月別アーカイブ: 2012年8月
百田尚樹先生、会心の傑作『海賊とよばれた男』心が熱くなります!
出光佐三は小説の中では、国岡鐵造という名前で登場します。
1945年、終戦。日本は戦争に負けた。
国岡商店は海外資産から何からすべてを失う。
大方の会社がリストラする中、国岡商店も役員たちからリストラ案を出されたが、鐡造はその案を一蹴し、一番大切な社員が残った、彼らとともに会社を復活させよう!と役員たちを説き伏せる。
上巻では、終戦後の国岡商店の復活の兆しと、鐡造がどのように会社を立ち上げ大きくしていったのかが描かれている。
いち早く石油に目をつけた鐡造は、石油事業を自分の一生の仕事にするべく、お世話になった会社を辞め、新たに会社を立ち上げる。そのとき無償で鐡造に資金を提供してくれた、日田重太郎氏はその後の鐡造の人生の師ともなる。
この上巻でなぜ国岡鐡造が‘海賊’とよばれるようになったのか?その由来も描かれている。
このくだりを読むと仕事とは工夫次第でいかようにも出来るんだな~と感心します。
また、鐡造が社員を家族同様に大切にしていることも描かれている。
勉強はもちろんのこと、立居振舞や、しつけなど本当に社員をわが子同様に扱っている。
社員を馘首にしない、出勤簿はない、組合はない、定年はない。
大きな会社になればなるほど必要なルールが国岡商店にはないのだ。
鐡造と社員との信頼関係がどれほどあついのかがわかるエピソード。
こんな国岡鐡造が店主だからこそ、会社がどんなに大変な状況になろうとも社員は落ち込まない。辞めない。
厳しい状況に置かれた時こそ、国岡商店の社員は大いなる働きを見せる。
下巻では、国岡商店が戦後、社員の猛奮闘で危機を乗り越え、業界でも1位2位を争う石油会社に復活している。
しかし日本の石油業界は、外国資本の石油会社に蹂躙され、民族資本で頑張っているのは『国岡商店』のみだった。
次々に難問を繰り出す外国資本に対して、鐡造は、日本の石油業界のために、信念を曲げず、ただ一人立ち向かっていく。
そして、とうとうイランへと旅立つことになる。
これが『日章丸』。日本初の大型タンカーが、イギリスの石油会社に乗っ取られていた、イランの石油を輸入するために出航するのだ!!このシーンは涙なくしては読めません!!!
このことが、何も知らされていなかった日本と英米ほか世界中を驚かす大ニュースとなったのだ。
上下巻をずっと読んでいて、なぜこんな凄い人が、歴史の中に埋もれていたのか・・・?不思議でならなかった。でも読み終わってなんとなくわかる気がします。
日本の未来のため、日本の石油業界のためには信念を曲げず、アメリカだろうが、イギリスだろうが、日本の発展を阻む者たちに敢然と立ち向かっていく。
利権ばかりを追求する官僚たちでは歯が立たない!
しかし鐡造のこの思いは、当時の世界の石油業界を牛耳っていた、セブンシスターズ(七人の魔女)をも味方につけてしまったのだ。
敵からも惚れられる男です。こんな日本人がいたとは・・・。感動しました・・・。
この本を読んでいるとき、日本人であることをとても嬉しく感じました。
この本を読むと、元気が出ます。どうか皆さんに読んでほしい。そして出光佐三のことを知ってほしいです。
『海賊とよばれた男 上下』
著者: 百田尚樹
出版社:講談社
価格:上下各¥1600(税別)
2010年、選考委員絶賛の乱歩賞受賞作『再会』が文庫化
人間の顔をしたモンスターを描く!戦慄のサスペンス『悪の教典』
ある高校の英語教師・蓮実聖司は、明るく親しみやすい性格、しかもハンサム。
生徒たちからは‘はすみん’と呼ばれるほど人気がある教師。
担当教科の英語の授業は、生徒のために工夫を凝らし楽しい授業で生徒を飽きさせない。
また、生活指導の担当者として生徒の悩みにも親身なって応え、生徒の親、同僚の教師、さらには教頭、校長からの信頼も絶大だ。
だが、それは蓮実のうわべだけの姿だった・・・・。
彼の本性は、精神的に大きな欠陥を持つ、(他者への共感能力が欠如した)サイコパスだった。
子供のころから非常に頭が良かった蓮実は、これまでにも自分に障害となる人物を排除してきたのだ。
彼を慕う生徒が多い中、蓮実の完璧すぎる性質に違和感を抱く生徒がいた。
それを知った蓮実は、学園祭の準備で居残る生徒たちを殺戮する計画をたてる・・・。
上巻では、学校の諸問題、いまどきの高校生の実態もリアルに描かれている。
そして完璧なまでに模範教師をこなす蓮実が描かれつつ、徐々にモンスターの本性を現していく過程が、微妙な加減で描かれていて読み手の好奇心をくすぐっている。
下巻では、今までの模範教師がモンスターに変貌し、生徒たちを次々に殺戮していく。
ぶっ壊れた心、身勝手な理屈、ありえない結末!!
ここまで描けるのか!?というところまで描かれ、読み出したらとまらない。
サイコパスの恐ろしさを徹底的に描いた、サイコサスペンスホラーの傑作。
『悪の教典 上下』
著者: 貴志祐介
出版社:文藝春秋
価格:上下各¥695(税別)
女の無責任な噂話が怖い!湊かなえさんミステリーの新作
ある化粧品会社の美人会社員が惨殺された。
不可解きわまりない事件。
美しすぎる同僚への嫉妬なのか・・・?
やがて一人の女性に疑惑の目が集まる。ハイエナのようなフリーの雑誌記者の耳に届いた衝撃的なこの事件の噂。
記者は、同僚、同級生、家族、故郷の人々を取材し記事を書いていく。
取材の過程で語られる、驚くべき証言の数々。どれが真実でどれが噂なのか・・・・?
記者はこの事件を扇情的に取上げていく。
ネット炎上、過熱する週刊誌報道、口コミで走る衝撃。
女同士の『噂』ってこんなに怖い!果たしてその噂の女性とは?残忍な魔女なのか?それとも?
何かにつけ目立っている女性への嫉妬がこうもうまく表現できるなんて凄い!
意地悪目線がじわじわとにじみ出ている。
物語の後にたされた「事件関連資料」と題した、週刊誌の記事、ネット上でのつぶやき、ブログなどがこの物語をさらに面白くしていて、妙にリアリティがある。
ヒットメイカー・湊かなえさんの新たなる挑戦!?傑作ミステリ長編です。
『白ゆき姫殺人事件』
著者: 湊かなえ
出版社:集英社
価格:¥1,400(税別)
ミステリーか?ホラーか?不思議な面白さ『蛟堂報復録1』
愛憎、嫉妬、騙しあい、裏切り・・・・。人が抱える心の闇がこれでもかと描かれているが、どこかに救いがある。人とは所詮こういう生き物なのだ、と納得・・・。そういう意味でも読み終わった後、妙に安らぐ不思議さ。
この世界にすっかりはまってしまったので、2巻以降読むのが楽しみ!!
『蛟堂報復録1』
著者: 鈴木麻純
出版社:アルファポリス(発売 星雲社)
価格:¥600(税別)
>百田尚樹先生の講演会、素晴らしかったです!
昨日は、百田尚樹先生の講演会&サイン会にスタッフとして参加しました。
そして先生のお話も聴くことが出来、大変感動しました。
お話の大半は、新刊『海賊と呼ばれた男』(講談社刊)についてでした。
この本は、出光興産の創業者、出光佐三をモデルに彼の生涯を描いたノンフィクション・ノベル。
百田先生は、この出光佐三がいかに素晴らしい男であったのか、熱く語られました。
‘なぜこれほどのまでの人物が忘れ去られていたのか・・・。この出光佐三をもう一度歴史の表舞台に出したい!皆に彼の偉業を知ってほしい!’という強い思いでこの本を描かれたそうです。百田先生の出光佐三への強い思いは、聴いている私の心にも強く響きました。
『永遠の0』で百田先生を知って以来、『錨を上げよ上下』(講談社)、『輝く夜に』(講談社文庫)、『モンスター』(幻冬舎)、『プリズム』などの作品を読んできました。
どの作品も面白く、楽しく読ませていただいたのですが、この『海賊と呼ばれた男』は、先生のお話を聴き、どうしても読みたいと思いました。‘戦後忘却の堆積に埋もれていた驚愕の史実’がいったいどういうものであったのか、どうしても知りたいと思いました。
百田先生、大変貴重なお話、ありがとうございました。
今日から読み始めました。
序章、終戦の玉音放送を聴いた後の国岡鐡造(出光佐三の小説での名前)の決意からぐっときます・・・・。
今年の乱歩賞受賞作は異色すぎて凄い!『カラマーゾフの妹』
13年前に起きた、「カラマーゾフ事件」。父親を殺したのは、長男のドミートリ―。しかし真犯人はほかにいた!?
獄死した兄の無実を明らかにするために、モスクワで特別捜査官となった次男・イワンが事件の再捜査をするために相棒のトロヤノフスキーとともに故郷へ戻ってきた。
再捜査の過程で弟のアレクセイに会いに行く。アレクセイは相変わらず皆に愛されて、故郷では教師をしていたことから、子供たち、その両親からも絶大な信頼を得ていた。
一方、イワンは度重なる頭痛に悩まされ、ひどい頭痛のときは記憶すらない・・・。
トロヤノフスキーは彼の行動から、ある精神の病に思い当たる・・・。
そして次々と明らかになる兄弟たちの秘密。
タイトルに隠された、‘妹’とは・・・?
原典となる『カラマーゾフの兄弟』のエピソードを上手く盛り込み、新たに著者が描いたオリジナルな部分へと誘導する。
原典で描かれた謎が、この作品で明らかになり驚愕のクライマックスへと繋がっていく・・・。
『カラマーゾフの兄弟』を読まなくても、ミステリーの醍醐味が味わえる、今年一番の衝撃作!
『カラマーゾフの妹』
著者: 高野史緒
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)
人間が一番恐い・・サイコサスペンスホラーの代表作『黒い家』
生命保険会社で死亡保険金の査定を務める若槻は、ある日顧客の家に呼び出され、子供の首つり死体の第一発見者になってしまう。
ほどなく、死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。
自殺した子供の父親は、幾度となく死亡保険金の督促にくるが、若槻は調査中と偽り、保険金支払いを保留にしていた。
やがて、その父親の態度にも異変が表れてくる・・・。
執拗に保険金請求をするわりは、まだおりないと答えるとすんなり帰ってしまう。
その態度に不気味さを感じる若槻。子供の事件の後、その夫婦の周りで次々と事件が起こる。
やがて若槻はその事件に巻き込まれていく・・・そして、信じられない悪夢に見舞われることになる・・・・。
保険金を騙し取るために殺人を繰り返す、心を持たない、人間の顔を持ったモンスターが邪魔者を排除する・・・。
その恐ろしさは想像を絶する!生きている人間の所業が一番恐ろしい!!サイコサスペンスホラーの衝撃作!!
『黒い家』
著者: 貴志祐介
出版社:角川書店(角川ホラー文庫)
価格:¥667(税別)
ホラーミステリー『墓地を見おろす家』・・。怖すぎて鳥肌もの
『墓地を見おろす家』
著者: 小池真理子
出版社:角川書店(角川ホラー文庫)
価格:¥560(税別)