久々の一気読み!『百年法』上下巻。止まりませんでした。

面白いと噂には聞いていたけど、上下巻だしなかなか手が出ず・・・・。
本屋大賞ノミネート作品に上がったので読みました!
めちゃめちゃ面白かったです!「海賊とよばれた男上下」以来、久方ぶりに上下巻一気読みをしました。ほんとに止まらなかったです。
すごい設定に驚きましたが、その設定の緻密さと人間描写の素晴らしさでリアル感たっぷり!

アメリカに原爆を6個も落とされ、焦土と化した日本。
国としてほとんど成り立たなくなってしまった日本に、アメリカが施した不老化技術HAVIの導入。(諸外国も国民にHAVIを施し、50年法、80年法などの法律が定められていた。)
その施策により、国民のほとんどが不老化した日本。
しかし永遠には生きられず、HAVIの処置を受けたものは、100年後には死ななければない・・・・。それが〈生存制限法〉所謂百年法という法律だ。
2048年、実際に訪れることがないと思っていた100年目の‘死の強制’がいよいよ間近に迫ってきた。
しかし‘死の強制’に怖気づいた政治家たちは、なんとかその法律を回避できないかと考える。
そして日本共和国首相・鴻池は、選挙を控え、「百年法」の是非を国民投票で決めることを宣言する。
物語の中でも、日本の政治家たちのことなかれ主義的な場面が随時登場する。
そして現代の日本社会が抱える大きな問題である、政治・経済の停滞、少子高齢化(100年生きてりゃ当然だよね。)格差社会。これらが非常にリアルに描かれている。
しかしその中でも確固たる信念を持った男や女たちが登場し、悩みながら、100年という歳月を振り返りつつ、生きるとは何かを問う。人は終わりがあるから、必死に生きるのだ。
そして立ち上がった者たちが、いかにこの百年法と対峙していくのかが、この物語の途方もなく面白いところ。

長編だけど、長さを感じさせない物語の展開にほんとにいっきに読めます。

『百年法 上下』
著者: 山田宗樹
出版社:角川書店
価格:上下各巻¥1,800(税別)

「写楽」とは誰か!?謎に迫る美術ミステリー。『写楽 閉じた国の幻』

2011年度版『このミステリーがすごい』で国内編第2位にランクされた、島田荘司『写楽 閉じた国の幻』(新潮社)が先月文庫化されました。
‘写楽’とはいったい誰なのか?
浮世絵師‘写楽’の数々の謎に迫る、島田版‘写楽論’。
緻密な推理で解き明かされる、究極の美術ミステリー。

浮世絵研究家の佐藤は、一人息子を事故で失い、さらに家庭崩壊の危機にある。
佐藤は、ある肉筆画から興味深い発見をする。苦悩の日々の中、‘写楽’の謎にとりつかれていく・・・。

‘写楽’・・・。江戸時代わずか10か月あまりの間におびただしい数の肉筆画を残し、忽然と姿を消した謎の浮世絵師。‘写楽’と共にその時代を生きた文化人たちは、‘写楽’が何者だったのか誰一人知らない。
歴史上に遺されたのは‘写楽’の絵画のみ。‘写楽’については膨大なる「謎」のみが遺された・・・。

物語は、現代の佐藤が必死になって‘写楽’について調べていくエピソードと、江戸時代の‘写楽’にまつわるエピソードを交互に描いて、‘写楽’の謎に迫っていく。
粋な江戸の様子が生き生きと描かれている。現代の佐藤のエピソードとは対照的。
これがこの作品の特徴的なところで、読んでいるとなんとも不思議な感じ・・・。

歴史上の「迷宮事件」とされてきた‘写楽’の正体。
構想20年。膨大な資料から、ミステリー界の巨匠・島田さんが緻密な推理で導き出した‘写楽’とは?!

長編だけど、読み応えたっぷり!ミステリーの好きな人、歴史好きにはたまらない!‘写楽’が誰なのか知りたい人!ぜひ読んでみてください。凄く面白いですよ~。

『写楽 閉じた国の幻 上下』
著者: 島田荘司
出版社:新潮社
価格:上下各¥670(税別)

冲方丁の『光圀伝』が面白すぎます!

ミステリー小説の紹介と言いながら、いま本屋大賞ノミネート作品を読んでいまして、なかなか紹介できず!すみません!!!
今回も本屋大賞ノミネート作品からめちゃめちゃ面白かった作品を紹介します。

本屋大賞にノミネートされている、冲方丁さんの『光圀伝』(角川書店)を読みました。
750ページもあり読み応えたっぷり!時代劇ドラマでおなじみの「水戸黄門」の真の姿を描いた力作です。なんとこの作品、あまりの面白さに夢中になって読んでしまいました。

徳川家康の十一男で水戸徳川家の始祖・徳川頼房の3男として生まれた光國は、兄二人を差し置いて水戸家の世子となる。
長兄の竹丸は幼いころ天然痘にかかり死にかけた。次兄の亀丸は夭逝し、竹丸がどうなるかわからない状況で、光國は当時の将軍・家光から直々に世子として認められたのだ。
子どもの教育に非常に厳しかった父親は、光國に対して特に厳しいお試しを課した。
しかし光國はその厳しいお試しに、‘俺は世子だ’と自分に言い聞かせ徹底的にやり遂げる。
そういう育てられ方をすれば、当然気性は激しい。
兄を死に損ないと言い放ち、常にライバル心を燃やす。しかし、兄・竹丸はそんな弟の激しいライバル心などどこ吹く風・・・。そのクールさに憎しみさえ覚える光國。
だが、光國も12歳の時兄と同じ天然痘に罹る。
隔離され死の恐怖に怯えながら苦しむ光國を見舞ったのは、兄・竹丸だった。
兄の優しさに触れた光國は、次第に兄に心を開く。
長じて光國が日々苦しんだのは、兄がいるのになぜ自分が世子なのか・・・。
それは不義ではないのか?!。そんな思いに囚われ、光國は10代の頃はりっぱな傾奇者。
水戸家の世子とわかっていながら、その身分に恐れおののく光國。
そして兄に甘えるのだった・・・・。

冲方さんの描いた光國が人間的にあまりにも魅力的。
泰平の世に向かい、戦のない世で武士はどうあるべきか・・・。
文武両道というけれど、光國は桁違いにすごい。将軍・綱吉が嫉妬するのもうなずける。
光國の最大の目標は、愛する兄を差し置いて自分が世子になったことで、捩じれた‘不義’なるものを‘義’に戻すこと。その決心とは当時の誰もが思いもよらなかったことだった・・・。

ドラマだけでしか知らなかった、天下の副将軍・水戸光國の真実の姿がドラマティックに描かれた、胸が熱くなる凄く面白い歴史大河小説です。

『光圀伝』
著者: 冲方丁
出版社:角川書店
価格:¥1,900(税別)

今野敏先生の『潜入捜査』シリーズが本の学校に全巻そろいました!

今野先生の初期の傑作、『潜入捜査』シリーズが、7日に新刊の『終極』が発売になり、全6巻完結しました。
本の学校今井ブックセンター・はまさきおすすめミステリー平台にコーナーを作りました!
最新刊の完結編『終極』はサイン本も販売しています。
サイン本は本の学校今井ブックセンターのみで販売中です。早い者勝ちですよ~。
こんな感じで展開中!!!
『潜入捜査』シリーズは、警視庁の元マル暴刑事・佐伯涼が拳銃も警察手帳もない状態で、環境犯罪研究所へ出向させられる。
古代拳法の使い手でもある佐伯は、研究所の上司・内村所長の命により、産廃不法投棄、リゾート違法開発、密猟、原発などヤクザが支配する場所へ囮捜査で潜入する。
ヤクザに家族を奪われた佐伯は、ヤクザ殺しもいとわない。行き過ぎた捜査がこの研究所への出向となったのか?
しかし、内村所長の命は、佐伯のヤクザへの怒りを解き放つ。
クールで何を考えているのかわからない内村所長と熱い血をたぎらせた佐伯のコンビは読んでいてかっこいいと思ってしまいます。
しかも、今野先生のアクションシーンの描き方はとても迫力があり、スカッとします。
痛快アクション警察小説!面白いです。
シリーズ完結記念、版元の実業之日本社が作成した、応援フリーペーパーです。
これも同じコーナーに置いています。
裏面は先生のへのインタビューがばっちり掲載されています。
今野ファン垂涎のフリぺです!!
『潜入捜査』シリーズ全6巻
著者:今野敏
出版社:実業之日本社
価格:¥各600(税別)

『脳男』の著者が描く、ひと味違う警察小説『刑事の墓場』

タイトルを見て驚いた!『刑事の墓場』って・・・・。そのタイトルでついつい読んだら面白かった。
ほんとにひと味違うんですよ!
なんてたって著者は『脳男』という衝撃のミステリーを描いた、首藤瓜於さん。

警察組織からの落伍者たちを飼い殺しにしていると噂される動坂署。そこは警察で不祥事を起こし、表だって処分できない警察官のたまり場『刑事の墓場』と呼ばれていた。
だからそこにいる面々は一癖も二癖もある、一筋縄ではいかない、変人ばかり・・・。

あまりにも意外な転任に腹が立ち、不貞腐れて署内で寝泊まりする雨森は、この転任ですっかりやる気をなくしている。
ある日、雨森は、たまたま聴取した些細な傷害事件の被害者である女子大生の部屋を訪ねて死体を発見する。
開署以来初めて捜査本部が置かれたが、主導権はあっさり本部に持っていかれてしまう。
だがここからの雨森以外の動坂署の面々の動きはすさまじかった!
これまで、署長以下やる気があるのかないのかわからない署員だったのに、彼らはとうとう正体を現したのだ・・・・。
雨森が唖然とするほどに署員が優秀な動きをみせるは、動坂署に隠されたある秘密(?)を守るためだった!?
本来の刑事のとしての本分を取り戻した雨森は、蝶堂とコンビを組んで捜査を開始。
そのスリリングな展開は、警察小説の王道を行く。
果たして、彼らは本部を出し抜くことが出来るのか!
ラストはあまりにも意外!?とにかく傑作です!

『刑事の墓場』
著者: 首藤瓜於
出版社:講談社
価格:¥724(税別)

「心霊探偵八雲」シリーズの著者が描く、ピュアな物語『イノセントブルー』

大人気のホラーミステリー『心霊探偵八雲』シリーズの著者、神永学さんが描いた、最新刊『イノセントブルー』は、ハートフルな物語。
『心霊探偵八雲』シリーズは、物語自体はホラーミステリーということで結構恐いですが、根本のテーマは‘愛’だと思います。家族の絆、友情、そして男女の愛。
今回描かれた『イノセントブルー』は、‘前世’をテーマにした、ホラー色の薄い、人間再生の物語。

大学生の青年・悠人は、毎日同じ夢を見ていた。
あるとき、夢に出てくる女性がずっと昔実在したことを知る。そして自分の前世に関係しているのではと思う。そんなとき夢に出てきた女性に出会う。悠人は運命の再会と信じ、その女性につきまとう。
ペンションのオーナー・森川は海辺で倒れていた男を助ける。
自分のペンションに連れ帰るが、彼は妙な事を言う。「あなたの前世を見せてあげます・・・。」と。
彼の名は才谷梅太郎。不思議な男だが、森川は妙に懐かしく感じる。
悠人にしつこくつきまとわれた女性・千里は、悠人から逃れペンションへとたどり着く。
そこで森川と出会った千里は、懐かしさと安堵感を感じる・・・。
落ちぶれた元会社社長、医者としての本分を忘れた、病院院長らが何かに導かれるようにこのペンションに集まってきた。才谷は彼らに前世を見せると言う・・・。

現世と前世を交互に描き、苦悩して現世を生きる者たちへ生きるとは何かを気づかせる・・・。
心がホッとする、ピュアでハートフルなストーリーです。

ラストの才谷の正体が意外!?

『イノセントブルー 記憶の旅人』
著者: 神永学
出版社:集英社
価格¥1,300(税別)

とても感動しました!『ふくわらい』西加奈子

ミステリー作品ではありません。すみません!
本屋大賞ノミネート作品でとっても感動した作品です。
すごく面白く、さらに読み終わったとき、とても幸せな気分になり、黙っていられないほどです。
西加奈子『ふくわらい』朝日新聞出版です。

主人公の女性の名前は鳴木戸定。
父親がマルキ・ド・サドが好きで、それをもじって名づけられた。
小さい時から文字に興味を持ち、さらに母親から与えられた「ふくわらい」の魅力にとりつかれ、人の顔を見ると頭の中で「ふくわらい」をしてしまう定。
人の顔をじっと見つめてしまうので、学校ではクラスのみんなから気味悪がられていた。
子どものときに母親が亡くなり、変り者の父親に育てられる。
父親は旅行好き。だが、旅行先は観光客など行かない辺境ばかり。その土地の民族と関わり、その人たちと同じことを体験してみたり・・・・。
子どもに過激な体験をさせたとして、父親は学校や教育委員会、テレビなどで非難されたりした。
でも定は子供心に父親の確かな愛情を感じていたし、父親が好きだった。
そして、母親代わりの家政婦にもとても愛されていた。
定は変わった愛情の中で育ったが、心は無垢なまま大人になったのだった。

書籍編集者になった定は、その不気味な癖から、会社でも異質の空気を醸し出していた。
だが、気難しい作家でも真っ向から向き合い丁寧に応対するので、次第に皆から一目置かれるようになる。
ある日、ちょっと変わったプロレスラーの連載を本にするという話が定のもとへ舞い込む。
前任者からは、鬱病の年寄りのレスラーだから扱いが難しいよ。と釘をさされるが、定はそんなことは気にしない。作家の書く文章が好きだし、理解しようとする。
そして初めて会ったそのプロレスラーの顔を見たとき、定は衝撃を受ける。
彼女が理想とする、ふくわらいの顔がそこにあったからだ。
定はこのうつ病の年寄りプロレスラーの顔に心を奪われてしまう・・・・。

変わった名前、変わった癖で子供のころから気味悪がられていた定。
しかし彼女のひたむきさ、素直さに触れると誰もが幸福な気持ちになる。
後輩から恋愛の相談を受けたとき、「私はそういった心の機微にうといので、何も言えなくてごめんなさい」と素直に告白するシーンや、気難しい作家が、晴れないと小説が描けないと言えば、どこかの僻地で覚えた晴れ乞いをしたり、雨が降らないと描けないと言えば、雨乞いをしたり・・・。
周りから見ればバカなこだと思うけど、定は必死に気持ちに応えようとする。
その姿に感動する。とても気持ちよくなる。定みたいな人がいればなああ~と思ってしまう。
こういう作品はあまり読んだことがないはまさき。
定の思い、作者の想いがストーレートに伝わってきてほんとに感動しました。
とても素敵な作品。おススメです。

『ふくわらい』
著者:西加奈子
出版社:朝日新聞出版
価格:¥1,500(税別)

「女性秘匿捜査官」ハラマキシリーズ最新作「エリカ」の展開に仰天!

瀬戸朝香主演でドラマ化され大人気シリーズとなった、吉川英梨「女性秘匿捜査官・原麻希」シリーズ。
待ちに待った最新作が出ました!!
今回のさらなる展開にもうくぎつけです。

前作「マリア」で、史上最強の‘犯罪脚本家’である背望会のリクルーターを逮捕するという特命を受けたハラマキは、そのチームの上司であり、ハラマキの暴走に理解を示す、伊達警視と部下でハラマキの熱狂的ファンと自称する、茶谷とともに捜査を開始。
しかしハラマキは捜査開始早々、無謀なカーチェイスで大怪我をする!
家族にも心配をかけるが、走り出したら止まらない、ハラマキ。
そんな彼女のもとへ、河川敷でリクルーターの自殺体があがったとの連絡が入る。
他殺を疑い、捜査を続けるマキ。
そこへ、テロ集団背望会のフォロワーを名乗る「続・背望会」からアゲハの釈放を要求する脅迫メールが届く・・・・。
「エリカ」は、のっけから、カーチェイス、続背望会の脅迫、エボラテロ、などなど、まるでハリウッドのアクション映画のような展開だ。
さらに死んだリクルーターをたどる内に、リクルーターの本当の姿が浮かびあがる。
誰もが予想だにしない展開。
調べれば調べるほど危険な場所へと誘導されるハラマキ。
事件の真相が明らかになったと思われたが・・・・・!
奈良県警で出会った頼もしい助っ人、吾川刑事も登場し、シリーズ一番の面白さです!!

『エリカ 女性秘匿捜査官・原麻希』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社
価格:¥562(税別)

「隠蔽捜査」シリーズ初の短編集『初陣』が文庫化です。

「隠蔽捜査」シリーズ初の短編集『初陣』が文庫になりました!
原理原則の男・竜崎伸也と警視庁刑事部長を務める、伊丹俊太郎との絆が描かれた、8編の短編を収録。
はまさき、この巻結構好きです。
短編なのに、二人の友情の深さが感じられる。たぶん「にやにや」しながら読んだと思う。

警視庁刑事部長を務めるキャリア・伊丹俊太郎と大森署の署長、竜崎伸也は、幼馴染で同期だ。竜崎は、警察庁長官官房総務課課長だったが、家庭内で不祥事が

起こり、そのせいで所轄の署長に格下げされたのだ。
キャリアが所轄の署長なんてありえない!伊丹はそう思っていたが、原理原則の男・竜崎はなんとも思っていない。
彼は彼の仕事をするだけなのだ。
伊丹は、そんな竜崎につい頼ってしまう。伊丹は刑事部長という立場上、自分ではどうしようもなく困ったことがあると、竜崎に電話をしてしまう。
竜崎の愛想のない一言にどれだけ救われただろうか・・・。

私自身もいろんなことで迷ってしまう。同僚の顔色を見て、意見をいったりしてしまう。すごく嫌な気持ちになる。
でもそんなとき、伊丹と同じように、竜崎の言葉を読むと、不思議とすっきりする。
何を悩んでいたのだろうと・・・・。ふっきれてしまう。

物語の中の二人の絆に感動し、竜崎の言葉に励まされる。
警察小説、ミステリーの枠を超え、人としてどうあるべきか、どう動くべきかを教えてくれる、すごい作品。

今回は、二人の知られざる過去も描かれて、「隠蔽捜査」シリーズをさら深くに楽しめる作品集です!

『初陣 隠蔽捜査3.5』
著者:今野敏
出版社:新潮社
価格¥550(税別)