小玉、激戦へと突き進む!「紅霞後宮物語第七幕」

大人気シリーズ「紅霞後宮物語」も本編は第7作目に突入!
毎回どんな展開になるのかドキドキワクワクで楽しみです。

さて、前回はいよいよ戦になる!小玉は皇帝・文林の
ために戦う覚悟を決める!
というところです。

第七幕は・・・・。

寛と康、二国との戦を強いられることになった宸。
その戦の先頭にたったのは、皇后・小玉。
稀代の戦上手と言われる小玉をもってしても、
簡単に勝てる戦ではない・・・。

寛の鍛え上げられた軍を相手になかなか勝機が見いだせず、
膠着状態に陥っていたのだ。

そんな小玉のもとへ康の密使がやってきた。
その密使は、小玉に和睦の条件として、
‘皇帝文林を倒し、小玉が女帝になるよう’
勧めたのだ。

それを聞いた小玉は、怒り心頭でぶっちぎれた!
「密使を捕え、首をはねよ!」
小玉の大義は、大家と民のためにあるのだ。
自分たち夫婦を侮辱するものは誰であろうと許さないのだ。

そして文林は、小玉のことをただただ心配していた。
自分が送りだしてしまった後悔・・・。
しかし必ず帰ってくると信じている。
小玉のいない後宮では、文林の息子・鴻は、小玉の甥・丙が
面倒を見ていた。
そしてもう一人、明慧の息子・誠も一緒だった。

だが、後宮ではまたもやきな臭い陰謀が渦巻いていた・・・。

様々な思惑の中で、小玉は必死に闘う!
文林の妻として!

そして第8幕へと怒涛の展開が続く!!!!

『紅霞後宮物語 第七幕』
著者:雪村花菜
出版社:KADOKAWA(富士見L文庫)
価格:¥600(税別)

子どもたちの心に触れる・・ミステリー「かがみの孤城」

このミス2018年版国内編8位にランクイン、
さらに本屋大賞にノミネートされた『かがみの孤城』を
読みました。

子どもたちのピュアな心の描写に切なくなる、
そんなミステリーです。

中学1年生のこころは、学校でいじめにあい、
心を閉ざし、不登校になっていた。
こころの両親は娘の態度にどう対応しようか?
悩む日々が続いていた。
いじめのきっかけはほんの些細な事だった・・・。

ある日、こころがいつものように自分の部屋に
引きこもっていると、部屋にある鏡が突然発光し始めた。
こころは恐ろしいと思いつつ手を触れてみると
鏡の向こうに引っ張られてしまう。
気がつくとそこは見たこともないお城のような場所だった。
そして、こころに声をかけたのは、狼の仮面をかぶった
髪の長いワンピースを着た女の子だった。
こころは恐ろしさのあまり、戻ろうとする。
だが、女の子はそれを許してくれなかった。

こころは、ある部屋へと案内される。
そこにこころと同じような年頃のこどもたちが集まっていた。
こころを入れると7人の男女。

狼の仮面をかぶった少女は、この城のルールをを説明し、消えてしまう。
その後自己紹介をし、なんとなくお互いを探り始める。

やがて誰もが学校に行っていない事を知る。
鏡が光っている限り、いつでも自分の部屋とお城を
行き来できる彼女たちは、少しずつ心を開いていく・・・。

現実の世界では理不尽ないじめにあい、心に深い疵を持つ。
読んでいると、たったそれだけの理由でいじめは始まって
しまうのか・・。
だから、心を傷つけられた子どもたちは自らの中に引きこもってしまうのか?
とものすごく考えさせられた。

それが今の子どもたちの世界。
だから、子どもたちは自分の居場所を確保するために必死で戦っている・・・。

こころたちにとって、鏡の向こうのお城は自分が素直になれる
唯一の場所、そして自分にはこんなに素敵な友達がたくさんいると
胸をはれる場所。
そんな過程を読んで、子どもたちの事を思うと胸に迫るものがある。

そしてこの作品は、なぜ子どもたちはこの城に集められたのか?
彼らの関係は何か?誰が何のために・・・?
様々な小道具を使って謎が張り巡らされている。
そのミステリーを解き明かすことで、城に集められた意味も判明してゆく。

読み終わった後、たくさんのことに気づかされる。
相手を思いやること。優しさとは?勇気とは?
本当の友情とは?子どもの心を救うとはどういうことか?

大人に大切な事を教えてくれた素晴らしい作品。

『かがみの孤城』
著者:辻村深月
出版社:ポプラ社
価格:¥1,800(税別)

竜崎伸也意外な一面に気づく!隠蔽捜査シリーズ第7弾「棲月」

待ちに待った、「隠蔽捜査」シリーズの新刊が発売されました。
シリーズ第7弾「棲月」です。

今野先生の人気シリーズの新作が続々発売でファンは嬉しい悲鳴です。

「棲月」では、竜崎の身辺がざわつきはじめます。

その日、竜崎は息子から留学について話があると言われる。
息子の留学に気をとられながら通勤し、署内を見ると、
珍しく署員の数が少ないことに気づく。
警務課長に問うと、電車が止まっているという。
事故なのか?だがシステムがダウンしたとの事だった。
私鉄が原因不明のシステムトラブル?・・・。

竜崎は、念のため生安でサイバー事件に詳しい
署員を鉄道会社に向かわせた。
だが、弓削方面本部長からクレームが入る。
さらに、銀行でもシステムがダウンしたとの
連絡が入った!
2件連続のシステムダウン・・・。
これは偶然ではない。竜崎はサイバー事件だと直感した。

ところが今度は警視庁の生安部長から強烈な横槍が入った。
誰に対しても、原理原則を貫く竜崎は平然と横槍をかわす。
謎のシステムダウン事件は、警視庁サイバー犯罪対策課へ
引き継がれた。
そして、その夜公園で男性の遺体が発見された。

原因不明のシステムダウン、そして謎めいた殺人事件・・・。
殺害された少年の周りを探ってゆくと、奇妙な「都市伝説」に辿り着いた。

「棲月」はミステリーの色の強い警察小説となっていて、いつもよりも
謎解きが楽しめる。
さらに、竜崎の危険を察知する能力には目を瞠る。
縦割りの警察組織を原理原則でぶった斬るシーンは
何度読んでも気持ちが良い。
胸がすっとする。
仕事のストレスなどどこかへ飛んでいってしまう・・・。

しかし竜崎の身辺にも変化が訪れる・・・。
それを知った竜崎の心の変化に自分自身が驚くシーンがある。
やはり竜崎は面白い。
清らかな正義感に署員の誰もが心酔している。
そのシーンにうるっときてしまった。

次回「隠蔽捜査」シリーズの新たな局面が楽しみで仕方ない。

『棲月 隠蔽捜査7』
著者:今野敏
出版社:新潮社
価格:¥1,600(税別)

新たな道尾ワールドにはまる!「風神の手」

朝日新聞出版から発売された、道尾秀介さんの
「風神の手」を読みました。

何だか、懐かしいような、切なくなるような
心に沁みる叙情豊かなミステリーです。

遺影専門の写真館「鏡影館」を舞台に数十年の歳月を経て
重なり合う、彼、彼女たちとひとつの事件の結末・・・。

ある事件を背景に、第1章「心中花」は、女子高校生が若い漁師に
淡い恋心を抱く。彼についた小さな嘘が、きな臭い事件へと繋がり、
二人の運命を変えてしまう・・・。
胸がドキドキするような、懐かしいような、切なくなるような展開。

第2章「口笛鳥」は、小生意気な小学5年生の男の子二人、まめ&でっかちが、
ある事件に巻き込まれてしまう冒険物語。
二人の友情と勇気をためす。なんとなく
映画「スタンド・バイ・ミー」を思わせる。

第3章「無常風」は、死を前にした老女が自らの“罪”を打ち明ける。
長い間の罪と葛藤からようやく解放される。

最終章「宵待月」は、各章の登場人物たちが、意外なかたちで集う。

何だろうこの二つの物語・・疑問に思い第3章を読んでいくと、
そんな疑問は吹っ飛ぶ展開。
関連がないかに見えた二つの物語は、
謎のピースの最後がぴたりとはまったように繋がるのだ。
なんだそういうことだったのかと膝をうちたくなる。
一つの作品でラブストーリー、冒険物語、そしてミステリーが楽しめる。
最終章を読んだ後の爽快感がたまらない。

「すべてのエピソードが伏線」と、各メディアで絶賛された。
今までにない道尾ワールドが広がる!著者の新たな代表作。

『風神の手』
著者:道尾秀介
出版社:朝日新聞出版
価格:¥1,700(税別)

ポーランドミステリーの衝撃!『怒り 上下』

海外ミステリーで、今年注目された‘ポーランドミステリー’を
読みました。
ジグムンド・ミオシェフスキ『怒り 上下』(小学館)です。

ポーランドのミステリーは初めて読みました。
度肝を抜かれる展開に絶句します。

ポーランド北部にある工事現場で白骨死体が発見される。
発見現場は、病院に続く地下の防空壕だった。
検察官のテオドル・シャッキは、その現場を見て
戦時中のドイツ人の遺体ではないかと考える。

しかし、検屍官の報告は眼を疑うものだった。
白骨化した遺体は男性で、10日前までは生きていたというもので
短期間に白骨化することはありえないという。
さらに調査を続けると、複数の人間の骨が入り混じっていた。

やがて、この男が生きたまま大量の排水管洗浄剤で溶かされ
殺害されたことがわかった。

テオドル・シャッキは人間を生きたまま溶かすその殺害方法に
殺害された男に対する怒り以上の何か恐ろしく異常なものを感じた。

これはただの殺人ではない・・・。
シャッキは必死で捜査しその骨の身元が判明する。
しかし犯人に繋がる手掛かりがつかめなかった。

またプライベートでは、高校生になる娘と衝突ばかり。
離婚し、新たなパートナーと暮らしても彼女の態度に
イラつくばかり。
そんな時、検察局に「夫が恐い」と訴える女性が
現れた。シャッキは女性の話を聞くが、虐待されているという
証拠もなくそのまま帰してしまった。
その後、部下の一人からその対応を責められ、シャッキは
女性の家を訪ねた。
そこには、瀕死状態で横たわっている女性と
小さな男の子が呆けたように座っていた。

自分のしでかしたことに責任を感じたシャッキは、
事件の報道をするラジオで自分のミスと検察官を
辞めると発表する。

しかしこの後、シャッキの身に思いもよらない
恐ろしい事件が起こってしまう!

なんと恐ろしいミステリー小説か・・・?
読み進めるごとに何かとんでもない恐ろしいことが
起こっているのでは?という予感。
しかも、ほんとに先が読めないのだ。
何がどうなっている?一体誰が犯人?
これは連続殺人?それとも復讐?だとしたら
誰が何のための・・・?
疑問ばかりが渦巻く。だから読まずにはいられない!

ありえない展開が衝撃的過ぎる!ポーランドミステリー

『怒り 上下』
著者:ジグムント・ミオシェフスキ
出版社:小学館(文庫)
価格::上下各¥770(税別)