リベンジ・ミステリの衝撃!「GIVER 復讐の贈与者」

[本の雑誌社「おすすめ文庫王国2017」国内ミステリー部門で
第1位になった、「GIVER 復讐の贈与者」日野草(KADOKAWA)
表紙もかっこ良くて手に取りました。

法では裁かれない犯罪、罪を犯しながら逃げおおせた
犯罪者たち・・・。そんな者たちを許せない被害者たち。

そんな被害者たちは、復讐代行業者にリベンジを依頼する。

そして、復讐代行業者は依頼者の意を汲み、
彼らの望み通りに復讐を完遂する。

6編の短編は、復讐される側の視点で描かれ、
謎の男の登場によって、超スリリングな展開に変化する。

思いもよらない方法で、標的の一番の弱みを利用し操る・・・。
謎の男によって暴かれる彼らの過去。
そして、何を求められているのか、何をされるのかわからない恐怖。

正体不明の復讐代行業者は常に冷静に、そして冷酷に彼らに
言い渡す。そこに感情は一切ない・・・。
あるのは、生か死かの宣告だ。

6つの物語から浮かび上がっていくるのは、リアルな死への恐怖と
復讐される側の息遣い、そしてとてつもない緊張感だ・・・。
かれらに最もふさわしいシチュエーションで恐るべき復讐の
幕があがるのだ・・・・。

読んでいるこちら側もドキドキする!
こんなリベンジ・ミステリ読んだことない!

新感覚のミステリー!

『GIVER 復讐の贈与者』
著者:日野草
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥760(税別)

心に深く刻まれる・・・。警察ミステリーの極致「慈雨」

「臨床真理」でこのミス大賞を受賞後、上質なミステリーを描く
柚月裕子さん。
「最後の証人」「検事の本懐」「検事の死命」の3部作は
法廷ミステリーの最高傑作。
そして昨年上梓された、「孤狼の血」は、強烈な個性を放つ
悪徳刑事の姿を哀切たっぷりに描き、警察小説に一石を投じ、
日本推理作家協会賞を受賞しました。
現在、波に乗っている著者の最新作は、「慈雨」です。

読み終わったら泣けてきました。

今作「慈雨」は、北関東で連続して起きている幼女誘拐
殺人事件をヒントに描かれたと思われる警察ミステリー。

退職し、妻と二人でお遍路の旅に出た元刑事・神場。
彼には、数々の事件の中でただ一つ忘れられない事件があった。
それは16年前に、管内で起きた幼女誘拐殺人事件・
金内純子ちゃん事件だ。
捜査本部は、遺体発見場所付近で目撃された白い軽ワゴン車
と類似する車を所有していた人物、八重樫を被疑者とした。

八重樫は地元に住んでおり、土地鑑があった。
両親は亡くなり、結婚もしていない。さらに、
純子ちゃんの死亡推定時刻にアリバイが無かった。
当時導入された新しい科学捜査、DNA型鑑定で純子ちゃんの体内に
遺された犯人と見られるDNA型と八重樫のDNA型が一致。
捜査本部は八重樫を純子ちゃん誘拐殺人容疑で逮捕した。
そして起訴され裁判にかけられたが、無罪を主張した。
しかし、DNA型鑑定が決めてとなり、懲役20年の判決を受けた。

当時、純子ちゃん事件の捜査を担当していた神場は、
ずっと違和感を感じたまま捜査をしていた。本当に
八重樫は犯人なのか・・・・と?

ところが、お遍路中に16年前の事件と同様の幼女誘拐殺人事件が起きた!
神場は、すぐさま、元相棒だった後輩に連絡をとった!!
心が揺れる!ざわつく!夢の中に出てくる純子ちゃんの悲しそうな顔・・・。
やはり・・・真犯人は他にいたのか・・・?
神場は、元相棒と元同僚に捜査のアドバイスを懇願される。
悩みつつ、それでもやはりこの事件に触れないでいることは出来ない。
神場は妻とお遍路の旅を続けながら、事件のことを思った。

16年前と現在の事件の解明を物語の本筋に置き、
退職した、元刑事が自身の過去を振り返る・・・。
妻との絆、同僚の死、娘への想い。
神場には誰にも言えない秘密があり、その秘密も
事件の解明とともに暴かれてゆく。
刑事としての矜持と正義感が16年前の事件の真実を暴く。
妻と娘を裏切っている自分を許せないからだ。
今度こそ間違いを犯してはいけない・・・。

正義感あふれる元刑事の贖罪と悔恨の旅。
刑事人生でただ一つの過ちを犯した自分自身と向き合い、
新たな一歩を踏み出す元刑事の姿に胸が熱くなる。

『慈雨』
著者:柚月裕子
出版社:集英社
価格:¥1,600(税別)

巧妙な殺人トリックに瞠目!「変若水(をちみず)」

積読から2012年に購入した、ミステリ作品が出てきました。
島田荘司氏選、第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作、
『変若水(をちみず)』(光文社刊)です。
著者は、島根県在住の吉田恭教(やすのり)さん。

ミステリの舞台は島根県の奥出雲にある架空の村。

厚労省に勤務する向井の幼馴染の女医が、ラッシュ時の駅で
突然死した。偶然その場に居合わせた、医者が必死になって
蘇生を試みてくれたが、意識を取り戻すことはなかった。
幼馴染は、向井にとって姉弟のような存在だった。
幼い時から上昇志向のない向井に喝を入れ続けてくれた。
亡くなった衝撃はあまりにも強く、日頃の怠け癖に
さらに拍車をかけ、働く意欲は失せていた。

そんな向井が再起するきっかけになったのは、幼馴染のパソコン
に友人から送られてきた一通のメールだった。
ウイルスメールに犯され動かなくなった彼女のパソコンを再起動し、
発見したメール。誰が何のためにウイルスを仕込んだのか?
さらに、そのメールの内容に向井は戦慄を覚えた・・・。
その友人は島根の病院に勤務する医者だ。
その病院では厚労省がひっくり返るような事件が起きていた。
これはその告発文ではないか!!
幼馴染はこの告発文のせいで殺されたのではないか?と疑惑を持つ。
すぐさま、該当の病院に勤務する幼馴染の友人に連絡をとった。
だが・・・その友人も亡くなっていたのだ・・・・。
告発文に関係する二人の若き女医の突然死・・・。
これは、連続殺人事件ではないのか・・?

またもや厚労省を揺るがす一大事件がおきたのでは・・・?
厚労省の上層部は、告発文の内容の真偽を確かめるために
向井に調査を命ずる。そのパートナーは、向井の元恋人。
向井の不誠実のせいで別れてしまった年上の美女。
そして上司・・・。向井は元恋人のパワハラまがいの
無理難題と格闘しつつ、事件の大本に迫ってゆく。

彼らが辿り着いたのは、島根県と広島県の県境にある雪深い村。
そこは変若水(をちみず)村と呼ばれ、ある一族が絶大な権力を
ふるっていた。そしてそこでは誰も見てはならないとされる、
雛祭りが行われていた・・・。

旧い因習にとらわれた閉鎖的な村で起きた連続失踪事件。
若い女性が眠る墓荒らしの過去。さらに隠蔽された奇病。
それら全ての事件の裏に踊る邪悪な人間の影・・・。
彼女たちの死の原因はここにある!?

現代医療を駆使した、大胆な殺人トリック。
閉鎖された村で起こるホラーまがいの事件。
そして、身勝手すぎる人間の悪意の介在。
ミステリーの面白さが凝縮された、本格医療ミステリー。

物凄く面白くて、いっきに読んでしまいました。

『変若水(をちみず)』
著者:吉田恭教
出版社:光文社
価格:¥2,000(税別)

警察の草創期の捜査を描く!「サーベル警視庁」

今野敏先生の最新刊は、明治時代の警察を描いた作品。
「サーベル警視庁」です。

時は明治38年、日露戦争まっただ中。
警視庁内でもその話で持ちきりだ。

そんな時、不忍池で変死体があがったと連絡が入った。
警視庁第一部第一課の面々たちは、早速不忍池に向かった。

警視庁第一部第一課は、鳥居部長、(幕末の怪物・鳥居耀蔵の縁者らしい・・)
を筆頭に、仙台出身の葦名警部、服部課長以下、岡崎上位巡査、柔術の猛者・久坂、
剣術の達人・岩井、私服刑事(でか)・荒井巡査という面々。

不忍池で発見された変死体は、帝国大学の教授らしい。
第一発見者は富山の薬売りだという。
岡崎たちは、その薬売りから事情を聞こうと、所轄の本郷警察署
に向かう。しかしはすでに放免された後だった。
そんなに簡単に放免しても良いのか?多少違和感を感じる岡崎たち。
殺害された、帝国大学講師は高島と言った。高島は急進派で日本古来の
文化を排斥し、諸外国にならうべきだと強く発言していた。
同じ日、陸軍大佐も高島と同じような手口で殺害されたとの知らせが入った!!

明治時代の警察署が現代の警察の基礎になりつつある感じだ。

維新の立役者は、薩摩・長州、その出身者が明治政治を牛耳っている。
そういう影響が色濃く残り、様々なところで取沙汰されている様子が
非常によくわかる。
警察内の権力バランスもやはりそうだ。
また、この時代では、維新とは言わず、瓦解と言う言葉を使って
江戸と明治の境目を語っていたようだ。
幕末から明治維新後の様子を市井の側から語れているのは
とても新鮮に映った。

興味深かったのは、伯爵の孫で探偵の西小路や、一般市民を
警察の協力者として捜査に加わっているところがとても
面白いと思った。

特に実在の人物を架空の人物に絡ませ捜査をすすめる
過程に感激した。
明治時代に活躍した人たちの名前が数多く登場する。
知っている人物の名前が捜査上であがってくると
思わずニヤけてしまった。

明治時代の警察小説ではあるけれど、とても新鮮に感じた。
今野節はここでも炸裂しています!!

『サーベル警視庁』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,600(税別)

祝!アニメ化決定「バチカン奇跡調査官」。シリーズ最新作は短編!

2017年夏にTVアニメ化決定です。
ファンとしては嬉しい限り!!!!

それはさておき、「バチカン奇跡調査官」シリーズ
最新作は短編集。「ゾンビ殺人事件」です。

今回の短編集は、ロベルト&平賀の他に
サブキャラクターである、FBI捜査官、ビル・サスキンス
凶悪犯罪者・ローレン&イタリアのカラビ二エリ・メデオ大尉が登場。

短編なのに、読み応えがあり、かなり面白かった。

1、チャイナタウン・ラブソディ
閑職にまわされている、FBI捜査官、ビル・サスキンス。
彼のただ一人の部下は中国人の周弥貝(ジョウミーベイ)、
通称ミシェルだ。
ある日、彼の婚約者がチャイナタウンで何者かに誘拐された。
それがどうも、妖怪のしわざらしい・・・・。
その正体は、不老不死を願いとうとう妖怪になってしまった
秦の始皇帝。彼は本当に死なない身体を求め、300年に一度
ある特徴をもった女性の生き血を飲み干す。
その特徴を持った女性こそ、ミシェルの婚約者だったのだ。
ビルは半信半疑・・・。だが実際に始皇帝とともに眠っていた
兵馬俑が、美術館でいきなり動き始めた映像を見て真実と確信。
ミシェルの婚約者を救うために、ビルも一肌脱ぐことに・・・。
そんなビッグな妖怪、どうやって倒す・・・?
中国の妖怪伝説をお姫様救出劇に変化させた、スリリングな一編。

2、マギー・ウオーカーは眠らない
世界でも指折りの科学者、マギー・ウオーカー。
トップクラスの科学者が集まる研究所の主任。
ただ、考え方はあまりにも合理的すぎて超変わり者。
そんな彼女はある日、マフィアによる殺人事件を目撃した。
夫婦らしき男女が殺され、その男児が1人遺されてしまった。
マギーは男児を助けたが、その子の面倒などみていられない・・・。
男児のグランマの住所もわかり、そこへ電話をしたのだが、
何やらきな臭い男どもが見張っているようだ・・・。
仕方なく、マギーはその子を助けることにする。
マギーは、自分をグランマと思い込みくっついてくる
男児に次第に心惹かれるが、そんな感情に一切
振り回されることなく、どうしたら助けられるのか?
一番合理的な解決策を思いつく。
子どもが苦手だけど、子どもの扱いは非常に上手い
マギーの行動力に拍手!!!!

3、絵画の描き方
ある日、平賀の元へバチカンの絵画修復士と名のる
青年が訪ねてきた。
青年は、バチカンの倉庫に眠る絵画の管理をしているようで、
その中に仕舞われていた、ある画家に心を奪われてしまった
という。修復するにしても、どのような絵の具が使われて
いるのか?調べたがどうしても解明出来ず、バチカン
科学部を訪ねてきたらしい。
平賀はその青年の熱い心に打たれ、絵の具解明に乗り出すが・・・。
結局、ロベルトに頼ることに・・・。
ロベルトと平賀は休日を返上し、絵画修復士のために
実際に絵の具をつくることなる。
その過程で、奇跡が起こる・・・というストーリー。
このエピソードはとても心が温かくなる。

4、ゾンビ殺人事件
イタリアの森で、男女がゾンビに襲われると言う
衝撃的な事件が発生した。しかも襲われた女性を
助けるためにそのゾンビを殺害したという。
ゾンビを殺害・・・?もう死んでるんだけど????
そのような怪事件は、カラビ二エリのメデオ大尉のところに
回ってくる。彼はこれまで誰も解明できない奇妙な
事件を次々に解決し、どんどん出世していたのだ。
だが、彼をサポートしていたのは、凶悪犯罪者・
ローレン。今回もローレンに泣きついた、メデオ大尉は
ローレンに心酔する、心理捜査官・フィオナとともに
捜査を開始。だが大量のゾンビが発見され、さらに
混迷を極めてしまった!?
またまたローレンの鋭い洞察力と鮮やかな推理に感心する。
海外では、やはりゾンビって信じられているのかな?

傑作な4編。思い切り堪能しました!!

『バチカン奇跡調査官 ゾンビ殺人事件』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥600(税別)

ぶっ飛んだ展開に唸る!!第32回横溝正史ミステリ大賞受賞作「デッドマン」

3月は、とにかく好きなミステリーを読む!と
決めていたので、以前友人から借りていた、
「デッドマン」河合莞爾著(角川文庫)を
読みました。
本読みの友人がものすごく面白かったと言った
お墨付きの作品。

頭部を鋭利な刃物で切りとられた死体、胴体のない死体
右手がない死体・・・。身体の一部を切りとられた死体が
次々と発見され、それらはすべて保存液に浸されていた。
外傷は一切なく、無くなった部分以外はすべてきれいな死体。

最初の事件で特別捜査本部が置かれた。
科警研のプロファイリング、鑑識の発表を聞いた
警視庁の鏑木警部補は、この事件は
怨恨でも、ただの猟奇殺人でもない、犯人は身体の
部位を盗んでいったのだ・・・と感じていた。
捜査本部でそういう見解を述べた鏑木は、
捜査一課長から、この連続死体遺棄事件の指揮を命じられる。
慣れない指揮官ではあったが、皆がついてきてくれた。

消えた体の部位は、いったい何に使われるのか・・・。
頭と胴体と、両手、両足をくっつけて・・・・?
鏑木の頭に浮かんだ一つのイメージ・・・。
まさか、フランケンシュタインのような怪物を作るつもりなのか・・・?

鏑木率いるクセモノ揃いの特捜班が必死で捜査をするが、
端緒さえ見つからない。混迷を極めたまま、半年が過ぎた。
そんなある日、ひとつのメールが捜査本部・鏑木宛てに送られてきた。
そこには、「僕は、死体の一部を継ぎ合わされて作られたデッドマンです。
僕たちを殺した犯人を見つけてください」と記されていた。

このメールから事件は急展開を見せる。

読み進めると、あまりの奇想天外なストーリーに面食らう。
物語の途中で、鏑木がフランケンシュタイン説を
医者に取材するシーンがある。そこで医者は、
切りとられた部位を接合して新たな人間を作り上げることは可能であると
言っている。嘘だ!マジか!?唖然!

この物語の真相を読みたくて読みたくて、止まらなくなってしまった。
空前絶後の真相にぶっ飛ぶ!

あまりの面白さに読み終わった後丁寧に解説を読んだら、
横溝正史ミステリ大賞受賞作と記されていた。
全くノーマークだった。(うかつ~~~)
それにしても、横溝正史ミステリ大賞受賞作は面白すぎる・・・。

『デッドマン』
著者:河合莞爾
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥560(税別)

恐すぎました・・・。「黒面の狐」

ホラーミステリの第一人者、三津田信三さんの
「黒面の狐」(文藝春秋)を読みました。

以前、三津田さんの「怪談のテープおこし」を
読んだ時はもろ怪談だったので、恐かったのですが
この「黒面の狐」は、もっと超自然的な恐ろしさを
感じてしまい、小説なのにとても怖いなと感じました。

戦後、朝鮮から引き揚げてきた一人の青年・物理波矢多(もとろいはやた)。
居場所はなく、なんとなくやってきた町でぶらりとしていると、
炭坑の手配師らしき男に声をかけられた。
少し強引なやり口だったが、今なら炭坑夫くらいしか
仕事口はないだろうと思い、ふらふらとその手配師についていった。
その矢先、別の男から声をかけられた。
波矢多は知的で優しそうなその男に、危うい炭坑に連行される
ところを助けられたのだ。
二人は何となく意気投合し、男が務める炭坑で共に働くことになった。

ただ、波矢多は朝鮮の大学を卒業しており、
それが炭坑の上層部にばれるとなにかと目をつけられるので、
黙って炭坑夫を続けた方が良いと言われた。

毎日、暗い穴のような所で汗だくになりながら炭を掘るのは
重労働だった。
しかも、炭坑にはタブーがあり、怪事件に遭遇した男もいた。
その中で特に興味深いのは、狐の面をかぶった美しい女の話だった。
いるはずもない炭坑のなかに出没する、狐の面の美女。
その女に魅入られると男はみんなおかしくなり、消えてしまう。

波矢多が仕事に慣れた頃、大参事が起こった。
ガス漏れが原因で炭坑内で爆発が起こったのだ!
波矢多は助かったが、親友は穴の中へ取り残されてしまった。
助けに行きたかったが、ガスが充満して2次災害が起こる
可能性があるため、会社の指示に従うことになった・・・。
そして、この事故からのち、不可思議な連続殺人事件が起こった。
さらに、事件の現場で目撃される、黒面の狐の姿・・・。
一体何が起こっているのか・・?
波矢多は事件を調べることに・・・。

炭坑内で起こる不思議な怪事件と、後半に起こった連続殺人事件。
2つの事件は繋がっているのか?
調査の過程で見つかったある朝鮮人青年の炭坑での記録!
それは目を覆いたくなるような、朝鮮人に対する日本人の
悪行が綴られていた。
朝鮮人たちの恐怖は、怪奇現象でも真っ暗な炭坑でもない。
日本人こそが恐怖だったのだ。

太平洋戦争中、強制的に日本に連れてこられ炭坑夫として働かされた
朝鮮人たちの無念が物語から浮かびあがってくる。
その叫びのようなものを、このような形で著者は描いた。

まさに背筋が凍るほどの衝撃!!!
覚悟して読んでください。

『黒面の狐』
著者:三津田信三
出版社:文藝春秋
価格:¥1,800(税別)

急転直下!「紅霞後宮物語第5幕」

「紅霞後宮物語」、待ちに待った第5幕が
発売されました。

今回は、皇后・小玉がありえない疑いをかけられ
ピンチに!!
文林、どうする!?

湖西の騒動は収まったが、事後処理に追われる文林。
隣国も怪しい動きを見せ、文林の悩みは尽きない。
そんな疲れを癒やしてくれるのは、大好きな帳簿
を見ることと、頭に浮かんだのは不本意ながら小玉の顔・・・。
小玉も、文琳の事が気になり、出向いて行くと、
疲れ果てた文林が今にも倒れそうになりながら
仕事に追われていた。あまりのことに小玉は
文林を休ませることに。
お互いを知り抜いている関係だからこそ、
この夫婦はなりたっているのだ・・・

ところが、「娘子の貞節に問題あり!」
突如、小玉の不義疑惑が持ち上がった。
はあ・・・!?そんなバカな!!誰もが耳を疑った。
だが、文林はそこに邪悪な陰謀の陰を見た・・。

紅霞宮を巻き込み蠢く陰謀・・・。
文林にないがしろにされる司馬淑妃。その父親・司馬尚書の謀略か。
それとも・・・・?。
皇后・小玉を失脚させるために張り巡らされた罠!!

推移を冷静に見つめる小玉は、ある夜文林のもとを訪れる。
そして二人の関係にも変化が!?
二人ともいい加減に素直になってよね!とツッコミを
入れたくなる・・・・けれど。

急転直下の展開に、ワクワク、ドキドキ、ハラハラ!!!
させられました。

次はいつ・・・?

『紅霞後宮物語 第5幕』
著者:雪村花菜
出版社:KADOKAWA(富士見L文庫)
価格:¥600(税別)