「ベルばら」大好きな人におススメ!「紅霞後宮物語」

あまりミステリーっぽくないけれど、たまたま手に取って
読んでみました。「紅霞後宮物語」!
面白すぎてはまりました。

著者の雪村さんが子供のころから大好きという、
中国歴史、後宮もの、戦う女性など
好きに満たされた作品で、読んでいると
著者のこだわりがまっすぐに伝わってきて、
楽しくて仕方ありませんでした。
第1作を読むと絶対に続きが読みたくなります。
発売当初はこれきりで、続きが出るなんて考えてもみなかった
ようです。でもあまりの面白さに続きが読みたい読者が
続出!だからシリーズ化になったのでしょう。
現在シリーズ4巻目が発売中です。

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身分の低い農民だった関小玉(かんしょうぎょく)は、
家族を養うために女の身でありながら軍人となった。

小玉は、数々の戦で手柄をたてその功績でどんどん出世した。
優秀な部下も育てたので、小玉の軍は最強となった。
その時、小玉は文林(ぶんりん)という超イケメンの部下を持った。
文林は、リーダーの補佐能力に優れ小玉をよく補佐した。
そして、二人はいつかきっと一緒になるだろうと、自分たちも
また周りからもそう思われた・・・。

ところが、文林が皇帝になってしまった!
先帝からの信頼が厚かった文林は、実は先々帝の庶子だったのだ。
血筋から言えば正当な皇帝継承者。
先の皇帝は文林にすべてを託し早逝した。
文林が皇帝になってから、戦は確実に減っていった。

戦上手の小玉の出番はなく、日々軍事訓練に明け暮れていた。
そんな時、皇帝となった文林が小玉に会いにきた。

彼は小玉に「後宮に入ってくれ」と言った。
小玉は、「ふざけるな!」と皇帝・文林を殴りたくなった。
だが、文林はこのままでは小玉の能力が活かされないと
判断し後宮入りを提案したのだ。
しかも「皇后」として!
皇帝の命令には逆らえない・・・。小玉は仕方なく了承した。

そして後宮に入り、皇后として優雅に生活する日々・・!?
んな理由はない!一旦は女を捨てようとした小玉だ。
女官たちを日々苛立たせながらやりすごす毎日。

そして、小玉がやっと後宮に落ち着いた頃、事件は起こる・・・。

元軍人、男勝りの皇后さま。後宮の空気などもちろん
読まない、読めない!マイペース皇后さまに後宮は大混乱!
ついでに後宮に潜む‘闇’を目覚めさせてしまった!

そんな皇后と文林の運命は如何に!?

男勝りの女性が主人公というと、「ベルばら」の
オスカル様を彷彿します。

まさに「ベルばら」大好きだった世代の女性におススメの
超!衝・笑撃の後宮物語。
これを読んだらあまりの面白さにはまること間違いありません!

『紅霞後宮物語』
著者:雪村花菜
出版社:KADOKAWA(富士見L文庫)
価格:¥580(税別)

「女性犯罪捜査班」原麻希シリーズ最新刊「通報者」!

警視庁‘女性犯罪’捜査班警部補・原麻希シリーズ
第3弾「通報者」が出ました!!

このシリーズ、警察小説とミステリーが上手く融合!
さらに、原麻希刑事がとても魅力的で好き。

「通報者」は長編なのですが、1冊の本の中で前編と
後編に分かれていて、前編で起きた事件がさらに複雑怪奇な
様相を呈し、後編へと繋がってゆく・・・・。
ちょっと変わった設定で物凄く面白かったです。

通報者

前編【東中野母子営利誘拐事件並びに立川市残堀川女性全裸死体遺棄事件】
警視庁管内で、税理士の妻子が誘拐されたとの一報が入った。
ところが、被害者の夫は警察に連絡せず、身代金受け渡し間際になってから警察に通報!
警察は誘拐事件の準備もままならない内に行動を開始。

身代金取引現場に偶然居合わせた「女性犯罪班」の原麻希が
捜査に加わり身代金を持った夫を追跡するが、警察が
介入していることがばれ、取引は中止になってしまう。
そして、その誘拐事件は最悪の結果に!多摩川流域にて
女性と子どもの遺体が発見される!
さらに同じ多摩川流域で今度は全裸の女性遺体が発見された・・・。
そして事件はさらなる奇妙な方向へ・・・

後編【町田市雑木林女性連続殺人事件並びにヴィラ東中野3人殺し】
誘拐事件の全容も明らかにならないまま、今度は町田市の雑木林で
二人の女性の遺体が相次いで発見される。
そしてヴィラ中野で発見された3人の遺体・・・・。

全くバラバラに見えたそれぞれの事件が、意外な方向で繋がってゆく!
原麻希のひらめきはさらに磨きがかかり、推理を展開!

そして元恋人で公安刑事だった広田が警視になり捜査一課に異動。
この事件の管理官で登場している。
そのリーダーぶりもかっこいい。

警視庁「女性犯罪捜査班」警部補・原麻希シリーズ中一番面白い作品。

『警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希 通報者』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥590(税別)

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう第2弾発売!

このミステリーがすごい大賞」の隠し玉としてデビューした
山本巧次氏の「大江戸科学捜査八丁堀のおゆう」。
あまりにも面白くて、前回紹介した時に早くシリーズ化してほしい
と書いたように思う。

そして5月、文庫新刊コーナーの棚を何気なく見ていたら、
「あっつ!」発見しました。読みたかったあ~第2弾。
何とグッドタイミングなんだ!

第2弾は、「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤」です。

江戸科学捜査

平成の現代と江戸を往復する2重生活を営む
元OLの関口優佳。江戸ではおゆうと名乗っていて
なぜか頼りにされている。

そのおゆうに、小間物問屋の主人から息子が
実の子どもかどうか調べてほしいと相談を受ける。

またもや難儀なご依頼におゆうは閉口するも、
頼まれたら嫌とはいえないし、さらに相談の内容に
興味津々となり、快諾することに。
出生に関して、小間物屋の主人に聞いたところ、
産婆のおこうから強請まがいの手紙が届いたとの
ことだった。
おゆうはまず産婆のおこうの居場所を調べ、訪ねるが
在宅の様子はない。ところがそこには同心の伝三郎がいた。

伝三郎もさる大名の御落胤に調べていたのだ。
二人はお互いの事情を共有し、おこうの行方を追うが、
いっこうに見つからない。

おゆうにとって、親子鑑定など朝飯前だ。
小間物屋主人のDNAと息子のDNAを調べ親子鑑定してもらうのだ。
だが、親子のDNA鑑定など江戸では全く意味がない。
二人が親子だということをきちんと証明せねばならない。
そこでおゆうは、知り合いの藪医者を使って、骨相学なるもので
親子鑑定が出来ると言った。
そしておゆうは秘かに現代に戻り、分析ヲタクに親子鑑定を
依頼した。二人は間違いなく親子だ。産婆が嘘をついている。
だが、その証明を骨相学で納得させることは難しかった。

おゆうは仕方なく別の策を考える。

そんな時、小間物問屋の息子が何者かに襲撃される!

今回は、ある大名家のお家騒動に巻き込まれてしまう!
その大名家では、将軍家斉の息子を養子に迎えるために準備を進めていたが、
突然、殿さまには御落胤がいるとの話が浮上!
それが、小間物問屋の息子だという!
御落胤を担いで実権を握りたい派と将軍の後ろ盾が欲しい派と
真っ二つに割れているのだ。

だが、小間物問屋の息子は御落胤などではない。
それを江戸でどうやって証明するのか!
今回ばかりはなかなか上手い策が見つからず焦るおゆう。

そうこうしているうちに、産婆・おこうの死体が発見される!

現代の科学捜査を江戸の捜査にあわせて、いかに事件の真相を解くのか?
今回は事件の発端である、小間物問屋の親子は実の親子と
最初からわかってしまうが、それを納得させる機会を逸し、
事件がどんどん進行してしまい、殺人事件に発展!

だが、おゆうの機転と意外な発見で、犯人を追いつめるのだ!

前作を上回る面白さでいっき読み。
時代小説にSFファンタジーと本格ミステリの味付け!
第3弾はいつ出るのか?楽しみです。

『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤』
著者:山本巧次
出版社:宝島社(文庫)
価格¥640(税別)

息詰まる心理戦!新感覚のスパイ小説「裏切りの晩餐」

以前は海外のミステリー小説をよく読んだ。
東西の冷戦時代を舞台にした、スパイ小説が結構面白かった。
スパイ小説というと、フレデリック・フォーサイスや
ジョン・ル・カレが有名。

この「裏切りの晩餐」の著者、オレン・スタインハウアー氏は
ジョン・ル・カレに続く若手作家ということで、非常に評価が高いとのこと!

読んでみました!

晩餐

カリフォルニアのレストランで、CIAのスパイだった、
ヘンリー・ぺラムは、5年ぶりに元同僚で恋人だった、
シーリア・ファヴローと再会を果たす。
シーリアは、すべての過去を捨て結婚。二人の子どもを授かり
幸せな生活を送っているようだった。

二人は美味しい料理とワインで、5年ぶりの再会を楽しみ、
話が弾んでいた。
ヘンリーはまだ独身。シーリアと再会しもしかしたら
お互いの気持ちがまた一つになることがあるだろうか・・
と想像してみたりした・・・。
だが、シーリアの姿を見たとき、申し分無い人生を
送っている余裕が感じられ、ヘンリーの淡い期待は
見事に裏切られた。

だが、そんな友好的な二人も、CIA時代に起きた
ウイーン国際空港テロ事件の話に及ぶといっきに
緊迫し始める!
お互いの胸の内を探り合う、心理戦へと突入する。
レストランでの心理戦の合間に、現在と過去が
交互に描かれ次第に真相へと近づいてゆく・・・。
その事件の時、ヘンリーたち工作員は誰がどう動いたのか?
まさに手に汗握る展開、先へ先へと読み進めたくなるような
はやる気持ちが止まらない・・・。
そして、あまりにも意外で衝撃的なラスト!!

読み終わった時に「はあ~」と思わず漏れたため息。

物語の全てはレストランでの晩餐に焦点をあてている。
スパイ小説にありがちな派手な銃撃戦や、カーチェイスの
シーンなど一切ない。
そう!シーリアとヘンリーの緻密な内面描写があまりにも見事で、
二人の息詰まる心理戦だけで、最高級の面白さを感じさせてくれた。

斬新過ぎるスパイ小説の傑作です。

『裏切りの晩餐』
著者:オレン・スタインハウアー/上岡伸雄(訳)
出版社:岩波書店
価格:¥1,800(税別)

調査報道のバイブル!「殺人犯はそこにいる」

殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」清水潔著
この本はミステリー小説ではありません。ノンフィクションです。

著者は、「遺言 桶川ストーカー事件」の著者であり、
迷宮入りになりそうだったこの事件を取材し、事件の真相と
犯人を突き止め警察を動かし、ストーカー規制法制定の
きっかけを作った事件記者です。

殺人犯はそこにいる

先日、ニュースで20年前に群馬県で行方不明になった横山ゆかりちゃんの
ご両親が記者会見で、早く娘を探しだしてほしいと警察に訴えていました。

清水氏はこの事件は、北関東で起きている未解決の幼女誘拐殺人事件に
関連があると、著書の「殺人犯はそこにいる~」で明らかにしている。

清水氏はある番組制作がきっかけで、未解決事件の取材を始めた。
着目したのは、北関東周辺で起こった連続幼女誘拐殺人事件だった。

清水氏はまず、解決済みとされた「足利事件」から調査を開始する。
すると奇妙なことに気が付く。
「足利事件」を含め、未解決の事件現場の距離が群馬・栃木県を
またいでいるとはいえ、約10キロ圏内。
さらに、誘拐時の状況。彼女たちはパチンコ店で行方不明に
なっている・・・?
清水氏はその事件現場とパチンコ店という一致に
これは連続殺人事件ではないかと気が付き、足利市で起きた
事件の容疑で逮捕された菅家さんは冤罪だと確信した。
そして2009年、「足利事件」で17年間も服役していた菅家さんは、
無実であることが認められ釈放される。
つまり、連続幼女誘拐殺人の真犯人はいまだ逮捕されず野放し状態ということだ。

しかし、清水氏は独自の取材でその真犯人を特定している。
では、清水氏がいかにして、足利事件の菅家さんを無罪に導き、
その真相と真犯人に辿り着いたのか?

丁寧で緻密な取材、警察との軋轢の過程が詳細に描かれている。

ここまでわかっていながら何故警察は動かないのか?
読んでいて憤りを感じてしまう。

本書は、北関東連続幼女誘拐殺人事件の真相とさらに日本の司法の闇をも
炙り出している!!

「調査報道のバイブル」とも言われた本書は、新潮ドキュメント賞
日本推理作家協会賞を受賞。
日本中に衝撃を与えた事件ノンフィクション。

『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』
著者:清水潔
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥750(税別)

ハマの用心棒・諸橋刑事が帰ってきた!「臥龍」

今野敏先生の「横浜みなとみらい署暴対係」シリーズの
第4弾「臥龍」を読みました。

このシリーズは、横浜みなとみらい署暴対係の活躍を描いた警察小説です。
「ハマの用心棒」こと諸橋係長と係長補佐の陽気な刑事・城島が
コンビを組んで、暴力団絡みの事件を追います。

「横浜みなとみらい署暴対係」シリーズは、第1弾「逆風の街」
第2弾「禁断」3弾が「防波堤」いずれも文庫で発売されています。
ファンとしては嬉しい限り!

臥龍

師走の頃、諸橋と城島は仕事帰りに飲み屋に立ち寄って
一杯やろうと思っていたら、外でチンピラたちの喧嘩が
はじまった。
止めに入ったが大喧嘩になり全員検挙した。
この事件に嫌な予感を持った諸橋たちは、
横浜でひっそりと暮らす、昔気質のヤクザで二人の
情報屋でもある、神野のところへ向かう。
神野は関西系に関係するかもと匂わせるが、
肝心なことは隠しているようだった。
神野をたずねた翌日、関西の暴力団、羽田野組長、
羽田野繁が殺害されたとの連絡が入った。
神野の予感は的中。横浜に関西の暴力団が
やってくれば、大変なことになる!
諸橋はこの事件がどういうカラクリなのか
考えるが、どうにもつかめない。
その隙に、捜査一課は神野をマークし始めた。
捜査一課の方針にまったく納得できない諸橋たちは
独自に捜査を始める・・・・。

諸橋を良く思わない、監察官の笹本、さらに捜査一課の
連中たちとの軋轢を生みながら、必死で神野をかばう
諸橋たち。
事件の真相は?神野はどうなるのか?

信頼しあう男たちの絆、さらに意外な人物からの援護。
くじけそうになる諸橋たちを部下たちが励ます。
さらに、いつもはジョーク好きの陽気な城島がいつになく熱い!!
今野節炸裂!です!

『臥龍 横浜みなとみらい署暴対係』
著者:今野敏
出版社:徳間書店
価格:¥1,600(税別)

言葉のパワーが迸る!竹宮ゆゆこ「砕け散るところを見せてあげる」

はまさき、ラノベ系はあまり読まないのですが、
出版社編集さんの「絶対に損はさせません」
「絶対面白いです」との強烈オススメコメントに惹かれ、
読んだのがこの作品です。
新潮文庫nex『砕け散るところを見せてあげる』竹宮ゆゆこ著。

ほんとに、おっしゃる通り凄く面白かったです。

砕け散る

大学受験を間近に控えた高校3年生の濱田清澄は、ある日、
全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃した。
割って入る清澄だったが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、
蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。
自分は一体何をしたのか?
その日から、清澄は玻璃のことが頭から離れなくなる。
また、ある日清澄は学校の帰りに、公衆トイレで女子生徒の
怪しい動きを見かける。
清澄はどうしても気になり、女子トイレに入るとそこには
後輩の玻璃がびしょぬれで寒さに震えていた。
すぐにでも助けないと死んでしまう!
清澄は玻璃を必死で救いだし、自分の家に連れて帰った。
近所のクリーニング屋のおばちゃんに頼んで制服を速攻で
乾燥させ、何事もなかったように家に送り届けた。
この日から二人は急接近!
清澄は玻璃がいじめに遭わないか見張る日々。
しかし、二人の時間はいつも、玻璃の門限によって
中断される。どうしても家に帰らないと・・・・。
玻璃には誰にも知られたくない秘密があるようだった・・・・。

その秘密とは何か?
“死んだ二人”とは、誰か?
やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る・・・・。
清澄は、玻璃を最後まで守り通す覚悟をする!

今までの小説の概念を打ち砕く言葉のパワー。
そして、主人公の二人の熱い熱い想いにひたすら感動!
「ヒーローになる!」「お前を守る!」などなど、普通の
青春小説ならばくさいセリフのはず。でもこの作品には
この言葉こそふさわしい。

ラストまでぐいぐい読ませるパワーあふれる、青春ミステリ!

『砕け散るところを見せてあげる』
著者:竹宮ゆゆこ
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥590(税別)