スーパー警察官僚誕生!「DASPA吉良大介」

「巡査長真行寺弘道」シリーズの著者、
榎本憲男さんが新たなヒーローを生み出した。

国家防衛安全保障会議DASPA・吉良大介だ。
彼の信念は、「日本をバージョンアップする」。

DASPAは、テロをはじめ、国家の
非常事態に対応するため内閣府
に設置された新たな組織。

各省庁から生え抜きのエリートが
集められた精鋭チーム。

警察庁警備局出身の吉良大介は
DASPAの要となるインテリジェンス班
サブチェアマンに抜擢されたキャリアだ。
長身でイケメンで仕事が出来る。
申し分ないが、ただ一つの欠点は
女性に弱いこと・・・。

DASPAスタート直前に、中目黒の
マンションで白人男性の変死体
が発見され、強力な毒による殺人
事件と判明する。

事件の背後で何が起こっているのか?

吉良の視点で描かれる日本政府の現状。
それがあまりにもリアル。
日本の政治の問題点が解りやすく詳細に
語られ、私たちが日本政府に対し、
日々モヤモヤと感じていることが
この本を読むことで解るのではないかと思う。

純粋に日本を良くしたいと考え
その方法を模索する吉良の姿勢は周囲から
見れば浮いた存在だととられるが、
「日本をバージョンアップする」という信念が
強く響いてくる。

また、吉良と自由人・真行寺弘道巡査長が
言葉を交わすラストシーンは特に印象的。

文句なく面白い新シリーズ登場だ!!!

『DASPA吉良大介』
著者:榎本憲男
出版社:小学館(文庫)
価格:¥820(税別)

急転直下の展開の続きは?!『紅霞後宮物語 第十二幕』

後宮小説でいま一番ハマっているシリーズの
最新刊、「紅霞後宮物語第十二幕」を読みました。
十一幕のありえない展開の続きはどうなったのか?

文林の子を身ごもった、妃嬪・茹仙娥。
茹側の奸計にはまり、皇后の地位を
剥奪された小玉は、副官である鄭綵
(ていさい)とともに後宮最下層の
冷宮に送られた。

誰もが小玉らの過酷な未来を予想
したが、小玉らは全く頓着せず
働く決心をする。

冷宮をしきる万氏と距離を保ち、
小玉たちは、生き生きと働く。
小玉はもともとは最下層の出身だし、
戦場での生活は、この冷宮以上に
過酷だったのだ。

小玉は冷宮での生活で、今までの
自分を見つめなおす機会を得た。

一方、文林は小玉たちを救出
するため、賢妃・真桂のもとを
訪れた。小玉を信奉する
真桂は、彼女なりに小玉を救出
するための策を練っていた。

文林と真桂は、茹側を警戒しつつ
ある計画を実行に移す・・・。

これまで「娘子」「皇后」と
呼ばれていた関小玉。
皇后の位を剥奪され、皆から
「関さん」と呼ばれる。
何故かその響きがちょっと切なく
感じられた・・・・。

まだまだ波乱が続きそう!
十三幕が待ちきれない!

『紅霞後宮物語 第十二幕』
著者:雪村花菜
出版社:富士見L文庫(KADOKAWA)
価格:¥600(税別)

バチカン奇跡調査官シリーズ、短編集第5弾「三つの謎のフーガ」

「バチカン奇跡調査官」シリーズの短編第5弾は
ミステリー作品3編が収録。
短編だけれど、長編のような読み応え!
難解な謎に挑む、人気キャラたちに思わずニヤリ。

イタリアの次期大臣と目されている
人気の国会議員、ベルージェ氏が
雑誌のインタビュー中、何者かに
狙撃され亡くなった。
多数の目撃者がいる中での殺人。
しかし、誰も狙撃者を見た者はいない。
まるで透明人間による殺人のようだった。
この不可思議な事件の謎を解明するのは
イタリア国家治安警察隊のアメデオ大佐。
しかし、アメデオに解けるはずもなく、
またしても、「あいつ」の力を借りることに。
そして、一番苦手な心理捜査官・フィオナと
ともに事件の捜査を開始した。
【透明人間殺人事件】

チャンドラ・シン博士のもとに、親族の
叔母から連絡が入った。
「夫の遺言を誰も解読できない。解読
できないと息子が相続権を失ってしまう!
知恵を貸して欲しい!」と・・・。
暗号解読と言えば、ロベルトだ。
シン博士は、ロベルトに暗号解読を依頼する。
【ダジャ・ナヤーラの遺言】

休暇を一緒にどうか?と珍しく平賀の方から
ロベルトに誘いがかかった。
そして一緒に「蜘蛛男」が出没するという
村にやってきた。
壁を這って移動したり、車に張り付いたり
と人間ではありえない動きをするという。
平賀は本当に蜘蛛男がいるのではないかと
目をキラキラさせているが・・・。
【スパイダーマンの謎】

身勝手な人間の心の闇に斬り込んだ。
超難解なミステリーあり、
また、緻密な暗号解読の過程が面白く、
さらに親族の絆と愛情の深さに感動したり、
モンスターの意外な正体に驚愕したり・・・。

バラエティに富んだミステリー。
バチカン奇跡調査官シリーズの奥深さに
心が震えた。

『バチカン奇跡調査官 三つの謎のフーガ』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥720(税別)

海外サスペンスの醍醐味!「パーキングエリア」

ツイッターのTLで紹介されていた
テイラー・アダムスの「パーキングエリア」
(東京創元社)を読みました。

久々に海外サスペンスの醍醐味を
味わいました。

女子大生のダービーはクリスマスイブの前夜、
姉から「母、危篤」の知らせを受け、
大雪の中車を飛ばし母の元へ向かう。

しかし、天候は悪化し車は動かなくなった。
仕方なく途中のパーキングエリアで様子を
見ることにした。

立ち寄ったパーキングエリアには
すでに4人の男女が悪天候で
足止めを食らっていた。

ダービーは母のことが心配で、携帯が
繋がるところはないかと外に出た。
しかし、アンテナは立たずあきらめて
室内に入ろうとした時、偶然1台の車の中
に少女が監禁されているのを目撃してしまう。

この中に誘拐犯がいる!?
誰なのか?
天候は悪化の一途を辿り、誰もが
このパーキングエリアに留まるしかない。

少女の監禁を知ったのは、ダービー一人。
携帯は繋がらず、夜明けまで救援は
見込めない。頼れるのは自分だけ!
自分一人で助け出すことは出来るのか?

少女を助け出す!ただその一念。
ダービーの勇気には頭が下がる。

そして、狂気の誘拐犯の執拗さが
人間の恐ろしさを倍増させている。
海外サスペンスの面白さは、犯人が
禍々しいほどに恐ろしく描かれて
いることだと思う。

猛吹雪の夜、極限状態の中で
繰り広げられる、手に汗握る
ノンストップサスペンス!

サスペンスにふさわしい
スリリングな翻訳で読みやすく
とても面白かった!

『パーキングエリア』
著者:テイラー・アダムス/東野さやか(訳)
出版社:早川書房(文庫)
価格:¥1,080(税別)

シリーズ最高傑作と言っても過言ではない!「月下蠟人 新東京水上警察」

吉川英梨さんの「新東京水上警察」シリーズ
第5弾「月下蠟人」を読みました。

この作品は、シリーズの中で一番
心を揺さぶられました。

コロナ禍の東京。
警視庁五港臨時署強行犯係でも
皆マスク着用、感染リスクに戦々恐々と
している中、青海埠頭で死体があがったと
連絡が入り、刑事防犯課強行犯係・
係長の碇拓真は、部下の日下部と
共に現場へ向かった。

それは、不気味な光景だった。
東京湾に突き出す巨大なガントリークレーンに
死体らしきものが吊り下げられていたのだ。
慎重におろして見るとそれは蠟人形だった。
そして、その中から男性の刺殺体が発見された。
胸元には「996」という数字。
さらに、蠟人形の異様な製法・・・。
顔の完成度は完璧なのに、それ以外は
ざっくりと作ってある。
絶対にプロの仕事ではないだろう。

そんな謎めいた死体の身元を知るきっかけを
くれたのは、碇の恋人で人手不足を補う
ために助っ人に入った有馬礼子だった。

礼子のヒントから真相に迫る五港臨時署強行犯係。
しかし、捜査に集中すべき時、班長・碇の
様子がおかしい。日下部は、いつもと違う
碇の姿に不穏な空気を感じ取った。

一方、碇は今までにない重い十字架を背負う
ことに・・・・。

とにかく、冒頭からこのシリーズのファン
を驚愕させる展開!
どうなっているの!?
こんなのあり!?と思わず叫びたくなる!

そして蠟人形に固められた刺殺体の
事件の真相はあまりにも悲劇的!
さらに、碇が背負いこんだ問題も
この事件に多少なりとも関わってくるのだ。

同僚と結婚し妻の出産が間近い
日下部は、苦しむ碇を優しく気遣う。
日下部の人間としての成長が際立った本作。

事件の真相が徐々に明らかになる過程は
読んでいると胸が締め付けられる!
こんなひどいことが・・・・。

涙なくしては読めない今作。
ラストは号泣してしまった。

本当に、シリーズ最高傑作です!

『月下蠟人 新東京水上警察』
著者:吉川英梨
出版社:講談社(文庫)
価格:¥740(税別)

シリーズ第1作「悪魔と呼ばれた男」が面白過ぎる!

「心霊探偵八雲」シリーズが完結!
八雲ロスに陥っているファンの方々朗報です!
新シリーズ「悪魔と呼ばれた男」が
面白いんです!
絶対に読んで欲しい~。

アメリカで犯罪心理学を学び、
犯罪心理のスペシャリストとして、
警視庁に新たに設立された
特殊犯罪捜査室に呼ばれた、
天海志津香警部補。

天井から吊るされた女性の遺体。
凄惨で残忍な手口、さらに
首の裏には五芒星(ペンタグラム)
の刻印があった。
それは、ここ三年の間に起こった
猟奇殺人事件と酷似していた。
いまだ犯人の目星もつけられない。

天海は、バディとなる阿久津とともに
通称「悪魔」による連続殺人を追うことに。

阿久津は捜査一課のエースで、検挙率NO1。
しかし、謎めいた男で天海を持ってしても
彼の心を容易に読むことができない。
しかも阿久津はなぜか天海が小さい頃
体験した恐ろしい事件を知っているようだった。

次々と起こる連続殺人。
まるで警察をあざ笑うかのように猟奇的だ。
その事件の背後には国政をも揺り動かす
陰謀が潜んでいた。

時系列が入り乱れた場面展開に何度も
ハッとさせられるが、その上手さに
先へ先へと促され、いっきに読んでしまった。

また登場人物は、ほぼ、人間の面を
被った悪魔のようだ。
恐ろしい企ての数々に戦慄する。
誰が本当の悪魔なのか!?

ラストのどんでん返しは圧巻!!

シリーズ2作目「悪魔を殺した男」(講談社)
発売中。(本体価格1,750円)

『悪魔と呼ばれた男』
著者:神永学
出版社:講談社
価格:¥880(税別)

斬新!バラエティに富んだ傑作ミステリ4編「透明人間は密室に潜む」

一昨年の各社ミステリランキングの
上位に入った阿津川辰海さんの「紅蓮館の殺人」。
山火事で館に閉じ込められる特殊な
クローズドサークルと、館焼失までの
カウントダウンを背景に高校生探偵・葛城が
ロジカルな推理で殺人事件の真相に迫った
ストーリーがとんでもなく面白かった。

そして、昨年発売された同著者の
「透明人間は密室に潜む」(光文社)は
2020年の年末ミステリランキング
「本格ミステリ・ベスト10」で1位に輝いた!

まだ26歳!これからどんなミステリを
描いてゆくのかとても楽しみな
ミステリ作家さん。

透明人間病の発生により、透明人間
との共存を余儀なくされた社会で、
ある学者が透明人間病を治癒できる
薬を開発するというニュースが!
それを知った、透明人間の女性が
学者を殺害する計画を立てる。
透明人間であることのメリットと
デメリットの区別を巧に描き分け
読んでる方も非常にイメージしやすい。
そして、驚くべきは殺害のトリックとその動機!
やはり表題作が一番インパクトが強かった!

アイドルヲタクを巡る殺人事件の
裁判で、裁判員全員がアイドルヲタク
という設定!彼らが繰り広げる
推理合戦は、有罪・無罪の結論から
離れ、とんでもない方向へと動きだす。
笑いが止まらないロジカルミステリー。
【六人の熱狂する日本人】

先輩探偵がある調査で盗聴器を仕掛けた。
そこには、殺人事件の現場の生々しい
音が収録されていた。
超聴力を持つ後輩女性探偵と先輩探偵は
その音から事件の真相を暴こうとするが・・・。
音を頼りに謎解きする設定がとても
面白かった。
【盗聴された殺人】

豪華客船からの脱出というゲームに
招待されたプレーヤーが誘拐され、
閉じ込められてしまう。
プレイとしての脱出ゲームを楽しみながら
誘拐の謎解きと誘拐現場からの脱出!
二転三転する展開がワクワク感を倍増させる!
【第13号船室からの脱出】

多彩なミステリの設定が面白すぎる!
きっとストックがたくさんあるんだろうな~

次回作がとっても気になります。

『透明人間は密室に潜む』
著者:阿津川辰海
出版社:光文社
価格:¥1,800(税別)

天久鷹央長編シリーズ第6弾「神話の密室」

天久鷹央シリーズの長編第6弾
「神話の密室」を読みました。

今回は「バッカスの病室」
「神のハンマー」中編2編を収録。
神話にちなんだ2つの難事件。

酩酊状態で天医会総合病院へ
救急搬送されたミステリー作家。
アルコール依存症の診断を受け、
出入り不能な閉鎖病棟に入院。
しかし、アルコールが一滴もない、
閉鎖病棟で、なぜだか
泥酔を繰り返す作家・・・。
いったい何が原因なのか?
【バッカスの病室】

キックボクシングのタイトルマッチで
千人もの観客が見守る中、王者が
勝利の瞬間にリングで死亡した。
王者を襲った死の原因は何なのか?
【神のハンマー】

不可能な状況で起きた二つの犯罪。
天医会総合病院の副院長で天才的
頭脳を持つ女医・天久鷹央は、
部下の小鳥遊にこの二つの事件の
解明を委ねた。

果たして小鳥遊は、天久の期待に
応えることが出来るのか?

天久と小鳥遊の信頼関係は
ここまで深まった!!凄い!
鷹央さんは、小鳥遊さんをやっと
自分の右腕として認めたのかな~
このコンビ、本当にいい感じで好き。

そして、毎回驚愕させられる、
医学的謎の仕掛け。
素人では絶対に解けない!
だから、謎が解明されたときの
驚きは半端ない!
この2作品も「え~~~~ッ」と
思わず叫んでしまった。

なんかどんどん医学的謎が面白く
なってる気がする。
益々読むのが楽しみになってくる。

『神話の密室 天久鷹央の事件カルテ』
著者:知念実希人
出版社:新潮社(新潮文庫nex)
価格:¥590(税別)