奇想天外、面白過ぎて絶句!「奇想、天を動かす」

島田荘司さんの探偵「御手洗潔」シリーズにすっかりはまり、さらに、
この「奇想、天を動かす」(光文社文庫)があまりにも面白く、衝撃的で
島田作品の虜になってしまいました。

「奇想、天を動かす 吉敷竹史シリーズ」はほんとに面白かったです。
よくこんな奇想天外な事件を考えたなあと感心。いっきに読んでしまいました。

奇想、

時は平成元年、4月。消費税導入後間もないころ、
ホームレスとおぼしき老人が、ある店で消費税
12円分を払わなかったとして、女性店主と
もみあいになり、持っていたナイフでその
女性店主を刺殺した。
現行犯で逮捕された老人は、取調べで氏名さえ
名乗らず、完全黙秘を続けた。
取り調べをする刑事たちは、ぼけ老人と決めつけたが、
警視庁捜査一課の吉敷竹史は、老人を取り調べる過程で
彼に知性を感じる・・・。

吉敷はこの事件には何か裏があると感じ、
心無い上司に嫌味をたっぷり言われながら、
単独で捜査を開始する・・・・。

老人の過去を洗い出す内に北海道に繋がってゆく・・・・。

昭和32年1月、北海道、吹雪の中を走る列車内で
踊るピエロが出現!乗客たちの度肝を抜く中
ピエロはトイレにこもり、ピストル自殺!
だが、死体となったピエロは忽然と消えた。
同列車は、ある駅で轢断死体を発見。その轢断死体を
列車内に運び込んだ!
だが、その死体はいきなり立ち上がり、乗客たちを
恐怖に陥れた!
さらにそのあと、列車は‘巨人’に持ち上げられ
脱線事故を起こした・・・・。

これは本当に起こったことなのか?

吉敷が地道に捜査して行くと、どうもこの奇怪な事件は
本当に起こったことらしい・・・。老人とこの事件は
何か関係しているのではないか・・・?
さらにこの事件をモチーフににした小説が発見される!!

老人の正体とは?
ただの消費税殺人事件と思われていた事件の裏には、
過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図があった!

この壮大で奇怪なトリック!
しかし吉敷は執念の捜査で真相にせまってゆくのだ。

老人の過去が社会派のサスペンスタッチで描かれ、
さらに、トリックが解明される過程は本格推理タッチ。
この二つが見事に融合された傑作!
かなり前に描かれているが旧さを全く感じさせない!
斬新過ぎる設定とトリックに衝撃を受ける!

何をいまさら!と言われそうですが、
島田作品、超おススメです。

『奇想、天を動かす 吉敷竹史シリーズ11』
著者:島田荘司
出版社:光文社(文庫)
価格:¥667(税別)

意外なコンビで事件を追う!幕末の「相棒」?

五十嵐貴久さんの「相棒」(PHP文庫)がとんでもなく面白いです。

舞台は幕末!
幕末と言えば、坂本龍馬、新撰組!スター勢揃い!

なんと五十嵐先生、最強のコンビを生み出しました!

相棒五十嵐

時は幕末・・・尊王攘夷に大政奉還!
新撰組が暴れまくっていた京都・・・
そんな中、大政奉還を目前に控え、
徳川慶喜暗殺未遂事件が起こった!!
幕閣から犯人探索の密命を受けたのは、
なんと!!!ありえない!
坂本龍馬と新選組副長の土方歳三!?
水と油!犬と猿?!土方は我が眼を疑った!
しかし、幕閣は本気らしい・・・。
のんきな坂本は土方と会ってもは顔色一つ変えず、
土佐弁でマシンガントークを繰り広げてくる。
いらだちを隠せない土方は、いまにも刀を抜きそうになった!
だが、探索のために二人に与えられた時間は、わずか二日間!
いがみ合い、衝突しながら捜査を続ける二人が最後に行きついた人物とは?
そして龍馬暗殺の真相を知った土方は・・・!?

超まじめで紳士的な土方と土佐弁丸出しの坂本。
二人のかけあいはまるで漫才か!と突っ込みたくなるほど
面白い。
コンビ結成当初、土方は常に坂本の考え方や捜査の
やり方に文句ばっかり言っていたが、やがて
二人の間には信頼関係が生まれてくる・・・。
事件の行方も気になるが、魅力的な二人のおかげで
面白くて一気読み!
幕末維新のオールキャストでおくる、幕末ファンには
たまらない!傑作エンタテインメント、時代ミステリー小説。

『相棒』
著者:五十嵐貴久
出版社:PHP研究所
価格:¥743(税別)

「機龍警察」シリーズ初の短編集「火宅」

機龍警察」シリーズ初の短編集「火宅」を読みました。

表題作「火宅」ほか、「焼相」「輪廻」「済度」「雪娘」
「沙弥」「勤行」「化生」の8編。

どれもとても味わいある作品ばかり。「機龍警察」ファン
には垂涎の作品!面白いです!!

機龍火宅

「火宅」は、特捜部主任・由紀谷が、死の床にある元上司の
秘密に迫る!つけられたタイトルの意味が深い!

「焼相」は、キモノを身に着けた二人のチャイニーズマフィアが
児童教育センターに居た子どもたちを人質に立てこもった!
SITが呼ばれたが、過去の失態を恐れ突入をためらう中、
特捜の機龍兵(ドラグーン)が呼ばれる・・・。

「輪廻」は、武器密売組織と医療機器メーカーとの密会から、
特捜の機龍兵搭乗員・姿警部が、ある兵器のオプションの
可能性を指摘する。それは非人道的なものだった・・・。
近い将来、本当に起こるかもしれないと思わずにはいられない
恐さを感じた。

「済度」、特捜部に入る前のライザの彷徨・・・徹底的に
非道でクールなライザの姿がある。

「雪娘」は、ロシア警察時代の苦い思い出を胸に秘め、少女を
守ろうとする、ユーリの優しさが際立つ。

「沙弥」は、由紀谷が警察官を目指すきっかけとなった
エピソード。由紀谷の友を想う気持ちが胸に迫った作品。

「勤行」は、宮近理事官が己の仕事に改めて誇り
を見出すエピソード。宮近と城木のコンビの良さが
際立った作品。これはとても愉快な気持ちになった!

「化生」は、経済産業省の官僚が転落死した事件から、
特捜部と捜査一課・二課の合同捜査チームとの対立
が激しくなり、沖津特捜部長が窮地に陥る・・・。
疑獄事件捜査の末に鈴石主任が悪夢の未来を幻視する・・・。

至近未来警察小説、傑作の短編集!

『機龍警察 火宅』
著者:月村了衛
出版社:早川書房
価格:¥1,400(税別)

鮮烈!!本格ミステリー「星読島に星は流れた」

4月19日(日)今井書店グループセンター店で
島根県出身のミステリー作家、久住四季さんの
「星読島に星は流れた」(東京創元社・ミステリフロンティア)の
サイン会があり行ってきました。
久住さんは、電撃文庫「トリックスターズ」でデビュー。
「トリックスターズ」シリーズ、「ミステリクロノ」シリーズ、
「鷲見ヶ原うぐいすの論証」など、ライトノベル界では
正統派のミステリーを描いて注目されています。
この作品が著者初の単行本とのこと。
はまさきもサインして頂きました!(嬉しい!)

タイトルの素敵なこの作品、本格ミステリ好きにはたまらない設定!
そして、「満願」でこのミス1位を獲得された、
米澤穂信さんも絶賛されています!

星読島

アメリカ・マサチューセッツ、レイラタウンで、
家庭訪問医として働く加藤盤は、
天文学者サラ・ディライト・ローウェル博士が
主催する天文観測の集いに招待された。
その集いは、ネット上の天文フォーラムで参加者を
募集し、ローウェル博士がランダムに選び招待される。
そのため、毎年顔ぶれが変わるのだ。
加藤はそれほど天文に興味は無かったが、申し込んだところ
異常に高い倍率をくぐりぬけ、招待客となった。
その天文観測の集いは、ローウェル博士の孤島で開かれていた。
加藤のほかに招待客は、NASAに勤務する女性・エリス。
何度か招待されたらしい。スミソニアン博物館の代表として
招待されたアレク。陽気なニートのデイヴ、メテオライトハンターの
マッカーシー、少し陰気な女性・サレナ、コンピュータサイエンスの
天才少女・美宙(みそら)の6人だった。
孤島にある、天体観測所へと向かうとき、加藤はこの集いの
真の目的を知る。この孤島にはある秘密があったのだ!
招待客たちの間で静かに緊張が奔る中、滞在3日目に
一人の招待客が死体となって発見される・・・。
犯人はこの6人の中にいるのか・・・?
次第に疑心暗鬼に陥る招待客たち。
そこで、加藤は事件の経緯を推理することに・・・・。

美しい夜空に輝く星々が鑑賞できる孤島。
そこに集められた、星好きの人たち、
やがて起こる謎の殺人事件。それを推理する主人公・・・。
本格ミステリの要素満載の、ミステリ好きにはたまらない作品。

導入部分の事件を予感させる思わせぶりな描き方は、読者の心を
がっちりと掴み、物語の中にぐいぐい引き込んでいく。
また、明るく振る舞う加藤の翳りや、謎めいた美貌のローウェル博士。
加藤に絡む、天才少女・美宙のはかなさなど、登場人物の心理描写が秀逸!
謎解きだけでは終わらない奥の深さを感じる。
そしていつの間にか主人公・加藤の魅力に惹かれている・・・。

事件の謎を解いてゆく過程は、読者自身も加藤の
「なぜ」にシンクロする。
だが二転三転して辿りついた真相には衝撃がはしる!!

事件はつらいけれど、謎解きが為された後の
スッキリ感と登場人物たちが明るく前に
一歩ふみ出して行くラストには感動する。
著者のやさしさにあふれた作品で、
ミステリ小説を好きで良かったなあと思いました。
著者のあとがきに「宇宙に思いを巡らせるのが好き」
とありました。だから優しさを感じるんだな~
気持ちが前向きになれないとき、自分の好きな事を
してみるとも書いてありました。
私もちょっと落ち込んでいたことがあったけれど
この作品を読んで元気をもらったような気がします!

久住先生、サインをありがとうございました。
この後も素敵なミステリー作品を描いてください!

『星読島に星は流れた』
著者:久住四季
出版社:東京創元社
価格:¥1,600(税別)

今野敏さんの人気伝奇小説『鬼龍』が新版で発売!

中公文庫で発売中の『鬼龍』が3月に角川文庫でも
発売されました。

『祓い師・鬼龍光一』の原形となった主人公・鬼龍浩一が
活躍する伝奇ミステリー。

鬼龍

高円寺のアパートでつましく暮らす青年・鬼龍浩一。
奈良に本宮をいただく鬼道衆の末裔として、
秘密裏に依頼された「亡者祓い」を請け負っている。
「亡者」とは、人間の嫉妬・憎しみ・恐れなどありとあらゆる欲望や恐怖
といった陰の気が凝り固まったものだ。
その陰の気を祓うことが、鬼道衆・鬼龍浩一の真の仕事だ。

今回依頼されたテレビ局のお祓いも単純な仕事、
数ある依頼のひとつのはずだった。
ある女性タレントにとりついている亡者を祓った。
だが、それでは終わらなかった。テレビ局の一室が
結界となっており、そこが亡者の妄想の世界になっていたのだ。
鬼龍は一室にこもっていた陰の気を祓い無事仕事を終えた。

さらに、依頼は続いた。
今度は、日本橋の食品会社で起きた
異変の解決を頼まれたのだ。
鬼龍は、出向社員になり会社に潜入する。
なんと、その会社には女子社員を中心に想像を絶する
陰の気が渦巻いていたのだ!
ここから、鬼龍と最強の亡者との命を懸けた闘いが始まるのだ!

今野先生は、警察小説、アクション小説、ミステリー小説
など幅広いジャンルの作品が描いておられますが、
この、伝奇小説のジャンルは他のシリーズとひと味違った作風で
かなり面白いです。
「わが名はオズヌ」という伝奇小説があります。
修験道の祖・役小角(エンノオズヌ)が気弱な
男子高校生に憑依して悪を斬る!という痛快伝奇アクション。
はまさきはこの作品が大好きなんです!
この「祓い師」は、特に人間の欲望について描いていて、
他の作品とは一線を画しています。
珍しく、エロティックなシーンが多いですが、まったく
いやらしさを感じさせない描き方が凄いです。

古代史×アクション×美女!が楽しめる!
傑作の伝奇エンターテインメント小説。

『鬼龍』
著者:今野敏
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥560(税別)

シリーズ10作目は日本が舞台!『バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達』

バチカン奇跡調査官の第10作目が発売になりました。
タイトルは「原罪無き使徒達」です。
なんと帯の後ろ側にはバチカンシリーズの今後の
刊行予定が記されていて、バチカン奇跡調査官シリーズ
ファンには楽しみが増えますよ!

バチカン10

アメリカ人海洋冒険家が、日本近隣の海で遭難!
その時、奇跡体験をする!
熊本・天草で真夏日に大雪が観測され、天空に
巨大な十字架が浮かび上がった!というのだ!
さらに、海洋冒険家は近くの島に辿りつき、
美しい黒髪の天使に救われたと・・・。

バチカンの奇跡調査を担当する、平賀とロベルトは
その真贋を確かめるために天草に向かった。
平賀にとっては、祖父の故郷。
期待と不安を胸に抱き、平賀は天草に辿りついた。

その地は隠れキリシタンの信仰が色濃く残り、
さらに謎めいた怪異と「さんしゃる二、こんたろす五」
という暗号が伝えられていた。
この文が示す天草四郎の伝説とは?

今回の物語は、隠れキリシタン伝説と日本の妖怪伝説が
非常に上手くからみあい、日本のホラー小説調になっている。
だから、じわじわと背筋が寒くなる怖さ!
さらに、凄惨な殺人事件も起き、謎が謎を呼ぶ展開!
クライマックスは、ロベルトが命の危機にさらされる!
その時、平賀がとった行動に感動!
あの平賀が・・・という感じで胸に沁みる・・・。

「バチカン奇跡調査官」シリーズは巻を重ねるごとに面白さが
増す!
次回「バチカン奇跡調査官11」は6月頃の刊行!
短編集です。こうご期待!

『バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥680(税別)

胸に迫る展開!シリーズ第3弾「機龍警察 暗黒市場」

先日、月村さんの新刊「槐 エンジュ」を読んで
また「機龍警察」シリーズが読みたくなり、
未読だった、「機龍警察」シリーズ第3弾
「暗黒市場」を読みました。

「暗黒市場」のメインは、元ロシアの警察官
ユーリ・オズノフ警部。
機龍・バーゲストの搭乗員。

暗黒市場

ユーリ・オズノフ警部は、特捜部から
搭乗員としての契約を解除された。
特捜部内では衝撃が奔る!
同じ頃、栃木県のある山村の駐在所に
半死半生の男が倒れ込んできた!
無残にも常軌を逸した暴行の跡が見える。
しかし、助けようとした駐在所ごと、キモノの
鋼鉄の腕に固定された重機関銃で吹き飛ばされた。
身元不明の遺体は、警視庁組織犯罪対策部第5課の
安藤捜査員と判明した。
彼が命と引き換えに手にした情報は、機龍兵(ドラグーン)
に関する機密情報だった・・・・。

安藤捜査員の情報から、新型機甲兵装(機龍兵ドラグーン)が
市場に流出しているのではないかと疑念を抱いた特捜本部・沖津特捜部長は、
警視庁組織犯罪対策部第5課・渡会警視とともにブラックマーケット
壊滅作戦に着手する・・・。

かたやユーリ・オズノフ元警部は、昔なじみのゾロトフとともに居た。
ゾロトフは、ロシアの無頼漢としてもっとも畏怖される存在
‘ヴォル’だった。
ユーリはゾロトフと手を組んで武器密売に手を染めていた。

今回は、ユーリ・オズノフとゾロトフとの関係、
そしてユーリの過去、ロシア警察に裏切られ
傷心のユーリの姿が描かれている。
心を許した仲間に裏切られ、さらに恋人にも裏切られ、
信じる者を失くしたユーリ。
ロシアを逃亡し、二度と警察官にはならないと決めたユーリに、
沖津は新たな警察官としての任務を与えた。
それは、想像を絶する契約。
「機龍搭乗員」。しかし警察官としてのプライドを
捨てきれないユーリはこの契約にかける・・・・。
そして知った驚愕の真実・・自分を裏切った仲間たちは
皆、ロシア警察でトップの座についていた。

結局、自分は嵌められたのか・・・・
なぜ自分は裏切られたのか?
なぜ捨てられたのか?
ロシア時代に自分自身が巻き込まれ、警察を追われた事件について常に渦巻く疑問。

警察の隠れた汚職を決して許さなかった誇り高き警察官だったユーリの父。
ユーリは父のような警察官になりたかっただけなのに・・・。
理想に燃え警察官になった、ユーリの心に奥にある深い疵、挫折と苦悩が心に迫る!

クライマックス!ユーリが挑む新たな自分との闘い、
そして凄まじい機龍兵との闘いが、読み手の心を震わす!
極限まで自分を追い込み、命をかけたユーリに感動!!

圧倒的な臨場感で迫る!至近未来警察小説!

『機龍警察 暗黒市場』
著者:月村了衛
出版社:早川書房
価格:¥1,900(税別)

凄い!ミステリー短編集!『御手洗潔の挨拶』

先日、テレビドラマで放送された「天才探偵ミタライ」を
視て、すっかり御手洗潔が好きになったはまさき。

ミステリーが大好きと言いながら、
なかなか読んでこなかった「御手洗潔」シリーズ。

本格推理小説好きの方から入門用はこれです!
と紹介されたのが、「御手洗潔の挨拶」
短編集なので、読みやすく非情に面白かったです。

御手洗潔の挨拶

ある工場の社長が仕事場の隅のソファで殺害された。
犯人の目星はついているが、「数字錠」の壁が立ちふさがり
逮捕出来ないと言う。殺害現場である仕事場は内側からカギを
かけてあり、この仕事場へは数字錠がかかった横の通用口
からでないと入れない。さらに数字錠を解除できるのは
殺害された社長のみ・・・。「数字錠」

嵐の夜、マンションの11階から姿を消した男が、十三分後
走る電車に飛び込んで死ぬ。しかしその場所へは全力疾走
しても辿りつけない距離!そしてその首には絞殺の
痕もついていた!!「疾走する死者」

宝くじの当選番号を調べていた新聞記者の前に、
「紫電改研究保存会」の会長と名乗る男が
現れた。会ったこともない男だった。だが、
「紫電改」引き上げの時にクレーン船に
取材のセスナ機ぶつかり、操縦士が亡くなった
事件を持ち出してきた。そしてなぜかその男に封筒の宛名書き
をさせられた。さらにその後「ピサの斜塔救済員会」から
御礼状が届いた。いったい何が何やらさっぱりわからない・・。
「紫電改研究保存会」

御手洗の知り合いで富豪の青葉という男の息子が誘拐された!
誘拐事件に絡んだ、たこ焼き屋消失と青葉家の愛犬殺害!
さらに消失した店舗跡から見つかった妙な暗号・・・。
「ギリシャの犬」

奇想天外で不可解、複雑極まりない事件を、
御手洗潔が論理立てて解明してゆく・・・。
読んでいるときは、何がどうなって事件が起こり
どのように進んでいるのかさっぱりわからない。
物語の中でも、読者と同じようにいつも
おいてきぼりを食らっているのは
相棒の石岡(小説家)と竹腰刑事だ・・・。
この二人の感覚こそ、読者の目線。

だが、複雑極まりない事件が見事に解決されると
すっきり!なんだそういうことだったのか!!
この爽快感は何!?

特にこの短編集で衝撃的な展開だったのは、
「疾走する死者」「紫電改研究保存会」
ものすごく面白く、謎の解明後はすっきり!
「数字錠」は御手洗潔の人間味あふれる姿が
垣間見えてとても良かった!

これから続けて読むのが物凄く楽しみになるシリーズ!

『御手洗潔の挨拶』
著者:島田荘司
出版社:講談社(文庫)
価格:¥590(税別)