超!ハードで暗黒な展開に驚愕!「スケルトン・キー」

道尾秀介さんの「スケルトン・キー」を
読みました。

いつもながら、鮮やかな逆転劇に驚きます!
しかも今回は、ハードなアクションシーンも
あり、息もつかせぬ展開にあっという間に
いっき読みしてしまいました。

児童養護施設で育った坂木錠也は、雑誌のスクープ記者を
手伝うアルバイトで生計をたてている。
時には、スクープをものにするため記者は錠也に危険な
ミッションを依頼する。
しかし、錠也は全く恐怖を感じない。
スリルある環境に身をおき心拍数を高めることで
「もう一人の自分」にならずにすむからだ。

こども頃、園で一緒に育った少女から
「あなたみたいな人をサイコパスと呼ぶ」と教えられた。

錠也は何とか自分を保ち、平穏な日々を送っていた。

ところがある日、園の仲間だった「うどん」から連絡が来て
その平穏な日常が壊れてしまう!?

「サイコパス」をテーマにしたミステリー。
人間の心の闇と、自分自身の利益しか考えない
身勝手な「サイコパス」の残酷さを描く暗黒の世界。
そして、計算しつくされた緻密なトリックと
たった一行で全てを反転させ、読み手をパニックに
陥れる!その手腕に今回も脱帽です!

暗黒だったけれど、ラストの優しさあふれる展開に
思わず涙が・・・・。

『スケルトン・キー』
著者:道尾秀介
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,500(税別)

面白さが半端ない!「人さらい」

久しぶりに、わくわくする警察小説を読みました。
翔田寛さんの『人さらい』(小学館)です。

乱歩賞受賞作の「誘拐児」や
WOWOWでドラマ化された『真犯人』
など、誘拐をテーマにした作品が目立ちます。

そして、新刊『人さらい』は『真犯人』を
超える傑作!

静岡県浜松中央警察署管内で、小学校4年生の女児が誘拐
された。父親は大手銀行の支店長だ。
身代金は1億円。
少女の命は!?事件は無事に解決するのか!?

冒頭から中盤までは、身代金を持った母親を乗せたタクシーを
必死で追跡する刑事たちの姿が描かれる。
次々と変わる犯人の指示に翻弄される捜査員たち。
綿密に練られた誘拐計画に、捜査員たちはなす術もない。
そして、事件は最悪の結末を迎えた・・・。
犯人によって爆破されたタクシーの中に、少女の遺体が!?

身代金は奪われ、少女を死なせてしまった!
これ以上ない失態に静岡県警はめんつにかけて、犯人逮捕を掲げた。
捜査員たちの地を這うような捜査で明るみになる
被害者の父親の所業。それゆえに深い恨みをかったの
ではないかと推察、次第に犯人像が絞られてゆく。

だが、県警の日下は違和感を抱いていた・・・。

リアル過ぎる警察捜査の描写に鳥肌がたった。
そして、最後の大逆転で真犯人たどり着く過程は、
ミステリーの王道だ!
最初から最後まで読者をあきさせない展開に
この作品の凄さをひしひしと感じた。

『人さらい』
著者:翔田寛
出版社:小学館
価格:¥1,500(税別)

最恐のホラーミステリー「凶眼の魔女」

単行本で読み、文庫化されたタイミングで読みました。
何回読んでも怖いな~。
幽霊も怖いけど、一番怖いのはやはり「人間」?

探偵・槇野&警視庁刑事・東條有紀が登場するシリーズ
第1作です。

探偵の槙野は、幽霊画が描いた画家を探してほしいと
ある画廊のオーナーから依頼を受けた。
その幽霊画は島根県のある神社にあったため、
彼は島根へと向かった。
そして、その神社で見た幽霊画のおぞましさに衝撃を受けた。
画家は松江にいると聞いた槙野はその足で訪ねた。
だが、画家に幽霊画の話をすると突然怒り出し、
追い出されてしまった。
東京に戻り、画廊のオーナーに調査内容を伝え、仕事は終わった。
だが、一年後その画家はなぜか神奈川県で自殺を図る。
画廊のオーナーと約束していたことで、絶対に「自殺」
ではないと言われ、槇野は画家の事件を調査することに。

東京多摩市では、女性ばかりを狙う、連続猟奇殺人事件
が起こっていた。
警視庁の東條有紀は、後輩と共に現場にいた。
眼を背けたくなるほどの遺体。
しかし、東條は眉一つ動かさず、遺体の状況を調べていた・・・。

何の関係もないと思われていた、画家の死と猟奇殺人事件。
このふたつの事件はどう繋がってゆくのか!?
幽霊画に隠された秘密とは・・・?

次々と提示される謎・謎・謎!
それが一つになった時、真相に繋がったかに見えたが!
ありえない、全く考えが及ばないクライマックスを迎える。

先へ先へと続きが読みたくなる、一気読み必至の
ホラーミステリー。

『凶眼の魔女』
著者:吉田恭教
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:¥787(税別)

迷宮入り事件に挑む!「赤い博物館」

大山誠一郎さんの「アリバイ崩し承ります」が
あまりにも面白かったので、他の作品を探していたら、
文庫の新刊台で見つけました!
「赤い博物館」(文春文庫)です。

少し内容を読んだら、何だか記憶が・・・
ドラマの原作本でした。
そういえば、ドラマは視たはず!!

警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」は、
警視庁管内で起きた事件の証拠品(凶器・遺留品)
・捜査書類など、一定期間の過ぎた物を所轄署から
預かり保管する場所。その中には、迷宮入りした
捜査資料もある。

巡査部長の寺田は大失態を犯し、この「赤い博物館」に
左遷された。
直属の上司は、博物館の館長でキャリアの緋色冴子。
頭脳明晰だと噂されている。
なぜ「赤い博物館」の館長なのかは不明。

そんな彼女は1日中、過去の捜査資料に目を通している・・・。

そして、寺田の仕事は所轄から回されてきた捜査資料などの
ラベル貼り・・・のはずだった!?。

ある日、冴子の命令で、迷宮入りした事件の
再捜査をすることになる。

コミュニケーション能力は皆無だが、ずば抜けた推理能力を
持つ緋色冴子が迷宮入りした捜査資料を読んで、
寺田に捜査を行わせる。
冴子の指図通りに動く寺田。果たして事件は解決するのか?

捜査資料を読むことによって、読者も冴子や寺田巡査部長と
同じ目線だ。しかし、冴子の指図の意味は、寺田同様に全く
わからない。(わかる読者もいるのだろうが・・・)
その後、寺田が捜査状況を報告すると、冴子は鮮やかな
推理で真相を暴くのだ。

その驚くべき設定!想像を絶するトリック!に
唖然とする・・・。

息をのむほど鮮やかな推理で解決される短編5編。

「アリバイ崩し承ります」同様に、面白過ぎます!

『赤い博物館』
著者:大山誠一郎
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥760(税別)

海外ミステリーの醍醐味!ヘレン・マクロイ「悪意の夜」

久しぶりに海外ミステリーを読みました。
ヘレン・マクロイ「悪意の夜」(東京創元社)です。
名探偵ウィリング博士シリーズ、最後の未訳長編。

夫を転落事故で亡くし、失意のどん底にあったアリス。
やっと落ち着き、遺品の整理を始めた。
夫のプライベートの机を整理したとき、引き出しから
「ミス・ラッシュ」という女性の名前が書かれた封筒が
出てきた。アリスの全く知らない名前だ・・・。
心がざわつくアリス。
そこへ、息子が美しい女性を伴い帰宅した。
息子は、はにかみながら彼女を紹介した・・・。
その名前は「ラッシュ」。

アリスは衝撃を受ける。彼女は何者なのか?
息子に近づく目的は何か?夫とはどういう関係なのか?

次々と押し寄せてくる、不安と疑惑。
息子を案ずるあまり、アリスの行動は常軌を逸してゆく!

そんな緊張と疑惑が頂点に達した時、ついに殺人が
起こる!!!

社会的に成功をおさめた愛する夫、
そして聡明な息子に囲まれ、何不自由なく生きてきた女性。
しかし、夫の転落事故と言う不幸に見舞われ、
さらに夫の不可解な遺品の影響で、心が疲弊してゆく過程の
心理描写が真に迫っている。

一級のサスペンス、また、名探偵による謎解きの醍醐味も
味わえる!海外ミステリーの傑作品です!

『悪意の夜』
著者:ヘレン・マクロイ/駒月雅子(訳)
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥940(税別)

今度は江戸にドローン!?「大江戸科学捜査 八丁堀おゆう5」

はまさきの大好きなシリーズ最新作が出ました!
「大江戸科学捜査 八丁堀おゆう ドローン江戸を翔ぶ」です。

いったいどうやって江戸の町にドローンを飛ばすのか?
ワクワクものです~。

江戸と現代を自由に往来する、元OLの関口優佳。
江戸ではおゆうと名乗り、いつのまにか女親分として
江戸で起きる難事件を現代の科学捜査で解決に導く。

江戸では大店を狙う連続蔵破り事件が起こっていた。
おゆうも、南町奉行所の伝三郎らとともに
張り込みを続ける毎日だ。
そして、とうとう強盗を追いつめた!しかし
まんまと逃げられてしまう!

なかなか事件の核心に辿りつけず、強盗には翻弄され
今回ばかりは伝三郎もおゆうも頭を抱えていた。

そんな中で、おゆうは証拠品を集め、現代に戻り
科学分析ラボの友人・宇田川に分析を依頼していた。
ところが、今回はラボの事情で分析が不可能に!

やがて宇田川がとんでもないことを言いだした!
「俺が江戸へ行って調べる!」と・・・・。
そして、宇田川は江戸へドローンなど最新機器を
持ち込み捜査に協力することに。

おゆうはハラハラしながらも、江戸での宇田川の
捜査ぶりを楽しむことにした。

おゆうと伝三郎、さらに岡っ引きたちの調べで
次第に見えてくる事件のからくり・・・。
やがて、事件の関係者として将軍家斉の側近・
林肥後守の存在が浮かびあがってきた・・・。

江戸で科学捜査!?とんでもない展開に毎回驚く!
そして、今回はドローンまでとびだした。
いかに飛ばしたのか?それは読んでみないと
わからない!!

面白さぶっちぎりの大江戸捜査ミステリー!

『大江戸科学捜査 八丁堀おゆう ドローン江戸を翔ぶ』
著者:山本巧次
出版社:宝島社
価格:¥600(税別)

2018年の江戸川乱歩賞受賞作「到達不能極」は今までにないスケール!

江戸川乱歩賞、昨年は受賞作なしという残念な結果でした!
今年は受賞作はあるのかとドキドキしながら発表を待っていました。

発表されたのは、斉藤詠一さんの「到達不能極」。
タイトルを見ただけで面白そうだ!と思いました。

南極観光ツアーの飛行機が何らかのトラブルで不時着してしまう。
何もない南極大陸でこの後どうなるかわからない観光客たち。
乗客の一人米国人男性が、近くにロシアの南極基地
「到達不能極基地」があるはずだと言いだした。

食料や救援物資を調達するため、日本人ツアーガイドを
連れ基地へと向かう。

同じ頃、日本の南極基地でもシステムトラブルが続発。
原因究明のため調査を開始したのだった。

第2次世界大戦末期、南極では、ナチスドイツが秘かに
ある実験を行っていた。

実はその実験のことを知る日本人男性がツアー客の中に居た。
このシステムトラブルと70年以上前のナチスドイツの極秘
実験と何の繋がりがあるのか?

過去と現在が一つに繋がった時、人類を滅亡へと導く
災厄が目覚めてしまう!!

切ないラブロマンスとナチスドイツの信じがたい実験。
南極を舞台に過去と現在が交差し、怒涛の展開が繰り広げられる!
面白さMAX!の冒険ミステリー!

こんな受賞作を待っていました!

『到達不能極』
著者:斉藤詠一
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)