「アナザーフェイス」シリーズ最新刊「高速の罠」は父子の絆を描く!

堂場瞬一さんの「アナザーフェイス」シリーズ6巻
「高速の罠」を読みました。

いやいや、面白かった!
はまさき的には、シリーズ中で一番面白かったです。

高速の罠

前回の事件で銃撃されながらも、九死に一生を得た大友刑事。
長野の実家で療養中。父を訪ねに高速バスに乗った鉄の
息子、優斗は移動中に忽然と姿を消した。
誘拐!それとも事故なのか?
優斗が行方不明の最中、さらにバスの大事故が発生!
混乱を極める難事件に大友鉄は療養中の身ながら
捜査に加わることになる!

県をまたがる高速道路での事件。
長野、埼玉ふたつの県警同士の縄張り争いに
巻き込まれながらも息子を捜索する大友。
やがて、ドライブインのトイレの外の建物の
4階にガムテープで手足を拘束された優斗を発見!
ほっとしたのもつかの間、鉄は優斗に事情を聴いた。

優斗は、バスの中で片足を怪我し、松葉つえをついた
若い男と知り合いになった。
トイレのときに松葉つえで歩くのは不安なので
つきそって欲しいと頼まれて、一緒にトイレに
いったあと、記憶が無くなり気が付いたら
ガムテープでぐるぐる巻きにされていたという。

大友はその男がなんとなく気になった。
そうこうしているうちに、優斗が乗っている
はずだったバスが大事故を起こし負傷者が
出たとの連絡が入った。

鉄は、息子の拉致監禁と高速バスの事故に何らかの
繋がりがあり、松葉つえの男がそれに関係している
のではないかと推理した。

身体はまだ本調子ではない、さらに銃撃された後の
PTSDの症状も現れる。だが息子を危険に
さらした事件は許されない。
だが、県警同士の小競り合いで気を使いたくない・・・。
悶々と悩んでいたところに、後山参事官から
捜査に合流しろとの命令が出た。

大友は捜査を進めるうちに、このバス会社が
8年前に高速道路で大事故を起こした事を突き止める・・・・。

今回の作品、いつも以上にミステリーとしての
面白さが際立っている。
ばらばらに見えたピースがどんどん集まってきて
全体像が見える・・・見事なまでにすっきりとした謎解き。
さらに父と子の絆がテーマにあり、悲しく切ない
真相に胸を打たれた。

やっぱりこのシリーズ、一番好きです。

『高速の罠 アナザーフェイス6』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥680(税別)

乱歩賞作家・下村敦史氏の最新刊「生還者」

[昨年、第60回江戸川乱歩賞を受賞した、下村敦史さんの
受賞後第2作目「生還者」を読みました。
乱歩賞受賞後に続けて2作品を発表!
残念ながら、受賞後1作目の「叛徒」は未読です!
近々読もうと思います。

「生還者」は、冬山を舞台にした山岳ミステリーです。

乱歩賞受賞作「闇に香る嘘」は全盲の老人が主人公で
テーマは中国残留孤児。
「叛徒」は警察小説で通訳捜査官が主人公、家族を巡る贖罪がテーマ。
作品ごとに全く毛色の違う作品を発表される下村さん。
乱歩賞9回挑戦という経歴は、アイディアがたくさんあると
いうことで、次々と斬新なミステリーが発表できるんですね!凄いです。

生還者

世界第3位の標高を誇る、カンチェンジュンガ山で大規模な雪崩が発生した!
4年前に恋人を山で亡くした主人公・直志の兄は、喪失感から
登山が出来なくなっていた。だが、兄は突然この山に登り、
雪崩で命を落としたのだ。
兄と同じ山岳部出身の直志は、兄の遺品のザイルが何者かによって
切断されていたことに気づく!兄は事故死ではなく、
誰かに殺されたのかもしれない・・・?
直志が疑惑を抱いたころ、そのカンチェンジュンガ山から相次いで二人の男が
奇跡の生還を果たす!だが、彼らは全く逆の証言をする。
どちらが真実を語っているのか?
兄の死の真相を突き止めるために、直志はカンチェンジュンガ山に
登ることを決意する!

生還した二人の男の証言が全く食い違ったため、ニュースに発展!
直志は女性記者とともにその謎を探る。

兄に対する直志の微妙な心の動き、女性新聞記者、また疑惑の証言をした
男性の心の葛藤など、緻密な人間描写が活き物語が盛り上がってゆく!

さらにミステリの要ともいえる謎の仕掛けの上手さ!
そして謎の解明とその奥にある真実に驚愕する!
そう、表の真相とさらにその奥に隠れていた人間の本質が
現れた時、この作品の本当の面白さがわかる!

今年のこの夏の暑さ!耐えられない!
けれど、凍てつく冬山の描写がリアル!
さらに、雪崩の描写は圧巻!
暑さが吹っ飛ぶ作品です。

『生還者』
著者:下村敦史
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)

仰天ミステリー第2弾ミニフェア開催中!

本の学校今井ブックセンター「はまミス」コーナーにて
昨年に引き続き、「仰天ミステリー」を集めました!

仰天②

仰天①

今年は、少し旧い作品に再び注目!ということで
「11枚のトランプ」泡坂妻夫
「魔術はささやく」宮部みゆき
「悪意」東野圭吾
の3点をメイン展開!
特に、『魔術はささやく』は宮部さんの原点で
関連性のない3つの事件があることで繋がっていた!
いかにして3つの事件が起こったのか?それは
タイトルに意味がある。さらにその事件の真相が
切ない!
また、東野さんの『悪意』は、はまさきが東野作品のなかで
一番最初に読んだ作品。この本を読んだ時の衝撃は
今でも忘れられず、この作品以降東野作品をたくさん読んで
いますが、『悪意』以上の衝撃はまだ感じられないです。
それくらいの面白さです!

あと、赤川次郎さんの処女長編「マリオネットの罠」。
この作品は、赤川さんがユーモアミステリーを描く前の
作品で、赤川さんの意外な一面を知ることが出来る!
本格ミステリーの傑作です。2転3転する展開で驚きます。
ミステリー好きならば、この作品を読んでいないと損します!

岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」も面白い!
ある富豪の娘が友人たちと一緒に別荘で過ごしたが、
その夜、事故死してしまう。当時一緒にいた友人たちは、
その娘の遺族の手でシェルターに閉じ込められる!
密室の中で、必死に事件の真相を突き止めてゆく友人たち。
極限状態の中で、疑心暗鬼にかられる。人間の本性が
垣間見られる展開と、真相に驚愕!

そのほか、葉真中顕「ロスト・ケア」、松本清張賞受賞作・
広川純「一応の推定」、貫井徳郎「灰色の虹」、乱歩賞受賞作の
傑作、高野和明「13階段」など、ほんとに仰天するミステリー
ばかりです!

バチカン奇跡調査官「独房の探偵」はローレンの魅力爆発!

バチカン奇跡調査官」シリーズ最新刊「独房の探偵」、
短編集なのですが、非常に面白い作品ばかりで堪能しました。

独房の探偵

第1話「シンフォニア 天使の囁き」
骨肉種に侵された、平賀の弟・良太を描いた短編。
幼くして、小児がんと診断され、ドイツの病院に入院中。
容体が悪化し平賀に連絡が入った!
平賀はドイツに飛ぶ!
ちょっとオタクっぽい兄の平賀。弟はどんなふうに描かれているのかと興味津々で読み始めた。
死の病に侵されているのに、妙に達観している良太。
そして賢く、心優しく、兄に対する愛情は深い。
しかし、良太には誰にも言えない秘密を抱えていた・・・。
その秘密が精神的に心優しい良太を苦しめるのだ。神に愛された少年・良太の苦悩を描く。

第2話「ペテロの椅子、天国の鍵」
神聖であるべきバチカン内に於いて、次々と明るみに出る腐敗・・。
それに苦悩する、ローマ法王。側近のサウロ大司教が、覚悟を持って、
ローマ法王にバチカンの隠された不正を話す。サウロの覚悟に法王はある決心をする。

第3話「魔女のスープ」
ロベルトは、奇跡調査の合間に禁忌文書研究をする。
それは、異端審問、魔女裁判に関するものだった。
当時の被告は、103歳まで生きたとされるベッラ・バッキ。
魔女として審問会にかけられたが、自らは、「不老長寿」のスープを作り、
法王に献上したので、カソリックに背くものではないと主張!
当時のヨーロッパ人の寿命が30代後半~40代前半に対し、
そのスープを飲んでいた法王たちは80歳まで生きた。
ロベルトは、ベッラが調合したスープに興味を持ち、再現することにした。
レシピを見ると怪しげな材料が並んでいる。
ロベルトは、ベッラが晩年過ごしたサンマリノの館に向かう。
そこで小説家のエリーナと出会う。
ロベルトの目的を聞いたエリーナは、小説構想そっちのけでロベルトの実験に協力することに!
彼らがべッラのレシピで再現したスープとは!?
この作品は、いつもとちょっと違う楽しい物語!化学の勉強にもなりますよ~

第4話「独房の探偵」
本筋では行方不明になっている、ローレン・ディルーカの物語。
ローレンの年齢は13歳。まだバチカンの仕事をする前の姿が描かれている。
超!天才のローレンは13歳にして、世界的な大富豪だ。
しかし、ローレンは刑務所の独房生活を楽しんでいる。
ローレンは独房から部下にあらゆる指示を出し、世界を思うままに動かしている。
そんなとき、国家治安警察(カラビニエリ)のアメデオが訪ねてきた。
ローレン曰く、イタリア警察は複雑な事件が解決できない無能の集団。
そんなイタリア警察を幾度となく、ローレンは助けてきた。その時の刑事が
アメデオだ。ローレンのおかげでアメデオはどんどん出世し、今や組織のトップに
君臨している。そんなアメデオが血相を変えてやってきたのだ。
ローレンは楽しそうに「今度はどんな事件だ?」と聞く。
独房内で鮮やかに事件を解決するローレンの推理が見事!!

バチカンワールドを思うさま堪能できる1冊です!

『バチカン奇跡調査官 独房の探偵』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA
価格:¥640(税別)

鬼龍光一シリーズ復活!「豹変」

今野敏先生の伝奇小説と警察ミステリーを融合させた
エンターティメント作品、鬼龍光一シリーズが新作で登場した。
タイトルは「豹変」。

はまさきの大好きなシリーズ。
待ちにまった新作!嬉しい!(嬉し過ぎて跳びはねちゃった。)
今野敏ファンも嬉しい!

豹変

都内の中学校で、同級生をナイフで刺すという事件が起こった。
加害者の佐田は、所轄署で取り調べ中、老人のような語り口調で
「邪魔をしたから懲らしめてやった」と語った。
そして、警察官を簡単にふりきり逃走した。
警視庁生活安全部少年課の富野は、被害者の石村を訪ねた。
驚いたことに、石村は佐田の狐憑きを除霊しようとして
刺されたと語った。
不可思議な事件が発生する場所には必ず現れる、祓い師・鬼龍光一。
今回の事件にも、早速首を突っ込んできた。
富野と鬼龍は逃走した佐田の除霊に向かった。
だが次に豹変したのはなんと石村の方だった!?
中学生の間で次々に発生する類似の事件。
富野が捜査するうちに共通点が浮かび上がってくる・・・
本当に狐憑きなのか?それとも・・?

いつもは鬼龍光一が主人公で、富野は脇役として
登場するが、今回は富野が事件を捜査する。
あくまでも鬼龍はオブザーバーだ。

少年たちに次々に起こる狐憑き。
警察官もこの不思議な現象に頭を悩ませる。
結局、富野は何が起こっているのか?
相棒や所轄署の警官に説明するが誰も信じない。

だが現象として起こっている。その事実がある。
だがそれは霊現象なのかどうかはわからない・・・。

そのせめぎあいを必至で説明する富野。
鬼龍や所轄署の刑事たちとの禅問答のような
会話がすごく興味深い!
そして面白い!

今回、富野のバディ・有沢がとても良い!
久しぶりの鬼龍光一!面白かったです!

オズヌも出してほしいです!!
オズヌ復活に期待大!!!

『豹変』
著者:今野敏
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,600(税別)

あのコンビ復活?!警視庁捜査一課・碓氷弘一最新刊「マインド」

今野敏先生の人気警察小説シリーズ、「警視庁捜査一課・碓氷弘一」
シリーズ最新刊が出ました!
タイトルは「マインド」。

碓氷刑事は、いつも変った経歴のエキスパート
とコンビを組む。
警察官以外では、これまで、自衛隊の爆弾エキスパート、
外国人スパイとパソコンマニア、外国人考古学者など
ほんとに一風変わっている。

警察官では、少年課の巡査部長とコンビを組んだ事も。
しかし、碓氷が一番ドギマギしたのは、美人心理調査官と
捜査した時だ。その二人が活躍する「エチュード」では
碓氷刑事が、まだまだ駆け出しの心理調査官・藤森紗英を
サポートしながら事件を解決に導く。

今回の「マインド」ではその藤森紗英が再登場する!

ゴールデンウイーク明けの朝、警視庁捜査一課・碓氷刑事の元に
都内で起きた二件の自殺と、二件の殺人の報が入った。
その発生時刻は、同じ日の午後十一時。
偶然とは言えないその四件の事案に疑惑を持ったのは、
碓氷刑事と捜査一課課長・田端守雄だった。
田端課長の特命を受け、碓氷たちは捜査を開始した。
その後、同日、同時刻に都内で盗撮、強姦未遂事件が起こっていたことが判明する。
それぞれの事件の容疑者を引っ張り、取り調べると誰もが妙な事を言った。
「よく覚えていない」と・・・
一見、全く関連性の無い事件と思われたが、共通点が出てきたのだ!
同日、同時刻に事件が起こったことに不審を抱いたのは特命班だけでは
なかった!
警察庁の心理調査官・藤森紗英も不審を抱き、特命班に参加したいと申し出た。
碓氷と藤森は再びコンビを組み、この妙な事件の捜査を始める。

今回の藤森心理調査官は、「エチュード」の時より成長し、
自身を持って捜査に臨んでいる。
「エチュード」の時とは反対に、碓氷が藤森を頼っているのだ。
成長し、自分の仕事にプライドを持って臨む藤森に会えたのは
ファンとしてはとても嬉しい!!

信頼しあいながら捜査を進める二人だったが、事件はさらに
不可解な様相に・・・・!!
心理学者同志の対決が読みどころで、その言葉の応酬は凄い迫力!

今回も凄く面白かった!

『マインド』
著者:今野敏
出版社:中央公論新社
価格:¥1,600(税別)

ガリレオシリーズ最高傑作!「禁断の魔術」

東野圭吾さんの文庫新刊「禁断の魔術」を読みました。
単行本で発売されたときは、短編集。
その中の短編の一つである「猛射つ」を長編にした作品です。

教え子に対する、湯川教授の心意気にものすごく感動しました。

禁断の

ある日、ホテルの一室で女性が大量出血し亡くなっていた・・。
物語はそこから始まる・・・・。

帝都大学理学部助教授・湯川学は、高校の後輩・古芝伸吾
が部長を務める物理研究会の新入生募集を手伝った。
入部希望が全くなく、今後の部活動の継続が危ぶまれ
非常に困っていたからだ。湯川のアイディアで斬新な
実験を行うことにした。非常に難解な理論にときどき
諦めそうになる古芝だったが、湯川の説明を熱心に聞き、
厳しいアドバイスにも耐えた。
その結果、斬新な実験パフォーマンスは大成功し、
部員が集まり、部活動は継続されることになった。
やがて、古芝は湯川が教鞭をとる、帝都大学へ入学した。
工学部機械工学科で学んでいたが、育ての親である姉が急死し、
古芝は大学を中退、町工場で働くことになる。

そんな頃、フリーライターが殺された。
彼は、代議士の大賀を追っていた事が判明。
さらに、大賀の担当新聞記者が古芝伸吾の姉だったことも判明する!

古芝の大学中退の事情を知り、湯川は古芝が働く町工場に行く。
残念ながら会うことは出来なかった。
だが、湯川の来訪を知った、古芝は失踪してしまう・・・。

古芝の失踪を知った湯川は、教え子の‘企み’に気づいてしまう・・・。

愛する姉を失った慟哭。
復讐に燃える教え子を湯川は救うことが出来るのか?

事件の発端、捜査過程、ミステリーとしての展開の仕方は
これ以上ないほど面白い。
しかし、この作品が傑作なのは、湯川と古芝の信頼関係
と教え子に対する湯川の姿勢だ。
湯川の教え子へのブレない愛情が描かれて、とても清々しい。

ガリレオシリーズでは、最高傑作になったのではないかと思う。

『禁断の魔術』
著者:東野圭吾
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥630(税別)

驚愕の誘拐サスペンス!「アノニマス・コール」

[薬丸岳さんの「アノニマス・コール」(KADOKAWA)を読みました。
作家生活10周年記念作品ということで、気合の入った作品でした。

家族への想いを強く感じた作品。

アノニマスコール

3年前、ある事件をきっかけに警察を辞めた朝倉。
妻の奈緒美とは離婚し、娘の梓とも会えない生活。
工場での派遣仕事で食いつなぐ毎日だった。

そんなとき、朝倉の携帯に無言電話がかかってきた。
娘の声を聞いたような気がして、3年ぶりに奈緒美に
連絡すると、梓は行方不明になっていた!
やがて、奈緒美のもとに匿名の電話(アノニマス・コール)
がかかってきた。
梓を誘拐したので、明後日までに1千万円用意しろとの電話だった。
奈緒美は警察に通報するというが、朝倉は警察への不信がぬぐえず、
誘拐犯を自分の手で捕まえるために動き出した。
奈緒美の父は警察官だ。梓の誘拐を隠し、父親に1千万円を借りる。
そのお金を持って犯人の言う通り動いた。犯人の要求に従って
得たのは梓の解放ではなく、新たな要求だった!
それは、3年前の事件の情報と梓の命との交換だった。

朝倉が警察を辞めるきっかけとなった事件。
家族とも別れなければならなかった、朝倉の人生を狂わせた事件だ。
忘れようと努めてきた。だが向き合うときがきたのか・・・。
3年前の事件とは一体何か?
警察を攪乱し、誘拐犯をも出し抜き、愛する娘をすくうために命を懸ける!

誘拐犯を巡る追走劇にハラハラしながら、その間で次第に
明らかになる、3根前の事件の真相。
もみ消された不祥事なのか!?警察も必死で朝倉を追う!
元刑事、誘拐犯そして警察。三つ巴の攻防!
手に汗握る展開は衝撃のラストまで止まらない!

『アノニマス・コール』
著者:薬丸岳
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,600(税別)

肌が粟立つ!マジ!戦慄!!「残穢」

家に置いておくのは怖い!という感想が多く、
怖くてとても読めないと思っていた、小野不由美さんの
「残穢」を読みました。
この作品、山本周五郎賞受賞作です。

確かに、この本は家においておきたくないくらい怖いです。

残穢

「私」という語り手は多分、小野先生本人ではないかと思います。
作家で若いころはライト系の小説のあとがきに、怖い話を募集していたと
書かれているので・・・・。
その頃から「私」の作品を愛読してくれいている、ファンの
女性(仮に久保さん)から、久しぶりに怖い話が届いた。
内容は、引っ越し先のマンションで、怪異現象が頻発するというものだった。
何かが畳を擦る音が聞こえる。さらに、帯のようなものが寝室の床を這うのを見た!

この怪異現象に何かひっかかるものを感じた「私」は、過去に読者から
寄せられた怪談話を探した。
そして、比較的近年に届いた手紙の中に、久保さんと同じ住所のものがあった。
マンション名は書かれていないが、町名・番地が同じものだった。
その手紙の主は女性(仮に屋嶋さん)で、一児の母だった。
屋嶋さんは、半年前ほど前に現在のマンションに引っ越してきたが
越して以来、2歳になる子供の様子が可怪しい。何もない宙をよく見つめている。
何があるのか尋ねると、「ぶらんこ」という。子どもの目には、そこに
ぶら下がって揺れている何かが見えるらしい。
さらに床を何かが這う音も聞こえたというものだった。

同じマンションの違う部屋で、似たような怪異現象が起こるものなのか?
「私」は、その怪異現象の原因をつきとめるために、久保さんと一緒に
調べ始めた。

怪異現象の原因を辿っていくと、マンションの建っていた土地を
巡る因縁めいた話に突き当たった・・・。
そしてその土地に住んでいたそれぞれの家族は、なんらかの理由で
よその土地へ越している・・・。
現代から遡って、バブル期、高度成長期、戦後期、戦前、明治大正期まで
調べ、たどり着いた怪異現象の元は、多岐に及んでいた。
だが、その大本はたった一つの「家」なのだ。
その家、土地で起こった悲惨な事件が、怪異を起こし、穢れとなって
伝染してゆく・・・。それは人であったり、土地であったり、家であったり・・。

その過程を読んでいるだけで、肌が粟立つ。怪異現象そのものはそれほど
強烈ではないのに、何がそんなに怖いのか!
触れてはいけないタブーな怪談・・・。
さらに「伝染する」というその言葉に衝撃を受けた。

あまりに怖すぎて、もうこの本を開きたくない・・・。

『残穢』
著者:小野不由美
出版社:新潮社
価格:¥1,600(税別)7月下旬に文庫発売予定。