大江戸科学捜査八丁堀おゆう、第9弾!「司法解剖には解体新書を」

江戸と現代を往来する、元OLの関口優佳・
通称おゆう。
江戸で起きた事件の謎を現代の科学捜査で
解き明かす!
めちゃめちゃ面白い時空探偵ミステリー。

現代では、コロナ感染拡大第2波が囁かれる中、
優佳こと、女親分・おゆうは、南町奉行所同心・
鵜飼伝三郎と源七親分とともに、鵜飼の上司・
戸山から内偵を依頼される。

前長崎奉行の配下だった、河村右馬助の死に
不審な向きがあるという。
おゆうたちが調査を始めると、ほかにも
同じ状況で急死していたものが現れた。
唐物商の平戸屋の主人だ。
もしかして、食あたりか・・・?
しかし二人とも医師の見立ては現代で
いうところの心臓麻痺で亡くなったらしい。
二人の死の共通項を調査しているところで
また新たに急死者が出た!

おゆうたちは毒殺ではないかと疑いを持つ。
そして、おゆうは東京へもどり、事件の
詳細を宇田川に報告。
当時の江戸にはない「毒物」が使われたのでは
という推測がたったが・・・・

杉田玄白、その弟子や漢方医のほか、
蘭学医が徐々に増えている背景の中、
毒殺事件の謎を追う、おゆうたち。
毒は何が使われたのか?それを突き止めるには
司法解剖しかないが、江戸時代は禁じられている。
果たしてそれが出来るのか・・・?

歴史の事実とフィクションが見事に融合。
さらにロジカルに解き明かされる真相に驚愕!
毒の正体と、一連の事件の黒幕は誰なのか?
など「謎解き」の醍醐味が味わえる。
安定した面白さでシリーズが積み上げられてゆく。

そして、いつもやきもきさせられるのは
おゆうと鵜飼と宇田川の三角関係は
どう転ぶのか・・・だ。
宇田川のおゆうに対する気持ちは何?
気になる気になる~~~。

ということで、大変面白かった。

『大江戸科学捜査八丁堀おゆう 司法解剖には解体新書を』
著者:山本巧次
出版社:宝島社
価格:¥780(¥709+税)

刑事・毒島シリーズ第1弾!「作家刑事毒島」

先に第2弾「毒島刑事最後の事件」を
読んでしまい、しまったと思ったのですが、
順番として良かったかなと・・・。
その毒島の犯人を追いつめる毒舌の
鋭さにすっかりはまってしまいました!

刑事を辞めた後、人気作家となった毒島。
しかし、刑事として優秀だった毒島は、
刑事技能指導員として警察に復職。
作家と警察官、二足の草鞋で忙しい日々を送る。

新人賞の選考に関わる、下読みを担当する
編集者が刺殺死体が発見された。
何度も新人賞に応募しては下読み段階で
振り落とされ、その編集者に恨みを
持つ三人が容疑者として浮上するが
捜査は難航する。
そこで捜査一課の犬養刑事は、作家の
毒島を訪ねるよう、新人刑事・
高千穂明日香に助言する。
【ワナビの心理試験】

編集者としてとびきり優秀だった
男が変死体で発見された。
警視庁捜査一課の犬養と高千穂らが
捜査を開始すると、殺害された編集者は
二人のラノベ作家とトラブルを起こして
いたことが判明する。
容疑者を二人に絞ったが鉄壁のアリバイがあり、
またしても捜査は行き詰まってしまう。
高千穂は、毒島の仕事場所へ向かう。
【編集者は偏執者】

エンタメ系の賞で最も歴史のある新人賞の
授賞式。あるベテラン作家は、今回受賞した
新人作家の受賞に最後まで反対していた。
しかし、出版業界を盛り上げるためということで
受賞を決めてしまった。
デビュー後に作品を発表できない未熟な
新人作家に厳しい発言をするベテラン作家。
そのベテラン作家の無惨な死体が
彼の事務所で発見される。
シュレッダーに巻き込まれた死体・・・
事故か殺人か?
【賞を獲ってはみたものの】

書評家気取りで、ブログで作家の作品をおとしめる女性。
作家に恋愛感情を持ち、ストーカーまがいの
行動を繰り返す女性。
作家希望の女性。ある作家の作品と自分の作品の
類似点を探しその作家に自分を売り込もうと必死だ。
そんな3人は、ある作家のイベントに参加した。
おまけにイベント後の打ち上げの会にこの3人が
抽選で当たってしまった。
しかし、その打ち上げはこの3人によって修羅場と化した。
その後、作家の死体が発見される。
【愛涜者】

毒島の作品のドラマ化が決まった。
しかし、毒島側はドラマ化に際し、
原作とはおよそかけ離れた内容に納得できず
抗議文を送った。
しかしドラマプロデューサーは抗議など
無視して撮影を始めようとした。
回答をよこさないテレビ側。
毒島は回答をするまで徹底的に抗議し続けた。
強硬な態度をとるプロデューサーと毒島との
間で疲弊する、ドラマ監督と脚本家・・・。
そんな中、ドラマプロデューサーの死体が
地下通路で発見される!
【原作とドラマの間には深くて暗い川がある】

今回は、出版業界のドロドロとした闇に
焦点を充てる。
出版業界の一番はしっこにいる書店員から
見ると興味深い内容で、とても面白かった。

自分を大物作家だと思っている勘違い新人作家や、
作家の作品を勝手に変えてドラマ化する
エゴの塊のようなプロデューサーなどなど
今回の登場人物たちも、エリート意識に踏み
固められ歪んだ自尊心の持ち主ばかり。
しかし、「殺人」は許されない。

毒島は皮肉と揶揄を含んだ毒舌で容疑者たちを
極限まで追いつめ、事件の真相を暴き、
犯人を特定する。

この容赦ない毒舌、「超」痛快!!

『作家刑事毒島』
著者:中山七里
出版社:幻冬舎(文庫)
価格:¥715(本体\650+税)

バチカン奇跡調査官シリーズ最新作!「秘密の花園」

藤木稟さんの人気シリーズ「バチカン奇跡調査官」
最新刊は、「秘密の花園」(角川ホラー文庫)。
アメデオ・アッカルディ、エレイン&ジュリア、平賀&ロベルト
が登場する三つの短編が収録されている。

アッカルディ大佐は息子から「父さんみたいな
りっぱなカラビニエリの軍人になりたい」と
言われ、とても幸せに感じた。
そんなアッカルディ大佐のもとへ、またしても
不可解な事件の捜査が舞い込んできた。
「ローレン」案件だと思ったが、息子のために
今回は自分一人で捜査をすることに決める。
汚職事件の真っただ中にいる、保険大臣が
殺害された。その殺人を自白したのはなんと
獄中にいる殺人鬼。自分の生霊が脱獄して
犯行に及んだと言っているらしい。
アッカルディ大佐は、ローレンの支援なしに
真相に辿り着けるのか!?
【生霊殺人事件】

ウオール街でいくつも会社経営を行うルッジェリの
第一秘書・エレインは、彼の命令で
ヨーロッパ貴族の血をひくセレブ・ジュリアの
身辺調査をすることになった。周到な準備を整え
ジュリアに面会することに成功するが・・・。
自らもセレブになるべく、人生の全てをかけて
磨き抜いた才能を身につけたエレイン。
彼女の計画は成功するのか?
【エレイン・シーモアの秘密の花園】

奇跡調査官のロベルトは、平賀の誕生日
を祝うために食事に誘った。
その帰り道、何かを探している少女に出合った。
聞けば。飼い猫が行方不明になったという。
泣き出した少女を放っておけず、二人も猫
探しに協力することに!
二人の優しい行動に心が癒される。
【迷い猫】

シリーズ中、人気のキャラクターが登場する短編集。
猟奇殺人事件に挑む、アッカルディ大佐・フィオナ
ローレン。不可能犯罪「ハウダニット」と
犯人あて「フーダニット」。謎解きの醍醐味が
味わえる、短編ながら読み応えあり。
エレインが多彩な仕掛けと駆け引きで
ターゲットに迫る物語は読んでいて「凄い」と
唸ってしまった。
二つの短編は、殺人であったり、誰かを
騙したりという人間の暗い部分が描かれているが
ロベルトと平賀の優しさが炸裂する章で心が
救われた。

『バチカン奇跡調査官 秘密の花園』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥792(本体¥720+税)

お葬式がミステリーに!?『葬式組曲』

天祢涼さんの『葬式組曲』読了。
本書は第13回本格ミステリ大賞候補作、
第1章の「父の葬式」は、第66回日本推理
作家協会賞短編部門の候補作になった。
一度文庫化されたが、今回再文庫化にあたり、
全面改稿されている。
著者の思い入れの深い作品。

20代の女性社長・北条紫苑率いる「北条葬儀社」。
妙な関西弁をしゃべる餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、
生真面目な新入社員の・新実。癖が強い社員
ばかりが目立つが、遺族からは絶大な信頼を
得ていた。
それは、彼らが故人の遺した謎を解明するという
意外な一面を持っていたからだ・・・。

父との確執で、実家から距離をとっていた
男性のもとに、父の死の知らせが届いた。
兄にすべてを任せようとしたが、
兄から「喪主は次男のお前が務めること」
それが父の遺言だと言われた。
なぜ・・・?
「父の葬式」

北条葬儀社の新入社員・新実は、生前相談に
来た女性から、祖母が亡くなった時、火葬は
したくないと言われていた。それからしばらく
あと、その女性から祖母が急逝したので、
葬儀を任せたたいと言われた。
彼女の条件は棺に拘ること、そして「火葬」
は絶対に避けたい事だった。
彼女はなぜ頑なに「火葬」を拒んだのか・・・・?
「祖母の葬式」

七歳の息子が亡くなった。父親は与党に所属する
政治家。与党は彼の息子の葬式を大々的に
執り行うと言った。政治家は党の言うことに従った。
ところが妻が反対した・・・。
通夜の前夜、霊安室で妻と息子は二人きりに・・・。
ところが、息子の遺体が消えた!
この夜一体何があったのか!?
葬儀を任された北条葬儀社は、遺体消失の謎に迫る。
「息子の葬式」

妻が友人の家で首をつって死んだ。
事件の可能性もなく、自殺と断定された。
しかし、夫は妻の死を受け入れられない。
それでも何とか生きていかなくてはと・・
夫は北条葬儀社に妻の葬儀の依頼をした。
そのころから、夫は妻の金切り声が聞こえる
ようになったという。
妻の死にまつわる謎を、北条葬儀社の面々が
解明することに・・・!
「妻の葬式」

北条葬儀社の高屋敷が亡くなった。
彼が亡くなったことで、これまでの
葬儀を振り返る・・・。
すると不可解な「謎」が浮かび上がる。
それぞれ、故人が遺した「謎」は解決
したはずなのに・・・・!!!
「葬儀屋の葬式」

一つ一つの短編には、人の死によって
起こる思いもよらない事件が描かれ、
そこには、緻密な「謎」が仕掛けられる。
心に残る4つのミステリー。
「天祢流」と呼びたくなる独特の世界観に
引きこまれる。
そして、思わず「ギョッ!」とさせる
ラストにまたしてもやられてしまう!
異彩を放つ!連作短編ミステリー。

『葬式組曲』
著者:天祢涼
出版社:文藝春秋
価格:¥825(本体\750+税)

赤ずきんの名推理再び!「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う」

青柳碧人さんの大人気シリーズ「むかしばなし編」
と「童話篇」。その童話篇の第2弾が発売!
赤ずきんちゃんの名推理が再び堪能できる!
「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う」読了です。
第1弾よりも面白さが増している。

ある目的のために再び旅に出た赤ずきん。
森で奇妙なものを拾った。
なんと、動く人形の腕。
それはピノキオという人形のものだった。
人間の男の子になりたいと願うピノキオ。

彼を助けるために赤ずきんは、親指姫一座へ
やってくる。
ところが赤ずきんは、その見世物小屋で
「キツネ殺し」の犯人として逮捕されて
しまう!!無実を証明できなければギロチン
刑が待っている!?どうする赤ずきん・・・。
【目撃者は木偶の坊】

難を逃れた赤ずきんとピノキオは、森の
中で七人の小人と出会う。彼らについて
ゆくと、彼らの家にいたのは、愛らしい
少女・白雪姫だった。
継母に命を狙われているらしいと知った
赤ずきんは、彼女を助けようとするが・・・。
赤ずきんの鋭い洞察力が、見えない悪意を
炙り出す!!
【女たちの毒リンゴ】

赤ずきんたちが次にたどり着いた街には
ハーメルン。その街には「ブレーメンの音楽隊」
がいて、「ハーメルンの笛吹男」の謎が街全体を
覆っていた。そして赤ずきんたちが着いた時は、
街はあるお祭りの準備中だった。しかしそこで
またしても事件に巻き込まれる!
「ハーメルンの笛吹男」がとんでもない展開に!!
唖然!絶句!こんなになるのかと膝を打った傑作
【ハーメルンの最終審判】

親指姫の憧れ、「三匹の子豚」が住む街へ
やってきた赤ずきん一行。なんとその町は
三匹の豚の兄弟が牛耳っていた。
そして、またしても事件が!
【なかよし子豚の三つの密室】

親指姫、ピノキオ、白雪姫、ハーメルンの笛吹男、
ブレーメンの音楽隊、そして三匹の子豚。
それぞれのお話は誰でも知っている。
それが予想だにしない物語へと繋がってゆく。

密室トリック、倒叙ミステリー、どんでん返し、
犯人あてと、本格ミステリー仕立ての童話集。
この展開、本当に度肝を抜かれる。

またしても「超絶ぶっ飛び」展開が待っている!
面白くて止まりませんよ!

『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う』
著者:青柳碧人
出版社:双葉社
価格:¥1,540(本体\1,400+税)

元女性警察官の執念!「三星京香、警察辞めました」

「女副署長」シリーズの著者・松嶋智佐さんの
「三星京香、警察辞めました」(ハルキ文庫)読了。
著者の松嶋智佐さんは、元警察官で白バイ隊員だった
経験を活かし、警察小説を描く。
警察内部の描写はリアルで読み応えがあります。

県警本部刑事部捜査一課の三星京香は
後輩の女性刑事が警察内部でパワハラを
受けていることに気づく。
その張本人は、なんと刑事部長だった。
後輩の弱みに付け込み、パワハラを
行っている現場に踏み込んだ京香は
刑事部長に拳を振り上げ、怪我を負わせて
しまう。
そして、十年勤め上げた警察人生に終止符を打った。

その後、幼馴染の弁護士・藤原岳人を頼り、
彼が勤めている県内有数の弁護士事務所で
調査員として働くことになった。
離婚した夫から娘の親権を得ようと、京香は
岳人に間に入ってもらっていた。

岳人が抱えている案件は、奇妙な事件だった。
被告人の男性が、たまたま通りかかった
被害者の男性にお金を貸して欲しいと迫り
拒絶され口論になり、近くにあった看板で
殴りつけ後頭部に怪我を負わせた事件だった。

被告人の情状酌量の証人として、親交のあった
女性に法廷で証言して欲しいということで、
打ち合わせをする予定だったが、その女性の
行方がわからなくなってしまったのだ。

京香は、その女性の行方を捜すことに。
相棒は警察嫌い、パラリーガルの女性だった。

元警察官だった京香は足を使って調査する
ことに慣れている。
女性を探す過程で、この事件の胡散臭さが
際立ってきた。

女性を見つけ、3人で戻ってくる。
岳人に連絡するが、既読にならない。
娘を岳人に預かってもらっていたため、
京香はまず岳人の家に向かった。
ところがそこで、岳人の遺体を発見する!
娘は別の場所で静かに寝息を立てていた。
京香は安堵と恐怖と凄まじい怒りを感じた。
岳人を殺したのは誰なのか・・・?

この胡散臭い事件は、複雑な人間関係が
絡み合い、とんでもない真相に繋がってゆく。
そして、同時に岳人は誰に殺されたのか?
という謎を追ってゆくことになる。

三星京香の、元警察官としての矜持が
幼馴染の死の真相を暴く!

警察の事件捜査の描写が圧倒的にリアル!
さらに殺人事件の謎解きは、犯人当ての
本格的展開。
警察小説としても、本格ミステリー小説としても
楽しめる、傑作警察小説!
どうか、シリーズ化して欲しい。

『三星京香、警察辞めました』
著者:松嶋智佐
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥770(本体\700+税)

思わず涙があふれてしまう….「君といた日の続き」

辻堂ゆめさんの新刊、タイムスリップ
ミステリー「君といた日の続き」(新潮社)読了。
初読みの作家さん。
ずいぶん前から気になっていっました。
中年男性と10歳の女の子との触れ合いに
心が癒されます。
でも、中年男性にはある秘密が・・・。

娘を喪い、妻と離婚したばかりの冴えない
中年男性の前に突然現れた、10歳の少女。

彼女は、なんと1980年代からタイムスリップを
してきた女の子だった。

中年男性は、10歳の娘を去年亡くしたばかり。
尋常ではないその喪失感に打ちひしがれていた。

中年男性は娘の代わりが現れたのかと思った。
コロナ禍の夏休みということもあり、
娘にしてやれなかったこと・・・
彼女が自分とやりたいことを短い夏の間に
二人は疑似父娘となって楽しい時間を過ごす。

やがて、中年男性の10歳の時の記憶と女の子が体験
してきたことが重なっていたことがわかる。
中年男性が10歳の時に起きた、同級生の女の子の
誘拐殺人事件・・・。

もしかしてこの女の子はその犠牲者ではないか?
死の間際、2021年にタイムスリップしたのでは?
と思った。しかし・・・・。
女の子の登場で、もう一度自分の人生を見直す男性。

そして、あるページをめくった瞬間飛び込んでくる
真相に思わず心をわしづかみされる!
その意味がわかった時、思わず号泣!

全編をとおして描かれるなんとも切ない寂寥感。
少女によってもたらされる男性の心の変化。
緻密な心理描写が胸を打つ。
絶望から新たな希望に繋がるラストが素晴らしい!

感涙のタイムスリップミステリー。

『君といた日の続き』
著者:辻堂ゆめ
出版社:新潮社
価格:¥1,760(本体¥1,600+税)

古書を守れ!神田神保町古書店主たちの闘い!「定価のない本」

本好きならば誰もが一度は
行ったことがある「神田神保町古書街」
終戦当時、日本の文化を守るために
GHQと熾烈な文化戦争が繰り広げられていた!?

終戦から一年後、神田古書街は復興の兆しを
見せつつあった。
古典籍を専門に販売する、神田神保町の
古書店主・正司。
ある日、懇意にしていた古書店主・芳松が
本の下敷きになり、圧死した。
家族ぐるみのつきあいだった正司は
事後処理をひき受ける。

だが、正司はその死に疑問を持つ。
事故死ではなく、殺人ではないか・・・?
事後処理中、正司は何者かに襲われる。
そこを、GHQのハリーという兵士に
助けられる。
彼は、正司に参謀本部のジョン・C・ファイファー
少佐のもとに行くように言った。
正司は、少佐から芳松はスパイの疑いが
あること、芳松を殺したのは妻のタカ
ではないかと告げられる。
少佐からタカを追えと支持を受け、タカの
実家へと行くが・・・。

この当時、古書店は厳しい状況にあった。
GHQの日本統治で国民は貧しい暮らしを
余儀なくされていた。
正司がGHQの指示に従ったのは、家族の
ためだった・・・。

だが、それは知らず知らずのうちに日本の
歴史や文化の喪失に手を貸す行為だった。

GHQの日本人に対する恐ろしい計画。
それを知った正司は、計画を阻止しようと
立ち上がる!

終戦直後の神田古書街の奮闘、
徳富蘇峰など実在の人物を配して
貴重な古書・古典籍を語らせるなど、
神田神保町古書街の歴史もわかる。

めちゃめちゃ面白い、古書店ミステリー。
本好きの人に超おススメ!

あの古書街にこんな歴史があったなんて!!

『定価のない本』
著者:門井慶喜
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥858(本体¥780+税)