かっこ良すぎる!53歳ヒラ刑事「巡査長真行寺弘道」

榎本憲男さんの「巡査長真行寺弘道」シリーズ。
第1弾を読んで、第2弾の「ブルーロータス」を
購入していたのに、積読に埋もれてしまい
つい最近読了しました。

「ブルーロータス」面白過ぎでした!
しかも第1弾を読んでいたのにブログに書いていない
ということが判明!
1.2巻一緒に感想を紹介します。

真行寺弘道は、警視庁捜査一課に所属、53歳で巡査長。
警察官で言うと「超」ヒラ刑事ということになる。
そんなヒラ刑事が捜査一課にいること自体、異例中の異例だ。
真行寺は、ある理由で頑なに昇任試験を受けず、
出世を拒否している。

そんな真行寺を、キャリアで警視庁刑事部捜査一課課長の
水野玲子は一目置いている。
彼の捜査能力、事件の筋読みは他の刑事と比較にならないほど
優秀だからだ。
時には、捜査本部とは別の角度から捜査するよう支持を出す。
これも異例中の異例なこと。

第1巻は、高級老人介護施設で起きた死亡事件の捜査だ。
AI搭載の人型介護ロボットが関わっているらしい。
その事件の捜査中に、自称「ハッカー」と称する
オーディオマニアの青年黒木と親しくなる。
ハッカーと言うだけあって、AIのことには詳し過ぎる
黒木のアドバイスで事件は一段落する。
しかしその後、元警察官僚の議員がホテルで変死した
事件を捜査するよう水野から連絡が入った。
捜査を続けるうちに、背後に政界・芸能界・反社会的勢力
などが連なる巨大組織の影を見た真行寺は、
黒木の力を借り真相に迫ろうとするが・・・。

第2作目は、「ブルーロータス」。真行寺は、荒川沿いを
巡回途中、捜査員たちに出くわした。河川敷で変死体が
発見されたという。やがて死体がインド人であると
判明。その変死体には、なにやらメッセージめいた
火傷のあとがあった。そこに事件性を感じた真行寺は
インドを専門とする若き研究者・時任の協力で捜査を
すすめる。

真行寺弘道というキャラクターが非常に面白い。
公休はしっかりと休み、自慢のオーディオで
大好きなロックミュージック聞く。
さらに上意下達が絶対の警察において、
そこに染まることなく、かといって熱血一匹
オオカミ的刑事でもない。ただ面倒くさいと
理由で単独行動することは多い。真相解明
のためなら、型破りな行動・言動になる。
刑事としてはかなりの変わり種だろうと思う。
でもそんな真行寺がとてもかっこ良い。
俺は俺だ!がすごく伝わってくる。

そして、犯人逮捕にこだわる警察の中で、
真行寺は全く別の視点で事件をみている気がする。
その事件の背景や、事件に至った経緯、
犯人はなぜこんな事件を起こしたのか?
わからないことをとことん追求する。
(追及し過ぎたために、1巻ではやばく
デカイ事件にぶちあたり・・・。)
特に2巻の「ブルーロータス」はインド人の
気持ちを必死に理解しようとする姿勢が
心に響いた。

キャラが魅力的な作品はそれでだけでも十分
面白いが、このシリーズは著者の幅広い知識と
こだわりが、そのまま作品に投影されていて
読んでいてとても面白いと感じる。
難しい箇所もあり、(とくにオーディオ)
ついて行けない時もあるけれど、
俺は描きたいように描くぞ!という著者の
思いがストレートに伝わってきてすごく
爽快な気持ちになれた。

シリーズ第3作目「ワルキューレ巡査長真行寺弘道」が
発売中!

①『巡査長真行寺弘道』
②『ブルーロータス 巡査長真行寺弘道』
著者:榎本憲男
出版社:中央公論新社(文庫)
価格:①¥820
   ②¥800
  (いずれも税別)

エキサイティングな面白さ!「警視庁特殺 使徒の刻印」

大田市在住のミステリー作家、吉田恭教さんの
新作が今月発売されました。
「警視庁特殺 使徒の刻印」(KADOKAWA)です。
警視庁捜査一課の凄腕刑事と元刑事で犯罪
ジャーナリストのコンビが猟奇殺人の謎を解く!

警視庁捜査一課・来生班は、猟奇殺人・快楽
殺人など通常の凶悪犯罪事件とは一線を画す
特殊な殺人事件を担当することが多く、
通称「特殺」と呼ばれている。

中でも佐倉智孝は優秀な刑事。しかし
型破りな捜査手法で時に問題になることもある。
彼の心には、犯罪を暴くためなら手段は
選んでいられないという強い思いがある。

そんな彼を心配し、味方になってくれるのは、
元同僚で犯罪ジャーナリストの有働佳祐だ。

ある日、手首を手錠でつながれた焼死体が
発見される。しかもそこにはセメントで
固めた後があった。被害者を逃げられない
ようにしたのか?
その2週間後、また同じような事件が起こった。
被害者は自力で脱出し一命をとりとめた。
病院で治療中、その被害者の背中に「使徒」
を意味する焼印が押されていたことがわかる。

だが、本格的に捜査が始まる中、佐倉は突然
捜査からはずされてしまう!!

残酷な現場、あまりにもむごい仕打ち、
被害者の体に残る謎めいたメッセージ…。
犯人の意図とは?

有働佳祐の力を借り、佐倉は事件の核心に
近づいてゆくが・・。

警察小説としての面白さ、随所に
盛り込まれた本格ミステリー的展開!
この二つの融合と、孤高の刑事&心優しき
犯罪ジャーナリストという魅力的な
キャラクターが、エキサイティングな
面白さを生んだ!
いっき読み必至の警察ミステリー!

‘探偵・槇野&女刑事・東條’シリーズに
並ぶ面白さだ。

この作品もシリーズ化してほしい!

『警視庁特殺 使徒の刻印』
著者:吉田恭教
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥680(税別)

ガツンとやられた…。「予言の島」

「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」
この2作品が「超」怖くて、「超」面白いです。
この作品を読んで澤村伊智さんにはまった私。

気になっていた、新刊「予言の島」を読みました。

エリートコースまっしぐらだと思われていた、
幼馴染の宗作が、パワハラに遭い心に深い傷を
負って故郷に帰ってきた。
その宗作を励まそうと、天宮淳はもう一人の
幼馴染・晴夫らとともに、瀬戸内海の霧久井島へと
向かった。

その霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・
宇津木幽子が最期の予言を残した場所だった。
その予言とは、幽子が死んだ20年後に島で
6人が死ぬと言う不吉な予言だった。

淳たちは島に到着したが、予約していた宿は、
怨霊がおりてくるという不可解な理由で
勝手にキャンセルされていた。

困り果てていた淳たちに声をかけたのは、
都会から移住し、民宿を営業している麻生だった。
他にも個性的な宿泊客がいた。
その中に、宇津木幽子を崇拝している女性が
いた。彼女は何かにつけて幽子の予言を持ちだす。
皆、うんざりしていた翌朝、晴夫が死体で発見される。

しかし、晴夫の死は宇津木幽子の予言に基づく
悲劇の始まりに過ぎなかった。

「ヒキタの怨霊が山から下りてくると人が死ぬ」
という怨霊の言い伝え、「くろむし」という
不気味な魔除けや風習。
そして、「偶然」(?)居合わせた、宇津木幽子
の孫娘。
祖母の死の真相を突き止めるために来たという
彼女の真の目的とは何か?

横溝正史の「獄門島」を彷彿とさせる世界観。
嵐に見舞われた脱出不可能な「島」という
クローズド・サークル。
本格ミステリーの面白さと、霊能者の予言、
そして呪いという恐ろしい描写。
この展開だけでも十分面白い!

だが、これらの面白さを超えた仰天の展開に
思わず「えええ~ッツ」と叫んでしまう。

最後の最後にガツン!とやられる。

超弩級の面白さで描くホラーミステリー。
澤村伊智さん恐るべし。脱帽です!

『予言の島』
著者:澤村伊智
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,600(税別)

誰にも予想出来ない!驚愕と戦慄!「そしてミランダを殺す」

昨年の各社の年末ミステリランキングで第2位
にランクインした、ピーター・スワンソン
「そしてミランダを殺す」(創元推理文庫)
を読みました。

1位の「カササギ殺人事件」も想像を絶する
展開で、泣けるくらい面白かったですが、
こちらの作品も2位になったのは惜しいくらい、
面白く衝撃的ミステリ作品でした!

IT関連起業の若き社長、テッドは、
ヒースロー空港のバーで、一人時間を
つぶしていた。
その時、一人の美しい女性に声をかけられる。
彼女の名前はリリーと言った。

テッドはリリーに全く記憶がない。
しかし、リリーは気安くテッドに話しかけてきた。
テッドは酔った勢いで、1週間前に妻のミランダの
浮気を知ったことを話し、冗談半分で「妻を殺したい」
と言ってしまう。
しまったと思ったが、リリーは「ミランダは
殺されて当然だ」と断言し、妻を殺害することの
正統性を力説。そして妻殺害の協力を申し出る。

リリーの話を聞いたテッドは、妻ミランダに対し
殺意を抱くようになり、二人は殺人計画を練った。

そして、決行の日が近づいた時、想像を絶する事件が起こる。

男女4人の語りで進行する殺人計画。
追うものと追われるものが、激しく入れ替わる展開。
そこにはサイコパスの影もちらつく!
驚愕と戦慄が交互に襲う!

超絶技巧で仕組まれた著者の罠に完全にはまる。
最後の最後まで気を抜けない、完全無欠のミステリー。

『そしてミランダを殺す』
著者:ピーター・スワンソン/務台夏子(訳)
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,100(税抜き)

定年間近いベテラン刑事の活躍!「割れた誇りラストライン2」

堂場瞬一さんの警察小説新シリーズ第2弾
「割れた誇り ラストライン2」を読了。

定年まであと9年のベテラン刑事・岩倉剛。
渋い警察小説!
すっかり岩倉ファンになってしまった。

捜査一課から南大田署へ異動になって1年。
上司は年下で元部下。多少やりにくいことはある
もののもう慣れた感じだ…。

異動後すぐにコンビを組んだ新人刑事・伊東彩香は
岩倉に鍛えられ、巣立っていった。
新たな相棒が到着する予定だが、まだ姿を現さない。
岩倉は違和感を抱いていた。

さらに新たな問題が浮上。
1年前に発生した女子大生殺人事件の容疑者で、
無罪となった田岡が実家へ戻ったという。
上司からその田岡の様子を見て欲しいと頼まれた岩倉。
北大田署の事案だからと思ったが、岩倉は承知した。

実家に戻った田岡の周りでは不穏な空気が充満していた。
裁判で無罪になったにも関わらず、田岡が犯人だと
思っている人間が多く、嫌がらせも発生していた。

そんな中、女子大生の恋人だった男が殺害される。
彼は、判決後も田岡を執拗につけまわし、騒ぎを
起こしていた。
田岡の犯行では?と疑う者もあったが、今度は
田岡が襲われてしまった!

異動の先々で事件を呼ぶとの異名を持つ岩倉。
今回も事件を呼び寄せた。

女子大生殺害事件を巡る、復讐の連鎖なのか?
それとも・・・。

岩倉の刑事の勘が冴え渡り、事件の真相が
見えてくる!
それは予想をはるかに超えたものだった。
岩倉が違和感を抱く、新たな相棒の
不気味な動きにも注目だ!

今回は、犯罪被害者支援課の村野刑事、
アナザーフェイスの大友鉄刑事もちょっと登場する。
シリーズ横断で、おなじみのキャラが登場するのは
ファンにとってはものすごくうれしい!

第3段弾が待ち遠しい!

『割れた誇り ラストライン2』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥790(税別)

霊視か?幻影か?異色の海外サスペンス「視える女」

ずいぶん前に買って積読になっていたけれど、
急に海外ミステリーが読みたくなって手に取った作品。

べリンダ・バウアー『視える女』小学館。

4歳の息子ダニエルが行方不明になり、
心が病んでしまったアナは、奇妙な行動を
繰り返す日々を送っていた。
そんな妻の行動をなす術もなく見つめる夫。
目撃者も身代金要求もなく4か月が過ぎた。

その町の警察署に勤めるマーヴェル刑事は、
行方不明になった少女をずっと探し続けていた。
一時は、霊能者を頼ったこともある。
しかし、結局見つけだすことは出来なかった。
そんな時、上司の警視から妻が飼っている
行方不明の犬の捜索を命じられる。

ある日、アナは教会で交霊会があることを
知る。そこで出会った霊能者にダニエルの
事を相談しようと考える
そして、アナは交霊会に参加した夜を境に
不思議な声や光景を視るようになる。

アナに起きた不思議な兆候は、異常なこと
なのか、それとも何らかのメッセージなのか?

3件の行方不明の事件が、奇妙な接点で結ばれてゆく。

行方不明事件を捜査する警察小説、
事件の謎が深まってゆくミステリー、
この二つの要素だけでも十分に面白いが
さらに「霊視」という神秘的で
超自然的な要素がからんで独特の世界観を
創りあげている。

非常に面白かった。
マーヴェル刑事はシリーズになっている
ようなので、他の作品も読んでみたい。

『視える女』
著者:べリンダ・バウアー/満園真木訳
出版社:小学館(文庫)
価格:¥830(税別)

やっぱり恐い!スティーヴン・キング「ビッグ・ドライバー」

令和に入ってから初めて読んだ本は海外ミステリー。
スティーヴン・キングの作品を読みました。
「ビッグ・ドライバー」(文春文庫)。

キングの作品はショッキングホラーが多いので
ちょっと苦手なのですが、紹介文を読んだら
面白そうだったので読んでみました。
表題の「ビッグ・ドライバー」と「素晴らしき
結婚生活」という中編2作品が収録されています。

「ビッグ・ドライバー」

女性ミステリ作家テスは講演会の帰りに、
家路までの近道をファンの女性から教えられた。
そのルートをナビに入れ、走っていると
とんでもない場所に来てしまった。

そこで、偶然を装って近づいてきた超大柄な男。
テスは、その男に拉致されひどい暴行を受け、
殺害されそうになる。しかし、何とか生還を
果たしたテスは、自分自身が受けた心と身体の
傷を癒すには、復讐しかないと考える….。

「素晴らしき結婚生活」

30年近く連れ添った夫婦。
お互いに深く愛し合っていた。
子どもたちも手を離れ、夫婦二人の楽しい
生活が再び巡ってきた。
夫はいつものように、仕事で出張に出掛けた。
妻は一人で過ごすことに。

ところが、妻は家のガレージで不可解なものを発見する。
夫が用心深く隠していた、ある犯罪の証拠の数々だった。
実は、夫は連続猟奇殺人犯だったのだ!
幸福の絶頂から一転!
夫が殺人鬼と知った妻は、恐怖にかられる。

夫の犯罪を知った妻の恐怖!そして壮絶な怒り!
その濃密な日々を圧倒的筆力で描く。

どちらの物語も、「恐怖」が女性目線で描かれている。
その「恐怖感」がひしひしと伝わってくる。

怖いけど面白い。だからキングの作品は1冊
読むと止まらなくなる。

「ビッグ・ドライバー」はマリア・ベロ、オリンピア・デュカキス
主演で映画化。
「素晴らしき結婚生活」は「ファミリー・シークレット」と
いうタイトルで映画化されている。

『ビッグ・ドライバー』
著者:スティーヴン・キング/高橋恭美子・風間賢二訳
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥724(税別)