいます。
警察庁から下達された、検挙数と検挙率アップ。大森署の
各セクションの責任者たちは、無謀な命令に頭を悩ませるが
上からの指示ならば仕方ないと捜査員たちに激をとばした。
ところが、とんでもないことが・・・微罪の摘発が相次ぎ
大森署は怒号が飛び交っている。さらに被害の訴えを
退けたり・・・いったい何が起こった?
無謀な検挙数と検挙率アップを達成するために戸高が
仕組んだことだ。竜崎は事態収拾のため、関係者を呼ぶ。
戸高の意図するところを竜崎は汲めるのか・・!

色々な事件が起こる中、竜崎の判断にはブレがない。
読んでいると、竜崎の言葉にいちいち納得。
めちゃめちゃ気持ちよくなってくる。
隠蔽捜査シリーズもずっと読んでいるけれど、
この「自覚」は特に周辺のキャラクターたちが
竜崎の魅力を引き出している。
だから、よけいに竜崎のブレのなさ、クリアな目線
がひきたっているように感じる。

畠山美奈子の物語、女性はどう感じるだろう?
私はすごく納得できたけど。

『自覚 隠蔽捜査5.5』
著者:今野敏
出版社:新潮社
価格:¥1,500(税別)

箱根駅伝学連選抜チームを描く「チーム」

今日書くのはミステリーではありません。
でも読んでる途中から鳥肌がたつほど感動し、
どうしても書かずにはいられなくなり紹介します。

仕事の関係で読んだ、スポーツ小説、
箱根駅伝、学連選抜チームの激走を描いた、
「チーム」です。
著者は、いまや日本を代表する警察小説作家
堂場瞬一氏です。
堂場さん、実はスポーツ小説を描いて作家デビュー。

はまさき、実は駅伝が大好きで、お正月の箱根駅伝を
視るのが何よりの楽しみ。この本を読めば
2015年お正月の駅伝が10倍くらい面白く視ることが出来ます!

チーム

史上まれにみる好タイムばかりの選手が集まった、
箱根駅伝学連選抜チーム。
吉池監督は、自分が監督する大学では毎年
箱根に行くことが出来ずあきらめていたが、
なんと「学連選抜」チームの監督して箱根に行くこととなった。

学連選抜チームのキャプテンに指名された城南大の浦は、
前年の箱根でアンカーとして走ったが、途中故障で大失速。
シード権を落とし、予選会で箱根を狙ったが10位以内に
入れず城南大は箱根で走ることが出来なくなった。
しかし、浦は好タイムだったため、学連選抜チームに呼ばれた。

東京体育大の山代は、3年連続区間新を出した天才ランナー。
だが東京体育大は、山代一人の頑張りではどうにもならず
箱根を逃してしまった。そして山代は学連選抜に呼ばれる。
だが、山代は徹底的に個人。チームのために走るなど
考えたこともない孤高のランナーだ。

箱根未経験の東都大1年の朝倉、港学院大の門脇ら、
十数名が学連選抜チームに選ばれた。

キャプテンとして、チームをまとめようとする、浦。
チームは関係ない!己の走りに徹すると豪語する山代。
二人の思いは決して交わることがないと思われたが・・・。

そして、チームとしての目標・・。吉池監督は「優勝」と言い切った。
学連選抜チームが優勝なんてありえない。
究極のチーム競技と言われる駅伝で、寄せ集めのチームが
優勝するなど・・・だが、吉池はやってみせると誓った。

学連選抜チームが駅伝で走る意味とは?
襷は誰のために繋ぐのか?
駅伝を視始めてから常に思っていた。
だが、この小説を読むと、監督や選手の様々な思いがあることを知る。
箱根駅伝にすべてをかける人たちの思いだ。
チームのためか?己のためか?
この究極の思いを、この作品で見事に描かれているのだ。

また、孤高のランナー、山代がどう変わるか?
浦は前年の箱根リベンジを果たすのか?など
目標達成はなったのかなど・・・読みどころは満載!

さらに、箱根激走のシーンは選手たちそれぞれの
心のつぶやきが綴られ、箱根を疾走する選手たちの
息づかいまで聞こえてくるよう・・・。
まるで自分自身が選手になったような錯覚に陥いる。

箱根駅伝をここまでドラマチックに、さらに臨場感たっぷりに
描いた作品はほかにない。
鳥肌物のスポーツ小説。

『チーム』
著者:堂場瞬一
出版社:実業之日本社
価格:¥686

瞠目の本格ミステリー「殺意の構図」

「鬼畜の家」で第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を
受賞し、その後次々と本格ミステリーを描き続ける、元弁護士の著者。
本当にひねりの利いたミステリーで、最後の一頁まで
ミステリーファンを楽しませてくれる、凄すぎる作家さん。
そんな著者の最新作は、私立探偵・榊原聡シリーズ「殺意の構図」。

冤罪事件に端を発した連続不審死。
複雑に絡み合う家族関係、見えない利害対立
そして狡猾な犯行計画・・・。

殺意の構図

街の弁護士・衣田征夫は、友人の姪の依頼で不慣れな
殺人事件を担当することになった。
容疑者は、友人の姪・朱美の夫、峰岸諒一。彼は妻の父で、
養父でもある巌雄宅に放火、殺害した疑いで逮捕された。
現場には諒一のライターが落ちていた上に、巌雄を罵倒
する諒一を見たとの目撃者もいる。さらに、顔と手にはやけどのあとが・・・・。
だが、諒一は否認を続け、弁護士の衣田にも詳細を話さない。
そんなさなか、諒一の妻・朱美が別荘の地下で水死した。
すると諒一は、「妻が死んだ以上、もはや秘密を守る必要はなくなりました
全てをお話します。」と事件当日のアリバイを話し始めた・・・・。

事件の関係者が次々と亡くなる。
事件なのか、事故なのか・・・?
事件の発端から、事件に関係する二つの家族の情景が丁寧に
描かれ、読んでいるとだれもが犯人ではないかと疑ってしまう。
途中で事件の真実が見えそうになるが、巧みにそらされ、
益々謎は深まり、最後の一頁まで気が抜けない。

こんなに上手い本格ミステリーは初めてだ。

一体犯人は誰なのか?真実はどこにあるのか?
殺意の在り処は?
複雑に絡み合った謎を、探偵・榊原聡が巧緻に解き明かす。

精緻に組みあげられた、本格ミステリーの傑作!

『殺人の構図 探偵の依頼人』
著者:深木章子
出版社:光文社
価格:¥1,700(税別)

もし人の運命が見えたら・・・「フォルトゥナの瞳」

百田さんの新刊「フォルトゥナの瞳」を読みました。
本屋大賞受賞後1年半ぶり待望の新作です。
ミステリーとはいえないかもしれません・・・・。

今回も作風がガラリと変わりました。
ほんとに引き出しのたくさんある作家さん。
凄いです。

フォルトゥナ

幼いころ、両親と妹を亡くした木山慎一郎には
友人も恋人もいない。ただ、真面目だけが取り柄・・・。
一日中、へとへとになるまで働き、夜眠るだけの日々。
夢も自信も持てない孤独な人生だった。

そんなある日、電車でふと乗客の手を見た。
その手が透けて見えたのだ・・・・。
見間違いかと思い、もう一度見た。
しかし、透けて見える・・・。
慎一郎は自分に何事が起ったのか、恐怖を感じた。
やがて、自分には人の「死」や「運命」が見える能力が宿ったことを
知った慎一郎は、何とかその人の運命を変えることは
出来ないかと思い始める・・・。

何とも深く、悲しい物語だ・・・・。
どうしようもない選択をたった一人で抱え
がんじがらめになり、苦悩する青年の姿・・・。
切な過ぎて言葉もない。

人の死を変えることで、その報いはすべて
自分に返ってくるというのに、それでも
悩む青年のピュアすぎる心の葛藤を読み
泣けてしまった。

もし、自分自身にこんな能力が宿ったとしたら
どうするだろう・・・。
大切な人の死が見えたなら、どうするだろう

う~ん
深すぎて悩む・・・。

『フォルトゥナの瞳』
著者:百田尚樹
出版社:新潮社
価格:¥1,600(税別)

圧倒的な臨場感!「土漠の花」

「機龍警察」シリーズ著者、月村了衛氏の新刊
「土漠の花」を読みました。
胸にズンッ!と響いた作品。

土漠

ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索活動にあたっていた
陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。
その野営地に民族間抗争で命を狙われている
3人の女性が助けを求め駆け込んできた!
その時、四方から銃声が轟き女性二人と空挺団の隊員が射殺された?!
そこから壮絶な撤退戦が始まる!
武器も土地鑑もない、通信手段も皆無!
さらに自然の猛威が牙をむく。
最悪の状況の中、男たちは命をかけて女性を守る!
彼らは自衛隊活動拠点に生きて帰ることは出来るのか!?

次々と襲撃してくる敵!なぜここまで激しい
攻撃が続くのか!?
武器もなく救援要請する通信手段もない絶対的不利な状況で、
仲間たちが次々倒れてゆく。だが悲しみに浸る間もなく、
残された者たちは命をかけて、女性を守り撤退を続ける・・・・。
仲間たちが遺していった覚悟と勇気を胸に!!
彼らの使命感と、仲間たちの絆に胸が熱くなる!

ほぼ全編戦闘シーンだ!
絶対に死なない!生きる!無残に殺された
仲間の死を無駄にはしない!生きるために
闘う!その想いが全編にあふれ、戦闘シーンは
圧倒的な臨場感で迫ってくる。
感動と興奮が押し寄せる、凄い作品!

自衛隊員が女性を守るためとはいえ、
海外派遣中に銃撃戦に巻き込まれ、戦闘状態に陥った!?
衝撃の展開で、こういう事態になったら本当に
どう対処するのか真剣に悩む!
集団的自衛権の行使という、今後の日本の行く末を左右する
重要な課題に一石を投じている。
この本を読んだら絶対に考えてしまう!

『土漠の花』
著者:月村了衛
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)

バチカン奇跡調査官シリーズ第8弾「月を呑む氷狼」

大人気シリーズ「バチカン奇跡調査官」の最新刊
「月を呑む氷狼」が発売になりました。
待ちに待った最新作!ワクワクドキドキ!
次はどんな事件を追うのか!?

今度の舞台は、ノルウエイ。
興味深い!「北欧神話」にまつわる奇跡の謎に挑む!

バチカン8

FBIのビル捜査官は、2週間の休暇のあと、新設部署
「テロ再発防止及び予防課」へ転属させれた。
パートナーは周弥貝(ジョウ・ミーベイ)だ。
事務能力は完璧!という男と二人・・
この部署への異動は左遷・・・・。
しばらくして、ビルはノルウエイに出張するよう命じられた。
ノルウエイでの任務遂行中、ビルと周は異様な事件に遭遇する。
春祭でにぎわう田舎町で、獣の唸り声が聞こえたかと思うと、
忽然として月が赤く呑まれ、暗闇の広場に轟音が響き渡った。
人びとが「ラグナログ」という言葉をささやく中、すぐ側の
屋敷で凍死体が発見される。
温かな外気温にも関わらず、わずか数十分で氷漬けにされた書斎
は北欧神話に出てくる、氷狼の仕業なのか!?

ひょんなことから事件に関わりを持つにいたったビルは、
事件の不可解さに、バチカンのロベルトと平賀の奇跡調査官
コンビに助けを求める。
二人は調査を進めるが、事件の裏にはあの男の影が・・・・。

バチカンから消息をたった、ローレンの捜査に
送り込まれたシン博士。彼の哀しく切ない過去が
明らかに!消えたローレンに対する憎しみ!
いったいシン博士とローレンとの間には何があったのか!?
そして、シン博士からの依頼に苦悩する、ロベルト・・・。

数字と神話がからんだ複雑怪奇な事件の真相とは?
消えたローレンの行方は?
さらに、再び現れた悪魔のような男・・・・。

ますます、謎と危険が迫るシリーズ第8弾は面白過ぎッ!

『バチカン奇跡調査官 月を呑む氷狼』
著者:藤木凛
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥680(税別)

横浜が舞台の警察小説!「横浜みなとみらい署」シリーズ

今野敏先生の「横浜みなとみらい署暴対係」シリーズは、
横浜みなとみらい署暴対係の活躍を描いた、警察小説。
安積班シリーズのように、チームで事件解決に挑むのですが、
暴力団の事件を捜査するので、その手の話が苦手という人もいるかもしれません。

今野先生は、結構暴力団を扱う小説を描かれています。

暴力団と闘う、潜入捜査官・佐伯が主人公の「潜入捜査」シリーズは
暴力団=超「悪」という構図で、武闘派の佐伯が徹底的に
たたきのめすというストーリーで全7巻ありました。
これは勧善懲悪のストーリーなので、読後は結構すっきり
しました。

あと、警察小説ではないのですが、昔気質のヤクザ「阿岐本組」
が学校や出版社、病院などをたてなおす「とせい」シリーズ。
これは結構心にグッとくるストーリー。

とにかく、今野敏先生は「暴力団」というテーマでも
あらゆる角度から描ける作家さんです!

「横浜みなとみらい署暴対係」シリーズは、ずいぶん前にシリーズ第1弾
「逆風の街」が発売されてから新作がなかなか出ず、どうかなと思っていたら、
第2弾「禁断」が発売。そして3弾と次々と文庫化されたので、
ファンとしては嬉しい限り!

シリーズ第3弾「防波堤」は短編集。
「ハマの用心棒」と呼ばれる、神奈川県警みなとみらい署の暴対係長・諸橋と
陽気な相棒・ジョーこと城島は、部下たちからの信頼も篤い。
ある日、馴染みのやくざ・神野組唯一の組員・岩倉が身柄を拘束された。
素人に手を出したという。昔気質の神野組が素人に手を出すはずがない。
諸橋と城島は岩倉の取調に立ち会う。表題作「防波堤」
横浜に蠢く悪に諸橋班が立ち向かってゆく。チームワークの良さは
「安積班」にも負けない!
さらに諸橋に情報提供する、昔気質のヤクザ・神野組長と
たった一人の組員・岩倉との絡みも温かく描かれている。
暴力団の不穏な動きを事件になるまえに未然に防ぐ、諸橋たちの
活躍が小気味良い!
みなとみらい③

横浜みなとみらい署暴対係シリーズ第2弾「禁断」
横浜・元町で大学生がヘロイン中毒死した。
暴力団・田家川組が事件に関与していると睨んだ、
みなとみらい署暴対係警部・諸橋は、陽気な相棒・城島と事務所を訪ねる。
事件を追っていた新聞記者、さらには田家川組の構成員まで本牧埠頭で殺害され、
事件は急展開を見せる。焦点が絞れない連続殺人事件。
この連続殺人で、横浜に危険なものを感じた、城島は
「なんだかすわりが悪い」とつぶやく・・・。
諸橋と城島は事件の真相を探るべく、神野組に向かう!
「ハマの用心棒」こと諸橋の怒りが炸裂!
みなとみらい②

横浜みなとみらい署暴対係シリーズ第1弾「逆風の街」
神奈川県警みなとみらい署の暴力犯係係長の諸橋は「ハマの用心棒」と呼ばれる。
両親を抗争の巻き添えで失い、暴力団に対して深い憎悪を抱く諸橋のあだ名だ。
地元の暴力団には脅威の存在だ。
ある日、地元の組織に潜入捜査中の警官が殺された。
警察に対する挑戦か!?
諸橋は、ラテン系の陽気な相棒・城島と絶妙なコンビネーションで
事件に迫る!諸橋班の浜崎、倉持、日下部、八雲のメンバーが港ヨコハマを駆け抜ける。
シリーズ第1弾は、諸橋班VS暴力団!そして、警察上層部との軋轢!
みなとみらい①

『逆風の街 横浜みなとみらい署暴対係』
著者:今野敏
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥629(税別)

『禁断 横浜みなとみらい署暴対係』
著者:今野敏
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥714(税別)

『防波堤 横浜みなとみらい署暴対係』
著者:今野敏
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥640(税別)

切なくなってしまった・・・。「イノセント・デイズ」

早見和真さんの作品、恥ずかしながら初めて
読みました。
「イノセント・デイズ」

版元さんの本の紹介文があまりにも刺激的で
つい、買ってしまいました。

イノセントデイズ

元恋人だった男の家に放火し、その男の妻と双子の子どもたちを
殺害した田中幸乃。
死刑判決を受け静かにそれを受け入れ、ただ待つ日々。
そして、幸乃の死刑は執行された・・・。幸乃にとっては
やっと・・・いう想い。

幸乃の死刑執行から物語は始まる。
「整形シンデレラ」「稀代の鬼女」とも言われた、死刑囚・田中幸乃。

子ども時代、父・母・姉・幸乃の4人家族はこの上ない幸せな
家庭を築いていた。
近所の男の子、翔ちゃん、シンちゃんともとても仲が良かった。
しかし、母が事故で亡くなったことから、幸乃の倖せは消える・・・。
最愛の父から、たった1度だけ手を挙げられ幸乃は否定された・・。
私は誰にも必要とされないのか・・・。
幸乃は、ただひたすら自分を必要としてくれる人を愛した。
裏切られてようと、それでも必要だと思ってくれるなら、その人を大切に思ったのだ・・・。

幸乃に関わった人たちの口から語られる、幸乃像は決して殺人鬼には
感じられない。優しい、自分の事より友人、恋人だ。
だから、読んでいると切なくなる・・・。
なぜ・・と思ってしまう。

そして、ただ一人幸乃の無実を信じる男。
彼は必死に幸乃の無実の証拠を探すのだが・・・・
果たして幸乃はそれを望むだろうか・・・。

最後のほうは、どうしても助けてあげて欲しいと
想った。
ラストを読んでこのタイトルの意味がわかるとほんとに
切なくなります。

『イノセント・デイズ』
著者:早見和真
出版社:新潮社
価格:¥1,800(税別)

海外イヤミスの極致!「ゴーン・ガール」

同僚から薦められて読みました。

海外の嫌~なミステリー、「ゴーン・ガール 上下」ギリアン・フリン著です。

人間の深層心理や、マイナスな感情が巧みに描かれていて、
読者を翻弄します。そのうまさに、海外では
ベストセラーになった作品!
そしてこの作品には、驚くべき仕掛けが施してあるのです。

ゴーンガール

ニューヨークで雑誌のライターをしていたニック・ダンは、
電子書籍の隆盛で、仕事を失ってしまう。
そんな頃、田舎にある実家では、父親が認知症を患い、母親が
余命いくばくもない病魔に侵されたと妹から知らされる。
二人の介護を妹一人に任せてはおけず、ニックは実家へ帰る決心をする。
そして、妻のエイミーとともに田舎へ帰ったニックに、耐えがたい
結婚生活が待っていた・・・。

妻エイミーとは出会ってすぐに恋に落ち、結婚。
気の合う二人は結婚後も幸せな家庭を築いていたが、
田舎での生活を始めてから、二人の気持ちにすれ違いが
生じるようになる・・・。

そして、結婚5周年の記念日、エイミーが突然謎の失踪を遂げる。
家には争った形跡があり、確実なアリバイのない夫・ニックに
嫌疑がかけられる。
夫が語る、結婚生活と交互に挿入される妻の日記。
異なる二つの物語が重なるとき、驚愕の真実が
浮かび上がる。

大胆すぎる仕掛けと意表を突く展開に驚きの連続!
さらに、人間のネガティブな感情のオンパレードが
この作品の最大のテーマだ。
虚栄心、嫉妬、保身、裏切り、敗北感、復讐心
欺瞞、執着、支配欲、憎悪、これらの感情から
生まれる、嘘!嘘!嘘!
濃密に描き出される負の感情に、どれだけ耐えられるのか?

全米で200万部を記録した、スケールの大きなイヤミスの決定版です。

『ゴーン・ガール 上下』
著者:ギリアン・フリン
出版社:小学館(文庫)
価格:上下各¥752(税別)