読み終わるのがもったいないくらい面白い!『ムゲンのⅰ』

知念実希人さんの「ムゲンのi」を読みました。
我をわすれ、没頭して読みました。

世界でも極端に症例の少ない謎の病気「突発性嗜眠症候群」
通称レイスという難病の患者が同時期に3人も発生した。

その3人の主治医を勤める医者・識名愛衣は、彼らが
レイスに陥ったのは共通の原因があるのではないかと
推測し、祖母から受け継いだ呪術師・ユタの力を使って、
彼らの魂の救済〈マブイグミ〉を試みる。
この病気を治す術はそれしか方法はないのだ。

愛衣は患者の夢幻の世界に飛び込み、愛衣の魂の分身
〈うさぎ猫のククル〉とともにマブイグミを施してゆく。

やがてイムス患者の心の傷は、23年前の少年Xによる
通り魔殺人と、最近都内で頻発する猟奇殺人の二つの
事件と繋がっていることがわかる。

「夢幻」、「呪術師ユタ」、「うさぎ猫ククル」という
ファンタジーを連想させる世界観に、超現実的な
メディカルミステリーを融合させるという神業を挿入させた
ストーリーは、展開も結末も予測不能だ。
だからこそ物語がどう進んで行くのかが気になり、
先へ先へと読みたくなる。

また、医者として患者を完治させたい、助けたいという
愛衣の強い思いは、ククルの励ましなしでは成功しない。
愛衣を支え続けるククルの深い愛情と、愛衣を見守る
祖母や父の慈愛。この物語全体を「愛」の力が包み込んでいる。

著者が「命を削り、魂を込めて書きあげた最高傑作」と
言う通り、物語が、文章が、言葉がじわじわと心の中に
沁みこんでくるようだ。

設定・ストーリー展開・登場人物の愛らしさ、
そして最高級の面白さで魅せる、見事なファンタジック
ミステリー!
すべての謎が解け真相に繋がった圧巻のラストに魂が震える。

700ページという大長編なのに、読み終わるのが
もったいないと思うほど、面白いミステリー。

『ムゲンのⅰ上下』
著者:知念実希人
出版社:双葉社
価格:各¥1,400(税別)

第65回江戸川乱歩賞受賞作「ノワールをまとう女」

ミステリー作家の登竜門である、江戸川乱歩賞。
第65回の受賞作は、神護かずみさんの
「ノワールをまとう女」です。

日本有数の医薬品メーカー美国堂。
傘下に入れた韓国企業の社長が過去に
反日発言をしている映像がネットに流出した。

「美国堂を糺す会」が発足し美国堂に対し
糾弾を繰り返していた。

総会屋から転身して、企業の危機管理、
トラブル処理を請け負っている原田は、
美国堂から依頼を受け、部下の奈美に
仕事を依頼する。

そして、美国堂に対するデモを鎮圧すべく、
偽名を使い「糺す会」に潜入した奈美。
リーダー格の「エルチェ」という男に
近づき情報を得る。

奈美は、秘かにデモ妨害を仕掛けるが、
ある日、「エルチェ」からナミという同志を紹介された。
その女性は驚くべきことに奈美の恋人、雪江だった。

なぜ雪江がここにいるのか?
何食わぬ顔をして、なぜデモの話をする?
もしかして自分は罠を仕掛けられているのか….。

企業トラブル請負人という斬新な設定が
興味深く、また総会屋の現在が垣間見えた。

大手企業の思惑、元総会屋の矜持、さらに
韓国問題も背景に描きつつ、過酷な運命に
翻弄されるヒロインが描かれる。

また、ミステリーとしての面白さ、醍醐味も
充分に味わえる、ハードボイルドミステリー。

クールでスタイリッシュな奈美に魅了されます。

『ノワールをまとう女』
著者:神護かずみ
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)

まんまとはまりました!『ブラッド・ブレイン1 闇探偵の降臨』

小島正樹さんの「ブラッド・レイン」シリーズ
第1巻「闇探偵の降臨」を読みました。

読み終わったら思わず面白~いとつぶやいて
しまいました。

警視庁捜査一課の百成は、確定死刑囚を収監した
陸の孤島「脳科学医療刑務所」を訪れた。
そこには未解決事件を次々と解決する「闇探偵」
と呼ばれる月澤凌士がいた。

確定死刑囚が警察の捜査にアドバイスを
することは、警察の中でもごくわずかな
人間しか知らない。

百成は、警察上層部の命を受け、奇怪な
事件や難事件が発生すると月澤に面会し
事件のあらましを話すのだった。

百成は、月澤に団地の二階の天井から
聞こえてくる奇妙な声の謎を解いてほしいと依頼する。

その奇妙な出来事は、連鎖する怪事件の序章だった。

何の関連性も見いだせなかった、それぞれの事件。
月澤の推理でやがてひとつに繋がってゆく。

月澤凌士という強烈なキャラクター!
緻密過ぎるほど練り上げられた伏線。
そして、想像のはるか上をゆくトリックの数々。
さらに、どんでん返しにもほどがあるだろう~
と叫びたくなるほどの圧巻の逆転劇。

文句なく物凄く面白いミステリー!
あ~はまりました。
2巻を読むのが楽しみです!

『ブラッド・ブレイン1 闇探偵の降臨』
著者:小島正樹
出版社:講談社(タイガ文庫)
価格:¥720(税別)

濃密な人間ドラマが織りなす哀切のミステリー『罪と祈り』

貫井徳郎さんの新境地です。
こんなに心に沁みるミステリーを読んだのは
久々です。

濱仲亮輔は、警察から父の死を知らされた。
父・濱仲辰司は、墨田川で亡くなっていたらしい。
父の突然の死に亮輔は言葉を失う。

辰司は元警察官だった。当初は事故かと思われたが、
側頭部に殴られた痕が見つかった。

真面目で正義感溢れる辰司が、なぜ殺されたのか?
父の殺害に疑問を持った亮輔は、一人調べ始める。

一方、亮輔の幼馴染みで刑事の賢剛は、警察官として
尊敬していた辰司の死の謎を追う。
賢剛が幼い頃、父・智士が自殺した。
その後、智士の親友だった辰司は、賢剛を
我が子のように可愛がってくれた。

賢剛は自身の父・智士の自殺とのつながりを疑う。

父親たちの時代はバブル全盛期の時代だった。
そして、当時世間を揺るがした未解決誘拐事件。

亮輔と賢剛、辰司と智士、現在と過去が
交互に描かれ事件の真相に迫ってゆく。

濃密な人間ドラマをバックボーンに、
現在と過去、二つの事件の過程が描かれる。
その謎解きの面白さもさることながら、
バブルに翻弄された人間たちの葛藤が
圧倒的な臨場感をもって描かれ心に響く。

著者、2年ぶりの最新長編は、これまでにない
傑作ミステリー。

『罪と祈り』
著者:貫井徳郎
出版社:実業之日本社
価格:¥1,700(税別)

鳥取県日野郡日南町が舞台の驚愕ミステリー!「日南X」

米子在住の作家・松本薫さんの日野郡三部作目は
ミステリー小説!「日南X」です。

以前、時代小説「謀る理兵衛」を読みましたが、
キャラクター描写、時代背景、ストーリー展開、
どれも素晴らしく、ものすごく面白かった印象が
あります。

この「日南X」も大変面白いミステリー小説です。

時は平成4年。大手新聞社の記者・牟田口は、
米子支局に異動となり、高校生の娘と二人で米子で
暮らすことになった。

ある日、部活途中の娘が教師と部活仲間とともに、
赤猪岩神社でナイフが刺さった男性を発見!
すぐに警察に連絡した。警察官を連れて現場に
戻ってきた娘たちは、驚愕する。
倒れていたはずの男性の姿が消えていたのだ!

多数の目撃者がいるにも関わらず、警察は
見まちがえでは?と言って去っていった。
だが、それは謎に満ちた連続殺人、はたまた
拉致事件の前兆だった。

古事記ゆかりの赤猪岩神社で起きた遺体消失と
不可解なメッセージから始まるこの物語。

主人公の大手新聞社支局の新聞記者が地元警察の
ベテラン刑事とタッグを組んで難事件に挑む!

オオクニヌシ伝説、日南町の影の歴史、
地元ゆかりのエピソードを背景に、過去と
現在が繋がってゆく。

そして、調査の過程で明かされる謎の人物たち。
日南Xとは誰なのか?

また、非常時の中だからこそ強まる家族の絆や、
苦難に巻き込まれた友達との交流・・・。
真の友情とは何かを考えさせられる。

絶妙なタイミングで配置された伏線の数々に翻弄
されつつ、最後の最後まで読ませる面白さだ。

たった一つの謎を残したままのラスト….。
それがこの物語にふさわしいと感じた。

『日南X』
著者:松本薫
出版社:今井出版
価格:¥1,500(税別)

女刑事・原麻希再登場!「警視庁捜査一課八係 警部補・原麻希レッド・イカロス」

捜査一課八係・八班に異動となった
原麻希の新たな活躍を描く!

「女性犯罪」捜査班にいた原麻希は、捜査一課
八係に異動となった。
係長は麻希の元恋人だった広田達也だ。
さらに、以前「女性犯罪」捜査班で一緒だった、
鍋島も一緒だ。

そこへ平成生まれの手塚大翔巡査部長が配属されてきた。
何かあればすぐにスマホで調べ始める手塚を見て、
広田は渋い顔をする。「スマホ刑事」などと揶揄
する始末。

だが、広田の刑事としての矜持を見た手塚は、
スマホで調べるのも大事だが、刑事は足を
使って捜査をするという広田の言葉で一歩踏み出す。

気弱だった手塚は、広田の言葉で徐々に刑事として
目覚めてゆく。

そんな経緯の中、ある住宅街で年配者の不自然な
連続孤独死が発覚する。
事件性があると判断した麻希は、八係のメンバーで
捜査を開始。

そこで、連続孤独死の一人の女性の遺品から
ノートが発見される。そこには「米村さん
ごめんなさい」と綴られていた。

捜査が進むにつれ、連続孤独死事件の裏に、
過去に日本中を震撼させた悪質な詐欺事件が
関わっていたことが判明する。

麻希たちの捜査、手塚が必死で集めた情報、
誰も期待してなかった鍋島の意外な活躍で
事件の全貌が明らかになるかと思えたが….。

それは予想だにしない巨悪と繋がっていた!

この作品、いつもと感じが違う思ったら、
原麻希の猪突猛進の捜査シーンよりも、
手塚の活躍に焦点を充てている感じ。
手塚の成長も描かれて新鮮だ。

八係の捜査は、誰もが違う方向から調べて
いたのに、最後にピタッとはまって思わず
凄い!!と叫んでしまった。

警視庁捜査一課八係シリーズ、最高に面白いです!

『警視庁捜査一課八係 警部補・原麻希 レッドイカロス』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社
価格:¥640(税別)

衝撃のクローズドサークル!第2弾「魔眼の匣の殺人」

前代未聞のクローズドサークルで起こる連続殺人事件の
顛末を描いた「屍人荘の殺人」。
その衝撃も冷めやらぬうちに新たな作品が登場!
「魔眼の匣の殺人」だ。

人里離れた「魔眼の匣」と呼ばれる施設を訪れた
新生ミステリ愛好会の剣崎比留子と葉村譲。
彼らは、班目機関の拠点施設で何が行われいたのか
調べるためにここを訪れた。
過去に、超能力研究が行われていたらしいのだ。

その日は彼らの他に、高校生の男女、ツーリング
途中の若者、派手な装いの女性、頑固そうな男性と
その息子らしい小学生くらいの男の子が、
「魔眼の匣」を訪れていた。

彼らを迎えたのは、この施設で暮らす老女。
預言者と恐れられている。
彼女は訪問者に「あと二日のうちにこの地で
四人死ぬ」と予言した。

そして、外と唯一繋がる橋が燃え落ちた後、
予言が的中するかのように、一人が謎の死を遂げる。

またしても閉じ込められた空間で、訪問者たちは
パニックとなり、死の恐怖が彼らを襲う!
そんな中、訪問者の一人、女子高生が予知能力者
だと告白する。

42時間というタイムリミットで、剣崎らは
生き残ることが出来るのか?
事件の謎を解明できるのか?
不気味な「魔眼の匣」での連続殺人!
そしてまさかのまさかの真相に絶句する!

「屍人荘の殺人」に引けをとらない面白さだ!!!

『魔眼の匣の殺人』
著者:今村昌弘
出版社:東京創元社
価格:¥1,700(税別)

メインキャラ総登場!『バチカン奇跡調査官 アダムの誘惑』

大好きなシリーズです。
「バチカン奇跡調査官」。最新作「アダムの誘惑」
が発売されました。

今回は、奇跡調査官のロベルトと平賀のほかに
FBI捜査官・ビルとその婚約者エリザベートも
登場。新たな展開にちょっと嬉しくなりました。

バチカンの奇跡調査官・ロベルトと平賀は、
FBI捜査官のビル・サスキンスから
結婚式の司祭を依頼される。
ビルの相手は、任務のため偽装婚約中の
エリザベート。
偽装婚約から、とうとう偽装結婚に至ったのか?
と二人は驚くが、ビルの口ぶりは真剣そのものだった。
二人が幸せになるならと喜んで司祭を引き受け、
休暇をとって二人はアメリカへ向かった。

一方、ビルとエリザベートは、世界的大スター・
ゾーイのコンサートを観て興奮!
コンサート中、ビルとエリザベートは、
危険な状況に陥ったゾーイを救ったことで、
ゾーイと懇意になることが出来た。
そのとき、エキゾチックで美しい牧師・アダムと
知り合う。二人が結婚することを知ったゾーイは
お礼に結婚式で歌をプレゼントすると約束した。
翌日、その打ち合わせのためにゾーイの別荘を
訪ねたビルとエリザベートは、巨大水槽の中で
揺れているゾーイの遺体を発見する。

事故か?他殺か?それとも自殺なのか?
さらに、結婚式の当日ビルが失踪してしまう!

ロベルトと平賀、そしてエリザベートの3人は、
失踪したビルの捜索とゾーイの死因を探る!
やがて奇妙な共通点が浮かび上がってくる。

エキセントリックな現象の連続、なぞの組織、
そこには巨大な悪の組織の影….。

読みだしたら止まらない!面白さはさらに加速する!
次につながる、背筋が凍るラストに戦慄!!!

『バチカン奇跡調査官 アダムの誘惑』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥780(税別)